SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2003年6月28日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「パティシエ」

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 実は先日から、当店AVANTIに新しいスタッフが加わりました。双子の女性パティシエ、「あいちゃん」と「ゆうちゃん」の2人です。
 なかなかの美人と評判なのですが……実は私もまだ、どっちが「あいちゃん」で、どっちが「ゆうちゃん」だか、区別がついていない状態でして(スタンだって怪しいものです)、ちょっと話し掛けづらいんです。今度、ちゃんとしたプロフィールを聞き出してまいりますので、当サイト上でのご紹介は、大変申し訳ありませんが今しばらくお待ち下さい。
 なにはともあれ、新人パティシエに触発されたのか、本日の当店では、お菓子作りに関する話で持ちきりです。中には専門家の方もいらっしゃるようですが、どんな話をされているのでしょうか。


image ■ 辻口博啓さん(「モンサンクレール」パティシエ)の

『パティシエの資質』の話

 パティシエとしての資質は、とにかく「諦めない」こと。僕自身は辞めたいと思ったことはないけど、辞めてしまう人、それから「この辺でイイや」と妥協してしまう人はたくさん見てきた。
 むしろ妥協しない方が楽なのに、と思うこともある。妥協することによって、嫌な気持ちを引きずったまま進むより、妥協しないで頑張れば、繋がっていくこともある。そういう意味で、「妥協しないセンス」「継続させるセンス」を持っていないと、本当のお菓子作りは見えてこないと思う。
 たくさんのケーキが並べられている華やかなショーケースに憧れて、この世界に入ってくる人は多い。でも、仕込みは朝早くから始まるし、帰れるのは夜遅く、プライベートの時間はない、なんて厳しい現実が待っている。その理想と現実のギャップに耐えきれなくて、辞めてしまう人は多い。
 でも、諦めずにいれば、たとえ小さくても喜びを感じられる日は必ず来る。僕の場合はモンブランだった。その店のモンブランに憧れて入ったものの、ずっと横目で眺めるだけの日々。それでもじっと待っていたら、ある日「辻口、お前作ってみろ」と言われた。その日のためにずっと準備はしていたけど、やっぱり緊張して、それでもなんとかちゃんと出来た時の喜びは、今も忘れない。そういう些細な喜びがあったからこそ、今でもこの仕事を続けているのだろう。
 そして何より「モンブランがおいしかった」とお客さまが言って下さったのが、一番の修行の励みになった。店の奥からこっそりと「自分の作ったモンブラン、売れてるかな……」っていつものぞいてたし。
 今でも、お客さまの「おいしかった」「ありがとう」という言葉を聞くために、この仕事をしているようなもの。そう言ってもらえた時は、本当は10mくらい飛び上がって喜びたいんだけど、そういうわけにもいかないので、努めて冷静に「ありがとうございました」と返事をしている。

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image ■ 水野真紀さん(女優)の

『趣味のお菓子作り』の話

 実は辻口さんの『モンサンクレール』で、働かせてもらったことがある。
 正確には、調理師学校の校外実習だった。夏休みにどこかのお店で、1日8時間以上の労働を実習する、という単位があって、「せっかくだから、大好きな『モンサンクレール』で……」とお願いして、働かせてもらった。
 毎朝6時に出勤して、遅くなる時には夜7時半くらいまで、計8日間の労働。もちろん実習だから、無報酬だったけど。仕事は主に、フイルムを貼ったりだとか、しずくをしぼったりだとか、下働きが多かったけど、時にはデコレーションも経験させてもらった。
 お菓子は配合が命。スポンジのふんわり感を出すには、この配合でこの温度で、みたいなことがキッチリ決まっている。料理の場合は素材のその時その時で状況が違うので、そこまで決められないけど、お菓子だと、粉は乾いているし、お砂糖はサラサラ、卵もある程度同じなので、キッチリ決められる。
 でも私はその時の気分で砂糖を減らしたりして、どんどんメチャクチャにしてしまう。オーブンを開けてみたら油がダーッと流れてきて「あぁ、多すぎた……」と反省することもしばしば。
 以前、ピーナッツが余っていたので、それでパイを作ろうとしたことがある。パイというよりはパイ・クッキーみたいな感じにしたいな……なんて、例によって適当にザクザク作ってみたら、また油がダーッと流れてきて、大失敗。
 一応、メモを残してみたりもするんだけど、役に立った試しはないし。やっぱり基本のレシピには、どうやっても勝てない。それどころか、とんでもない結果になることが多々ある。

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image ■ 河田勝彦さん(「オーボン・ヴュータン」パティシエ)の

