SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2002年11月2日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「シングルモルト」

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 ウイスキーには、「ブレンデッド」と「シングルモルト」の2種類がございます。単一の蒸留所で作られたモルト・ウイスキーをそのまま出荷したのがシングルモルト、何種類ものモルト・ウイスキーやグレーン・ウイスキーをブレンドして作っているのがブレンデッドです。
 味わい自体は、ブレンデッドの方がブレンドしている分だけ複雑で奥が深いのですが、シングルモルトには土地や蒸留所による個性の違いを感じるという楽しみがありますので、趣味性が高いと言えるかもしれません。そのせいか、シングルモルトは趣味に凝る方にも好まれるようです。
 あちらの席にも、趣味の話に興じながら、シングルモルトのグラスを傾けるお客さまがいらっしゃいます。お客さまなら、シングルモルトを飲みながら何をなさいますか?


image ■ 宇津井健さん(俳優)の

『手作りナイフ』の話

 東映の大泉で撮影している時に、スタッフの1人から「コレ見てくださいよ」と1本のナイフを見せられた。「コレ、僕が作ったんですよ」と言うので驚いて、「どうやって?」と聞いたら、近所に住むナイフ作りの名人のところへ案内してくれた。その名人の名前は、相田義人さん。この人に教えてもらって、僕もナイフ作りを始めてみた。
 ナイフを作ると聞くと、刀鍛冶のような作業を想像するけど、今は「ストック&リムーバル法」と言って、削りだしで作るための素材が開発されている。まずは作りたいナイフの大きさにあった鋼材を買ってきて、図面を引いて、そしてヤスリで削っていく。ヤスリで削る時は万力で固定して、もちろん手で削っていくんだけど、この作業だけでたっぷり2〜3ヶ月は掛かる。
 ヤスリで大雑把に形を整えたら、1度、熱処理に出す。するとカチンコチンに固くなるので、今度は耐水ペーパーで水をつけながら磨いていく。最初は粗い番数から、だんだん番数を上げていって、最後は「ミラーフィニッシュ」と言って自分の顔が映るくらいまで磨き込む。この工程にも数週間が掛かる。
 ここまで来たら、あとは柄(え)の部分を作って完成。でも、柄も凝り出すときりがなくて、アフリカの堅い木を使ったり、動物の角や歯を使ったり、そこに金を入れたり銀を入れたり、どれくらい凝るかはその人次第。
 出来上がったら、僕はお世話になった方にプレゼントすることにしているんだけど、その人のイメージに合ったナイフを考えるのがまた楽しい。ところがあんまり良く出来すぎると、人に上げるのが惜しくなったりして、「じゃあもう1本作るかな」なんて事もある。かといって出来が良くないのも上げたくないし、そこら辺が微妙だったりする。
 僕ももう71歳。俳優なんて仕事は人に残すモノが何もないので、せめて僕の作ったナイフが形見として残ってくれれば嬉しいと思う。

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image ■ 高嶋政伸さん(俳優)の

『ジャズ』の話

 僕が聴くのは「50年代」のジャズが多い。夕暮れ時ならウエス・モンゴメリー・トリオ。彼らのオクターブ奏法が黄昏にはピッタリ合う。
 ディナータイムにはカウント・ベイシー&エラ(エラ&ベイシー)。きらびやかで、ごちそうという感じ。
 食後の一服の時はブロッサム・ディアリーの、ちょっと落ち着いたピアノと暖かいボーカルがいい。デザートを食べてながらコーヒーを飲んだりして。家じゃそんなことはしないけど。
 夜も更けてきたらオスカー・ピーターソンの『プリーズ・リクエスト』あたり行ってみたい。これはじっくり聴きたい。このアルバムは何回聴いても感動する。
 最近ますますジャズが好きになったのは、ラウンジ・ミュージックという視点で見るようになったという部分もある。ウエス・モンゴメリーを好きになったのはここ数年なんだけど、ジャズ・ミュージシャンとして最高のウエスが、最高のラウンジ・ミュージシャンでもあることに気付かされた。音楽として質が高いけど、友達と話をしたり食事をしたり酒を飲んでいるのを、絶対に邪魔しない。
 ウチの父親は、「死んだら葬式にはオスカー・ピーターソンをかけてくれ」って言ってるけど、僕だったらウエス・モンゴメリーとジミー・スミスを交互にかけて欲しい。

