SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2003年6月14日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「映画の重箱の隅」

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 映画を観ていると、ストーリーや演出とはまったく関係のないところで、つい吹き出したり驚いてしまうようなことがありますよね。その定番が、有名人がエキストラやチョイ役で登場する「カメオ出演」。最近では『TAXi3』にシルベスター・スタローンが登場したり、『007/ダイ・アナザー・デイ』で主題歌を歌ったマドンナがチョイ役で出演したりして、話題を呼びしまた。
 そんなちょっとした事に気がつくと、つい誰かに話したくなってしまう気持ちはよくわかります。あちらのお客さまも、先ほどからそんな「映画の重箱の隅」のお話をされているようです。いったいどの映画のお話をされているのでしょうか。


image ■ 松田龍平さん(俳優)の

『マトリックス』の話

 今日から映画『恋愛寫眞』が公開だけど、1月のNYロケはとにかく寒かった。一番寒い日になるとマイナス15度くらい。しかも風が強いから、体感温度はさらに10度下。寒さに弱いから、本当につらかった。
 出る方はさておき、観る方は『マトリックス・リローデッド』の先行ロードショウを福岡で観てきた。わざわざ福岡まで行ったのは、「BUMP OF CHICKEN」というバンドの藤原クンと仲が良いので、ライブを見に行っただけ。ライブが終わった後で夜中にキャナルシティへ行ったら、ちょうど『マトリックス…』がやっていたので、「じゃあ観ようか」ぐらいのノリで観てきたんだけど、これが本当におもしろかった。
 キアヌ・リーブスも好きだし、前作の『マトリックス』も好き。あれだけ抜け目なくエンターテイメントしている映画はエライと思う。普通は「ここおかしくないか?」とか「ここのCGが変だよ」なんてところが多少はあるものなのに、『マトリックス』にはそういうところが全然ない。アクションだって、実際にはロープを使って飛んだりしているんだろうけど、そういう部分をまったく感じさせない。
 そして『リローデッド』は、それをもっと完璧にしたような映画だった。もうストーリーがどうこうなんて考えないで、純粋に楽しめる映画。子供に戻ってハラハラドキドキできた。
 憶えていないくらい小さい頃なら、母に連れられて父(故・松田優作さん)の作品は一通り観ているらしい。ちなみに最近は、というほど最近じゃないけど、深夜にTVで『野獣死すべし』がやっていて、つい全部見てしまった。同じ仕事をするようになってから見る役者としての父は、とにかく「すごい」の一言。その後、しばらく『野獣死すべし』のマネばかりしていたくらい。けっこう似ていたらしくて、母に「やめて」と言われてしまったけど。

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image ■ 古田由紀子さん(翻訳家)の

『フランス映画の翻訳』の話

 フランス映画『男と女』は、本当に大人の映画だと思った。出演者も大人、会話も大人、音楽も大人。三拍子揃った永遠に残る作品だと思う。
 フランス映画を翻訳をする時は、「チュトワイエ」と「ブボワイエ」がキーになる。フランス語では、相手を「vous(ブ)」と呼ぶ時には距離感があって、親しい人は「tu(テュ)」と呼ぶ。フランス映画の醍醐味は、これが切り替わる瞬間。そのニュアンスを、どういう情感を出して、2人の呼び方をどう変えて、会話の中身の濃さをどれくらいにして……なんて考えながら、フランス映画を翻訳するのはとても楽しい。
 語尾1つでも印象は全然変わってくる。たとえば女性のセリフでも「……ですのよ」と訳す場合もあれば、「……だよ」と訳す場合もある。伯爵夫人が「わたくし……あそばせ」だとしたら、売春婦は「あたい……さ」。西部劇の男性が「僕」じゃおかしいから「俺」だし、同じ高校生でもお坊ちゃんなら「僕」で、ガキ大将なら「俺」。こういった使い分けで、少しずつニュアンスを変えていく。
 アメリカ映画の仕事も多いけど、やっぱり恋愛映画はヨーロッパの方が上だと思う。「フランス映画は恋愛のテキスト」なんて言葉もうなずける。本当はちゃんとメモして、まとめておけば良かったんだけど……
 今までで一番印象に残ったセリフは、『カサブランカ』(アメリカ映画だけど)に出てきたセリフ。あの映画では「君の瞳に乾杯」というセリフが有名だけど、それよりもハンフリー・ボガードと急接近した時のラブシーンで、大砲がドンと鳴って、イングリッド・バーグマンが言う「Is that cannon fire, or is it my heart pounding?(これは私の胸のときめき?それとも大砲のとどろき?)」というセリフの方が印象深い。「ときめき」と「大砲」の組み合わせは強烈だった。

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image ■ 橋本徹さん(「Cafe Apres-midi」オーナー)の

