SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2002年11月9日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「失恋」

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 バーのカウンターにはさまざまなお客さまがいらっしゃいます。お友達同士、大勢でいらっしゃるお客さま、カップルでいらっしゃるお客さま、そして、1人のお客さまも結構いらっしゃいます。
 1人のお客さまの中には、独特の雰囲気を漂わせている方が時々いらっしゃいます。そう、「失恋」です。そういうお客さまに接していると、人生のさまざまな苦痛の中で、失恋の痛みは、性別や年齢に関係なく、もっとも辛いものなのかもしれない、そんな感じすらいたします。
 もし、このウェイティング・バーのカウンターが、その痛みをやわらげる場所になれるのであれば、私どもは精一杯、そのための努力をさせていただきます。いつの日か、あちらのお客さまのように、昔の話として振り返れるように…


image ■ 古内東子さん(ミュージシャン)の

『失恋の曲』の話

 私の曲にラブラブな曲よりも失恋の曲が多いのは、その方が歌になりやすいからだと思う。想いを込めやすいというか、ラブラブな歌を書いても「だからどうしたの?ああそうですか、良かったね」って自分でツッコミを入れたくなっちゃうし。
 結局、自分がうまく行っている時とか幸せな時は、他に何もいらないワケだし。友達と会わなくたって平気だし、「この幸せな想いを誰かに聞いてもらいたい」とも思わないし。だから曲になるのは「失恋」の方。
 広い意味での失恋は、個人的にはしょっちゅうで、そういう時には昔の自分の曲を聴いて「なるほど」「そうそう」とか思ったりもしている。さすがに最近の曲だと仕事のことを思い出しちゃうけど、古い曲なら完全に1人のリスナーの立場になってしまう…もしかしてバカみたい?
 きっと、曲になった時点で手を放れている、ということなんだと思う。だからある程度時間が経っていれば、その曲を聴いて、作った時に好きだった人の顔を思い出すようなことは絶対にない。その時から何年か経って、今している恋愛があって、今の相手を当てはめて聴いてしまう。
 失恋を救うためにもっと大きな恋がタイミングよく現れる、なんてことは現実の世界ではほとんどなくて、だいたいが「もう私は大丈夫だな」と思えるようになってしばらくして、仕事も一生懸命やるようになって、友達といる時間が楽しくなってきた頃に、次の恋がやってくる。やっぱり恋は大丈夫な人のところにしか現れないものだし、まだ引きずっている内に誰かが現れても、うまく行かないのでは。

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image ■ 唯川恵さん(作家)の

『失恋と人生』の話

 「24〜25歳くらいになったら結婚するだろう」と思っていた相手にフラれて、路頭に迷うような状況になって、それがきっかけでOLをやめて、作家になった。
 厳密にいえば、フラれたということだけが理由じゃないと思う。「この人と結婚して、子供を産んで、こんな家に住んで…」みたいな人生の青写真しか持っていなかったから、単に「フラれた」という1つの出来事じゃなくて、私の人生のすべてがいったんチャラになってしまったように感じた。
 今なら「あんなに若かったのにバカみたい」と思えるけど、「ああそうか、人生って本当に思い通りにはいかないんだ」って、その時はじめて気付いた。その時まで、だいたい自分が思い描いた通りのコースを進むものだと思っていた。
 そういう時に、藁をもすがる思いで掴むと、掴むのは本当に藁だったりする。これも実際に経験したことなので、間違いじゃないと思う。だから失恋した時は、物欲とか、別の欲を持つのといい。無欲になっていくと、人がどんどん萎んでいくし。やけ食いなんて、意外と理にかなっているかも。
 シンドい失恋をすると、「何かをしたい」という思いがまったくなくなる。私の場合は、朝起きるのが嫌だった。寝ることは何とかできても、朝起きて「また1日が始まるのか」と思うとウンザリした。偉そうなことは言えないんだけど、そういう状態から回復するには、時間が大事だと思う。
 だから「いつか立ち直れるんでしょうか?」と聞かれたら「必ず立ち直れます」と答えている。私自身もつらかった時に、一番支えになったのはその言葉だった。そしていつか本当に立ち直れるから、早まったことだけはしないで欲しい。

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image ■ 森口博子さん(タレント)の

『大失恋した時』の話

 私も仕事ができなくなるくらいの大失恋をしたことがある。その時は毎日泣いて、顔もむくみまくり。だけど意外と立ち直りも早くて、仕事が入ってきたら「泣いてるのはもったいない」って。
 その時に思ったのが「人間の運には分配されているものがあって、何かが満たされている時は何かがお休みしているんだな」ということ。失恋している時に限っていい仕事の話が舞い込んでくる。
 不思議だったのが、失恋すると妙に大人ぶりたくなること。だからその時にはまった失恋3点セットが「ジャズ・ワイン・タバコ」だった。タバコなんて吸わないどころか、他人の煙さえ嫌いだったのに。ジャズをかけながら、ワインを飲んで、吸えないはずのタバコを吸ったら、意外なくらいそのタバコがおいしくて。一瞬は満たされたんだけど、さすがに「いかんいかん、こんな事で満たされたらいかん!」って思った。そんなことをしている内に、やりたい事が仕事だったから、自然と癒えてきた。
 私は、一度別れてしまうとそれっきりになってしまう方。男の人は「前に付き合っていた人とチャンスがあればもう一度」という人が多いみたいだけど、私はダメ。特に「一晩だけでも」なんて論外。情とか想い出とかでそうなっちゃうのって、またズルズルしてしまいそうで嫌い。寂しい時は、元彼に電話するより他の男の人に電話した方がマシ。

