■ 内田正さん(浅草『弁天山 美家古寿司』)の
- 『江戸前の寿司』の話
江戸時代のお寿司には、マグロはなかった。ハゼ、キス、コハダ、白魚、アジ、サヨリ、サバ、こういった「酢で締める魚」がほとんどだった。
ただ、一口に「酢で締める」と言っても、単に酢に漬けただけでは美味しくない。必ず最初に塩をする。ある程度、塩が染み込んだところで水洗いして、改めて酢の中に漬け込む。これは塩の浸透力を利用して、酢をしみ込ませるため。
だからどこでどれくらいの塩加減をするかが、味の違いにつながってくる。8月の終わり頃になると、「シンコ」というコハダの小さいのが出てくるけど、可憐で小さい魚なので、まともに塩を当ててしまうと、たちどころに酢が入って、美味しくなくなってしまう。だからシンコは、塩水で洗うだけでも良いくらい。
シンコは成長していくにしたがって、コハダ、ナカズミ、コノシロと名前が変わっていく。コノシロは寿司ネタには使わないけど、シンコを塩水で洗うとしたら、ナカズミは2時間くらい塩に漬ける、というくらいの違いが出てくる。もちろん魚の状態や湿度と温度によっても変わってくる。その時その時で違うから、メモを取ってもしょうがない。だからこそ我々の仕事は、やっていておもしろい。
酢で締める時に重要なテクニックがもう一つある。塩をして、水で洗った魚は、水っぽくなっている。これをそのまま酢に漬けても、水っぽいままになってしまう。そこで「酢洗い」といって、2倍に薄めた酢で1つずつ洗ってから、もう1度酢に漬ける。これが重要。
酢で締めて、もう何も手を加えるところがなくなって、それですぐに食べられる、というものでもない。完成してから、今度は2〜3日は置いておいて、酢が抜けるのを待つ。完全に酢が抜けきって、はじめて食べられる。だからコハダは、お店に出す3日は前に仕込まないといけない。
私が今、一番力を入れているネタはアワビ。酒蒸しにして出しているけど、これは冬に食べても美味しくもなんともない。ところが5/15〜9/15あたりの4ヶ月は、念力を込めて作らなくても、一定の仕事さえすれば美味しくなる。その期間は、アワビはオススメ。
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■ 大久保慎さん(農林水産省)の
- 『魚介類の名称のガイドライン』の話
魚は、地方によっても呼び方が違うし、成長段階によってもいろいろな名前があるので、『魚介類の名称のガイドライン』を作った。
たとえば、居酒屋なんかでよく見かける「ギンムツ」。ムツという魚は、昔から日本では高級魚として扱われてきたけど、一般にギンムツとして売られていたものは、ムツ科とはなんの関係もない魚で、南米のペルー沖などで獲れる魚だったりした。肉質が似ているあたりから、業界内ではギンムツと呼ばれてきたらしいけど、その俗称のまま消費者に販売して、あたかも日本の魚であるように誤解をさせてしまうのはいかがなものか、というような趣旨。
そこでギンムツを正しく呼ぶと、マジェランアイナメ、もしくはメロ、となる。さらに生鮮食品として売る場合には、ちゃんと原産国を「ペルー」などと表記しましょう、ということなった。ただ、急に「マジェランアイナメ」とだけ書かれた商品が売られても、消費者はなんだかわからないので、括弧書きでギンムツと書く分には構わないことになっている。
他にも、「シミズダイ」なんて魚もいる。これ実は、米国産のナマズだったりする。これも、これからは「アメリカナマズ」もしくは英名の「チャネル・キャット・フィッシュ」と表記することになる。
それから「スズキ」。アフリカ産のナイル・パーチという魚が「スズキ」「シロスズキ」として売られていたケースがあった。これも改められる。
貝にも似たケースがある。和名を「アワビモドキ」という貝があって、原産国のチリでは「ロコ貝」と呼ばれている。これが「チリアワビ」という名前で売られていたけど、これからはちゃんとした名前で売らなくてはならない。
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■ 辻義一さん(赤坂『懐石・辻留』)の
- 『京の魚料理』の話
京都の魚河岸は、今は京都駅のそばにある。中央市場といって、そこに魚を買いに行く。
昔は、京都には海がないので、日本海から運んでいた。瀬戸内海の魚は、近い大阪へ行ってしまうので、京都には来なかった。ところが中には贅沢な人もいて、大阪から生きたタコやハモを運ばせた、なんてこともあったらしい。それで「ハモは山にいる」なんて伝説も生まれたとか。
ハモは生命力が強い魚で、水揚げから12時間くらいは細胞が生きている。ちょっと包丁で叩くと、叩いた場所がヒクヒクと動いたりして、生きていることがわかる。それを調理するから美味しい。脂がのって淡泊、という味も、かなり京都人好みといえる。
ハモは祇園祭になくてはならないもの。江戸は初鰹だけど、京都はハモ。祇園祭の頃には、当日でなくても絶対にハモを食べる。