『映画と音楽』の話

 フランス映画に『冒険者たち』という大好きな映画がある。ロベール・アンリコ監督と名コンビだったフランソワ・ド・ルーベの、リリカルでセンチメンタルな音楽が印象的だった。特にオープニングの、ジョアンナ・シムカスのファースト・ショットには、ハートを射抜かれたというか、一気に恋をしてしまった。
 『冒険者たち』のオープニングの口笛は、その後アラン・ドロンになりきって、やたらと吹きまくった。それ以外のシーンなら、ジョアンナ・シムカスが埋葬される時に流れる哀しげなスキャットも、心のひだに染み渡った。(かなり陳腐な表現だけど)
 『冒険者たち』は1960年代後半の映画なので、僕が観たのも名画座だった。その後、リバイバル上映されたり、ビデオやDVDで出るたびに見直している。物語は、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスの、男2人と女1人のお話。この「男の友情とロマンスの微妙なバランス」みたいな映画がいい感じ。
 学生の頃から、映画と音楽の関係という意味でも、フランスやイタリアの映画を夢中で観ていた。映画音楽を聴くと、その映画を観た時のことがフラッシュ・バックして、そこまでの自分をたどるような感覚がある。一緒に観ていた人を思い出すこともあるし、その時の映画館の暗闇の感じさえ思い出すこともある。
 そういう記憶は、ビデオやDVDじゃなくて、やっぱり映画館で観た時の方が強烈に残る。名画座の3本立てなんかだと、インターミッションの音楽も思い出深くて、お金を節約するために1本目と2本目の間の休憩でコーヒーを我慢したことすら憶えている。
 最近は昔の曲を映画に使うことも多くなってきた。音楽は時代の情緒を引用するのに効果的で、ある曲のメロディが流れてくると、その時代の空気感が蘇ってくる、そんな良さがある。
 映画を観ていて、そんな音楽のこだわりに気付いた瞬間は、ちょっと嬉しくなってしまう。

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image ■ 河原一久さん(テレビディレクター)の

『スターウォーズ』の話

 スターウォーズ・シリーズの第1作『エピソード4』のオープニングで、白い兵隊トルーパーが、けっこうな勢いで頭をドアにぶつけてしまう。「コン!」なんて音も入っているぐらいなんだけど、そのトルーパーは端の方なので、ワイドスクリーン版じゃないと見えない。これはけっこう有名な話。
 ところがシリーズ第5作『エピソード2』で、クローン兵士トルーパーのオリジナルになったという設定のジャンゴ・フェットも、嵐の中でオビ・ワンと戦い、宇宙船に戻ろうとして「ゴン!」とドアに頭をぶつける。そのシーンは全然目立たないし、エピソード2のストーリー上はなんの意味もないけど、スターウォーズ・シリーズのファンのための壮大なギャグとして、ルーカスがわざわざそうしたらしい。そんなコメントがDVDの特典副音声に入っていて、大いに感心した。スターウォーズは「シリーズのファンに向けては作っていない」なんて言われるけど、ちゃんとそういうサービスが用意されている。
 シリーズ第4作『エピソード1』では、『2001年宇宙の旅』へのオマージュが隠されていた。ワトゥのジャンク屋で、後ろにさりげなく『2001年…』に登場した1人乗りのポッドが積まれている。「似てるだけ?」と思ったら、ルーカス・フィルムの公式ホームページに「わざわざ作りました」って書いてあった。
 さらに『エピソード1』では、共和国の首都コルサントでいろんな宇宙船が飛び交う中、スタートレック・シリーズのエンタープライズ号が飛んでいたりする。それからシリーズ第2作『帝国の逆襲』では、隕石群の中をミレニアム・ファルコン号が逃げるシーンで、ジャガイモとスニーカーが飛んでいる。ピンぼけのスニーカーがサッと通り過ぎるので、コマ送りにしないとわからないんだけど、やってみると「あ、赤いラインが!」って気付くはず。
 たしか、大きな隕石を発見してハン・ソロが「あそこに隠れよう!」と言う直前だったと思う。インターネットで「シューズ、アステロイド、帝国の逆襲」を検索すれば、画像付きで出てくるかも。

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image ■ 浅野忠信さん(俳優)の

『映画』の話

 自分にとって一番の映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。ダビングしたのかTVを録画したのか憶えていないけど、ビデオを持っていて、それを何度観たことか。
 シリーズの『2』や『3』は、観たかどうかすら憶えてないくらい印象が薄い。とにかく1作目が好き。あの時代のファッションや音楽も好きだし、なにより頼りないお父さんが好き。髪型もしぐさもマネしてしまうくらい好きで、当時は中学生だったけど、あの七三分けにしていた。ファッションやアイテムから映画を好きになるケースは、男にはけっこう多いかもしれない。
 最近ならタイで観た中国映画『クイッティン』がおもしろかった。もしかしたらこの映画は日本ではやっていないかもしれない。英語の字幕だったけど、英語が全然ダメな俺でも、観ているだけでわかるような映画だった。中国の俳優さんの29歳から30歳の1年間を描いた映画で、精神的にメチャクチャなところから立ち直るまでのストーリー。本人が主演していて、お父さんやお母さんを演じている人も本物のお父さんとお母さん。でもドキュメンタリーじゃなくて、ちゃんと後で撮り直した映画だった。
 なぜかタイの映画祭に審査員として招かれて、そんな機会でもなければ決して観ることはなかった映画だったけど、あれは本当におもしろかった。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'33" The Face I Love Astrud Gilberto Verve 314 519 801-2
19'37" Samba Saravah Pierre Barouh disk'AZ 101292
31'45" Journal De Bord Francois De Roubaix MSI MSIF 9684
42'07" Conversa De Botequim Doris Mouteiro EMI 829 712 2
47'52" Vagamente Wanda Sa Bomba Records BOM 506


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