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image ■ 篠田節子さん(作家)の

『恋愛の残酷さ』の話

 失恋がテーマの小説を、と言われても、書けるものじゃない。そういう時は別のテーマの小説を書いて、要素として失恋を盛り込むだけ。というのは「失恋がテーマの小説」というと恋愛小説と考えがちだけど、実は恐怖小説になってしまうから。端的に言えば「ストーカー」の小説がそう。
 要素として失恋を使うのなら、いかようにでも使える。美しい失恋の情景、というのもあるし。一番美しい失恋の情景なら、私は『竹取物語』をあげたい。天人が降りてきて、かぐや姫が昇天していく。かぐや姫は泣き、翁も泣いている。帝も止める。でもダメで、かぐや姫は「地上で汚れたモノを食べてしまったから、この薬を飲みなさい」と言われて、薬を飲んで天の衣をまとう。その途端、かぐや姫はさっきまで泣いていたのをコロッと忘れて、サッサと天に昇ってしまう。
 ちょっと待って、さっきまでワンワン泣いていたのは何なの?と思うんだけど、この変わり身の早さこそが、女性の恋の本質だと思う。男性もそういう部分がないとは言わないけど、そこまで極端じゃない。『竹取物語』には、そんな風に人間の恋愛感情の残酷さや非情さといったものが、十分に表現されている。
 よく女の子が「私がこういう事を言ったから、それが原因で彼は去ってしまって、今度はこういう人だから…」なんて事をるると述べるんだけど、男女が別れる理由の本質はそこにはない。「毎日同じ顔を見て、延々と安定して付き合っていて、相手が誠実であればあるほど、ゆっくりと恋は冷めていく」という残酷な現実。この男女変わりない現実こそが、男女の別れる理由。
 かといって、それとは別に「倫理観」というものがあるので、不誠実な行為はなかなかできない。だから完全に冷めきった時に、「彼女のこんな動作を見て、僕は冷めてしまった」「彼がそんな人とは思わなかった」なんていろんな理由をつけようとする。でも本当は、数ヶ月前から静かに冷めつつあったハズ。
 恋愛は残酷。相手を不安な気分に陥れている限り、その恋愛感情の中では「陥れている側」の人間が常に勝者になっていく。だから結婚という制度が作られて、愛情と誠実さという事で相手を縛り上げなければいけなかったのでは。

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image ■ 森真理子さん(東芝EMIディレクター)の

『失恋ソングス』の話

 最近、懐かしい系のコンピレーション・アルバムが多くて、「何かコンセプトがないと売れない」という飽和状態になっている。
 そこでいろいろなコンセプトを考えていたんだけど、とりあえず「クリスマスとバレンタインには相乗り商品を出しておけ」というレコード会社の鉄則に従って、企画を考えていた。で、店頭で商品をチェックしてたら、「彼と一緒に聴いてください」みたいなラブソングものはたくさんあっても、失恋を切り口にしたものが1つもなかった。
 クリスマスとかバレンタインは、もちろん幸せなカップルもいっぱいいるけど、逆に寂しい想いもしている人もいっぱいいる。クリスマスに1人でケーキを買ってきて照明を落として食べたりとか、そういう感じの切り口で1枚のCDを作りたい、と考えた。そこで作ったのが、どっぷり失恋にひたれる曲、ラブソングのアンチテーゼともいうべき『失恋ソングス』。
 最初は「1枚売れればいいか、ハハハ」なんて言っていたのに、おかげさまで(?)売れ行きも好調で。寂しい人っていっぱいいるんだ…と驚いたほど。1枚目はバレンタインを狙って出したんだけど、それ以外の時期にもコンスタントに出ている。
 アンケートを見ると、けっこう主婦の人が多いのも驚き。旦那が帰ってきて寝ている時に、『失恋ソングス』を聞きながら昔のことを思い出しているみたい。それから20代前半の男の子とか。HPを開設しているんだけど、そこにくるお悩み相談は20代前半の男の子が多い。ユーミン、オフコース、杏里、プリプリ、そんな懐かしめの曲なのに、幅広い層に支持されている。
 ちなみに選曲の基準は「30代の人たちが失恋した時にカラオケで歌う曲」だった。だから「失恋ソングス委員会」を作って、昼間からみんなでカラオケボックスに行って歌ったりして、カラオケボックスで決めた曲なんてのもけっこう入っている。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
7'46" That Certain Feeling Chris Conner Atlantic Jazz AMCY-1051~2
18'06" True Love Dean Martin Capitol CDP 7 96361 2
30'01" Days Of Wine And Roses Blossom Dearie DIW 32DIW-311CD
41'46" All I Do Is Dream Of You Jaye P. Morgan RCA BVCJ-2025
48'16" Careless Love Teddi King BMGジャパン BVCJ-7464


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