『フランス修行』の話

 1966年、22歳でフランスへお菓子作りの修行をしに行った。
 向こうでは、まず、日本ではお目に掛かったことのない朝の早さに驚かされた。普段は朝の6時からだけど、土日になると、注文の入り方によっては2時とか3時から仕込みが始まる。当時は「その日に売るものは、当日の朝に全部作る」というのがお菓子の大前提だったので、焼き物さえその日に焼いていた。その事にこだわるフランス人のパワーはすごいもので、初めて職場に入った時は、何が何だかサッパリわからなかった。だいたい、見たこともないお菓子をあちこちで作っているし。
 ところが、朝10時くらいになって、全部のお菓子を出し終わると、今度はフランス人独特の「おしゃべり」の時間。ベラベラ……コイツらいつまで喋ってるんだ?と思うくらいダラダラし始める。で、お店が終わると、とっとと帰るのがフランス人。
 当時は、まだ日本には本格的なフランス料理店がそれほどなくて、フランスへ修行に行く人も、せいぜいホテルから派遣されて、という人がいるくらいだった。そこれそ、その後『クラブ・デ・トラント』に関わった、鎌田さんとか石鍋さんとか井上さんとか、そうそうたる人たちばかり。個人で行く人はほとんどいなかったし、お菓子の修行なんて人は、せいぜい2〜3人しかいなかったと思う。
 僕の場合、2/3は菓子屋で修行したけど、1/3はホテルやレストランで修行した。菓子屋である程度の線まで学ぶと、違ったものを勉強したくなる。そうすると、ホテルやレストランに行かざるを得ない。
 ホテルやレストランのパティシエは、瞬間の勝負。お客さんが入って来て、オードブルから始まって肉料理まで来て、デセール(デザート)の注文が入ってくる。そこから、失敗の許されない戦いが突然始まる。
 お菓子屋とホテルやレストランでの仕事は、そんな風にかなり異なるものだけど、ホテルやレストランで仕事をするには、まず菓子屋でいろんなジャンルの仕事を一通りこなしてからでないと、おもしろくないと思う。甘いモノにもいろいろあって、生菓子、焼き菓子、チョコレート、アイスクリーム、砂糖菓子、等々、一通り学んでからレストランに行くと、それらを組み合わせたお菓子に挑戦できる。
 逆に菓子屋では、生菓子とチョコレートなどは環境条件がちょっと異質なので、あまり同時には扱わない。それはたとえば、アイスクリームを扱う時はアイスクリーム向けに手の温度を変える、というようなこと。科学的にはどうかわからないけど、感覚的には、チョコレートを前にすると、手がチョコレートが溶けないような温度になる。これは、何千何万回となくお菓子を作ってきた手の、条件反射のようなもの。

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image ■ 村山なおこさん(お菓子愛好家)の

『イタリアのお菓子』の話

 イタリアのお菓子は、フランスと較べてダイナミックで素朴な感じがする。でも、元をたどればイタリア菓子の方が先で、それがフランスに伝わっている。
 16世紀にイタリアの大富豪、メディチ家から、カトリーヌ姫がフランスへお嫁入りする際に、マカロンやアイスクリームなど、いろんなお菓子をフランスへ持ち込んだ。たとえばフランス菓子で、スポンジ菓子のことを「ジェノワーズ」と言うけど、あれはイタリアの都市「ジェノバ」から来ている、とか。
 イタリアでは、甘いモノ自体を指す時は「ドルチェリア」という言葉を使うけど、お菓子屋さんは「パスティチェリア」と呼ばれることが多い。これは「パスタ」から来た言葉で、イタリアでは小麦粉を使ったお菓子が多い、という特徴を表している。もちろん砂糖漬けの甘いお菓子もあって、「ドルチェリア」という名前のお菓子屋さんもあるけど。
 イタリアは南北に細長いので、郷土色の強いお菓子も多い。南の方なら、果物やナッツを使ったお菓子が多いし、北の方だと、バターや生クリームを使ったお菓子が多い。
 13年前に流行ったティラミス。あれはマスカルポーネというイタリアのフレッシュ・チーズを使ったお菓子で、北イタリアのロンバルディア地方かベネト地方で作られたお菓子。一時期、日本であまりにポピュラーになりすぎて、最近はあまり見ないけど、イタリア料理店に行けばちゃんとデザートとして置いている。
 小麦粉を使った焼き菓子の代表は「ビスコッティ」。アーモンドがまるごと入った、まるで乾パンのように堅いお菓子。でもカリッと食べると歯触りが良くて、おいしい。実はアーモンドのヤツだけじゃなくて、いろんな種類がある。同じくアーモンドを使った焼き菓子で、棒状のものは「カントゥッチ」。プラト地方の名産らしい。
 イタリアではビスコッティを朝食代わりに食べる人もいる。コーヒーでもいいけど、ビンサント(デザートワイン)とか甘口のワインに付けて食べるという方法もある。そのあたりは、元気なイタリア人ならでは。

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image ■ 嘉手納慶一さん(「カノビアーノ・ドルチェ」パティシエ)の

『レストランのデザート』の話

 イタリアのデザートと言うと、まずシンプルなものを思い浮かぶけど、レストランで出てくるデザートなら、デザインはすごい。その辺は、さすがイタリア人という感じ。ただ、味の方はけっこうドギツかったりするんだけど。
 フランス料理のデザートが平面的なデザインなのに対して、イタリア料理のデザートは立体的。それもやっぱり、イタリアの方が演出にこだわりがあるから、なのかもしれない。
 日本では、デザートが好きなのは主に女性。ところが外国は、けっこう逆のケースも多い。特にイタリアの女性は、ダイエットに気を遣って、甘いモノを控える人もいるみたいだ。たまたまこの間、ウチのお店に来たイタリア人カップルも、デザートを食べていたのは男性の方だったし。
 お菓子屋さんのお菓子とレストランのデザートでは、1つ1つを作る時の手間はレストランのデザートの方が多い。もちろん味も方向性が違ってきて、料理の最後に食べるデザートは、軽さを出すとか、甘さも軽めにするとか、微妙なところだけどちょっと違う。
 食べる料理によっても変わってくるので、メニューの中には重いデザートが入っていることもある。でも基本的には軽いデザートの方が多い。これは僕の考えなんだけど、お腹で感じる満腹感も悪くない。だけど、お腹の方は腹八分目で、気持ちの方で満腹してもらえたら、なんて考えている。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'46" Sweet Happy Life Peggy Lee Capitol 7243 4 98883 2 6
18'50" Someday Sweetheart Caterina Valente Universal 065 104-2
31'01" Chez Moi Blossom Dearie Verve POCJ-2653
41'30" Amor Dean Martin Capitol 7243 8 55393 2 9
47'26" There Will Never Be Another You Four Freshmen Capitol 72438 19175 2 7


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