ハモ以外の魚は、若狭湾から運んだ。生で運んだのでは途中で腐ってしまうので、すべて塩をして運んだ。サバ、グジ(アマダイ)、カレイ、どれも塩をしてあった。その、京都と若狭湾を結ぶ、魚が運ばれた道は、「鯖街道」と呼ばれたほど。京都には有名な鯖寿司のお店もあるけど、そこのサバも若狭湾で水揚げされたもの。
若狭湾から京都までは、歩いてだいたい1晩くらい。すると、若狭で塩した魚が、京都に着く頃にはちょうどいい塩加減になっている。
京都で生魚を食べるとしたら、川魚だった。「洗い」といって、お刺身にした後 に井戸水で一度洗い、氷水につけてよく冷やす。そうすると、魚のおいしさと同時に、冷たさも楽しめる。これは京都の暑い夏にはたまらない。
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■ 井之本聡さん((株)水産健児)の
- 『快眠活魚』の話
「快眠活魚」は、大分県にある「おさかな企画」という会社の卜部俊郎さんが開発した技術。魚のツボに針を刺して気持ちよく眠らせて、生きた状態のまま運ぶことができる。
厳密に言えば、眠っているというよりは、泳ぐ機能だけをマヒさせる、ということ。この技術を使えば、狭い容器にたくさんの生きた魚を入れても傷つかないし、サバのように活発に泳ぐ魚も、狭い容器に生きたまま入れることができる。
多くの魚は基本的な骨格が似ているので、ツボもだいたい同じところにある。多少ツボが違っても、経験者ならちょっと練習すればすぐにわかる。
針をツボに一度刺し、発泡スチロールの中に入れて、エアポンプで酸素を供給してやれば、魚はじっと横になったまま、パクパクしながら生きている。この状態で、食用の魚を、新鮮なまま大量に運べることがこの技術の最大の利点。
ただ単に新鮮なだけじゃなくて、針で眠らすことで魚はおいしくもなる。これはあくまで仮説なんだけど、普段はリラックスしていた魚が、釣り人に釣られたり、網で追い回されたり、いけすからすくい上げらたりすると、非常に大きなストレスを感じ、疲労してしまう、という話がある。
実際、そうやって捕まえた魚と、快眠活魚の魚で血液を較べると、色がぜんぜん違う。普通の魚はエンジ色の血だけど、快眠活魚を使えば鮮やかな赤。おそらく乳酸値、すなわち疲労に関係しているのでは。
そんなわけで、まったく同じ生産者のタイを、暴れている状態で締めたものと、快眠状態にして締めたものでは、味がぜんぜん違う。
ついでと言ってはなんだけど、活け作りを作りやすいのも快眠活魚の利点。普通の鮮魚を捌く感覚で、活け作りが作れてしまう。
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■ 野村悟さん(岐阜県・板取川洞戸観光ヤナ)の
- 『鮎』の話
鮎といえば塩焼きが有名だけど、4〜6月の鮎は「香魚(こうぎょ)」。匂いが一番大事。だから塩焼きか刺身がいい。
落ち鮎の時期になると、塩焼きももちろんいいけど、味噌をつけて焼く「魚田(ぎょでん)」がおいしい。それからフライにしてもおいしい。時期によってそれぞれ鮎の楽しみ方は変わってくるけど、一般には、曼珠沙華(ヒガンバナ)が咲く頃、9月の半ばから10月の、卵を持ったこの落ち鮎の時期が、一番お客さんに喜ばれる。
鮎は、産卵のために川を降りてくる。一年魚なので、卵を産んだらそれで終わり。ウチは長良川の支流の板取川にあるんだけど、3月の終わりから4月にかけて、河口から鮎が上ってくる。そして10月をピークにして、産卵のために落ちていく。その落ちてくる鮎を、途中で捕まえているのがヤナ。
ウチのヤナは今年で17年目だけど、今までで一番穫れた年には、2万匹ということもあった。その前にも後にも、1万匹の大台に乗ったことはないんだけど。普段は5千匹も穫れれば多い方。
鮎の解禁日は8月15日。その日を過ぎて、最初の洪水の日が勝負になる。それも1〜2時間くらい。台風が来ると、大きな入れ物を持って、2人1組で鮎を釣りに行く。20〜30kgぐらいの鮎で入れ物がいっぱいになると、2人で上のいけすまで担いでいって、そこに放す。
中には大きなウナギだったり、カワマスなんかも穫れたりする。それらをいけすの中から出して、料理として出している。
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放送曲目リスト
| Time |
Title |
Artist |
Label |
Number |
| 9'52" |
Chup Chup I Got Away |
Marcos Valle |
Verve |
POCJ-2564 |
| 18'55" |
I'm Gonna Go Fishing |
Lambert, Hendrick & Ross |
Jazz Door |
JD 1247 |
| 31'11" |
Alfie |
Etienne |
La Voce |
CCCN 21042 |
| 41'28" |
Amazonas |
Karen |
J-room |
COCB-53051 |
| 48'13" |
The Duck |
The Hi-Lo's |
Reprise |
WPCP-4373 |
|