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image ■ 葉加瀬太郎さん(バイオリニスト)の

『革靴』の話

 「革靴」の世界も奥が深い。職人さんが手作りで作った革靴は1足10万円くらいしたりして、「2万円の靴だって5足買えるのに!」と思うんだけど、それは「2万円の靴なら2年で履き潰すところを、10年保たせましょう」という事だったりする。
 買ったお店では「最初の1年は自分のモノになりませんよ」と言われた。たしかにとにかく痛くて、1ヶ月は足をマメだらけにしながら、バンドエイドを貼りまくって、苦しみながら履いていた。
 でも半年が経ち、底のコルクが沈んでくると、フカフカした歩き心地になってくる。たとえるなら、毛足の長い良い絨毯の上をずっと歩いている感じ。だんだん皮が伸び、自分の足の形になっていき、最後には自分の足を優しく包んでいる、そんな感覚になってくれる。
 そういう靴はケアも大事。毎日、家に帰ったらクリームを塗ってやって「靴さん、お疲れさま!」と愛でてあげる。靴にはまっている人は意外と多いんだけど、そんなフェティッシュな喜びをみんな持っている。靴に限らず、革製品の愛好者にはそういう人が多い。最近の夜は、靴を部屋に持って上がり、靴を磨きながら、葉巻を吸って、ウイスキーを傾ける、そんな風にして過ごしている。
 ちなみに、いま履いているのもそういう靴なんだけど、買ったのは新宿の伊勢丹。「ジョン・ロブ」と「エドワード・グリーン」の2つが最高峰で、僕が好きなのは比較的女性的なフォルムの「エドワード・グリーン」の方。コイツを眺めながら飲むウイスキーは最高。オヤジくさいと言われそうだけど…
 この靴は、ちゃんと履けば34歳の僕が死ぬまで履き続けられる。今は何でも「壊れたら買い換える」という風潮だけど、僕の使っているバイオリンは230歳。木とか革で作られたモノは、愛着を持って直しながら使ってやれば、いつまでだって使い続けられる。そうやってモノと一緒にに人生を歩んでいくのも悪くない。

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image ■ 中井貴一さん(俳優)の

『犬』の話

 僕は今、すべての時間を犬に掛けている。その犬は白いラブラドール。
 出会いは北海道だった。ロケで網走に行って、ずっと流氷を待っていたんだけど、その年は暖冬で撮影がうまくいかなくて、そこで片道3時間をかけて北見の方まで行って撮影を続けていた。ところがその道すがら、「犬の繁殖場」という看板が出ていて、その看板が気になってしょうがなかった。そして迎えたロケ最終日。運良く早めに終わったのを良いことに、その「繁殖場」に寄らせてもらった。
 繁殖場で扉を叩くと、オジサンが出てきた。「あらあらあら、こんなところで何やってんの?」「いや、ロケで来ているんですが、看板が気になって…」「おぅ、じゃあ見ていけ!」みたいな感じで、ビニールハウスみたいな繁殖場へ連れて行ってくれた。するとその中には、ゴールデンレトリバーとラブラドールの小屋があって、生後3ヶ月くらいのラブラドールがいっぱいいた。
 しばらく子犬たちを見ていたら、オジサンが「中井さん、せっかくだから記念に1匹持って帰ってよ!」と言ってくれた。でも、こっちはもう1泊ホテルに泊まって、明日は飛行機で東京に帰る身。「〜というワケなんですけど…」とオジサンに説明したんだけど、「ま、いいからいいから、小さいことは気にしなさんな」と言って取り合ってくれない。犬を入れるためのかごを持ってきて、「ほら、選んで選んで!」とせかされてしまった。
 仕方なく、子犬たちの中からちょっと気弱そうなヤツを選んで、もらって帰ることにした。そこで最初の難関がホテル。当然ペットの持ち込みは禁止。そこでコートを脱いで犬のカゴにかぶせて、ダッシュで部屋まで上がろうとした。ところがそういう時に限って、オヤジが『君の名は』の撮影で来た時に何かを差し入れした、みたいなオバサンが、よりにもよってフロントの前で待っていたりして。「中井さ〜ん、私『君の名は』の時にね…」って話しかけられて、こっちはフロントだけは避けたいのに『君の名は』か〜、と心の中で思っていても、「お父さまがね…」とオバサンの話は止まりそうもない。そこで無理矢理「すみません、ちょっとお腹が…」と誤魔化して、あわてて部屋に駆け込んだ。
 部屋に入って、とりあえず犬はバスタブに隠して、一安心。ご飯を食べに行って、打ち上げがあったりして、夜中にホテルに帰ってきて、ベッドに入った。ところが夜中の3時くらいに、どこからともなく聞こえる「クイ〜ン、クイ〜ン」という声に起こされた。「何だ、この声…犬か…犬だ!」すっかり犬のことを忘れていたのは、我ながら薄情だったかも。
 そんなこんなで、その犬を東京に連れて帰って、その犬も5歳になった。毎日1時間半の散歩は自分でやっている。撮影で東京にいない時は女房に頼んでいるんだけど、その女房には常々「僕にとっての1番は犬、君は2番だから」と言ってある。女房も諦めているのか「人間の中で1番だったらイイ」と言っている。犬との付き合いは5年、女房と結婚したのは2年前、つきあいの長さが違うワケだし、それは諦めてもらわないと。

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image ■ 椎名誠さん(作家)の

『シングルモルト』の話

・シングルモルトというのは、「強い」だけじゃなくて「うまい」と思う。ただ酔うだけじゃなくて「陶然」という言葉が似つかわしいような、質の良い酔いを与えてくれる。頭から全身がいいバランスでほどけてくるというか、割と順を追って、礼儀正しく、「これから貴方を酔わせていきますが、ジワジワいきますので、しばらくお付き合い下さい」みたいな挨拶がちゃんとある。

・状況が「酔い」をうまく育てる、ということもある。バーのようなところで気分良く、あるいは草原でたき火をしながらテントの側で気持ち良く、浜辺で波の音を聞きながら気持ち良く、と言った具合に、状況がガラッと変わってもウイスキーに合うシチュエーションはある。僕は海外も含めてキャンプによく行くんだけど、キャンプで使う金属製の万能コップ「シェラカップ」にシングルモルトをストレートでドボドボ入れて、氷も何もないんだけど、たき火を見ながら、風に吹かれながら飲むのもすごくいい。

・スコットランドで驚かされたんだけど、むこうの水割りは水をほとんど入れない。バッタの小便、って言ったら少なすぎるけど、その10匹分くらい。ウイスキーの方が圧倒的に多くて、水はせいぜい10%くらい。でも、それくらいの水を入れることで、香りが引き出される。香りが湧き出されるとでも言うか、実際にやってみると本当に香りが違う。

・「マザーウォーター」という言葉もスコットランドへ行ってはじめて知った。蒸留所でウイスキーを作る時に使っている水そのものを指すんだけど、ハイランド地方にスペイ川という川が流れていて、そこで釣りをしている人は、ウイスキーを持っていて、例のものすごく濃い水割りを川の水で作っていた。これぞまさにマザー・ウォーターの水割り。これは羨ましかった。

・僕はそんなに舌が肥えていないのでよくわからないんだけど、「シングルモルト」の銘柄によって風合いというか風味の違いがあるのは何となく感じる。ストロンガーだったり、ソフトだったり、お茶目な感じだったりする。アイラ島のウイスキーはモロに海の気配がするので、ウイスキーを飲みながら海に想いを馳せる、という思いもかけない体験をすることがある。一言で言うと「磯臭い」んだけど、アイラ島は海から隆起した島なので、泥炭(ピート)にそもそも海の要素が含まれている、という事らしい。そこを通ってくる水と、モルトを燻す時にそのピートを使って作られたアイラ島のウイスキーは、単に強いだけじゃなくて、母なる海の大きく包み込むような柔らかさを持っている。だから僕は、アイラ島のウイスキーが一番好き。

・つい先々週、チベットのカイラスという5000m級の高地を旅してきた。あのあたりはその昔は海の底だった場所で、隆起して5000mもの高地になったらしい。だから地層のよく見える断層があちこちにあって、アンモナイトの化石もよく出てくる。そこに僕はアイラ島のウイスキーを持っていって、シェラカップで飲んでいた。ある時、ものすごく湾曲した巨大な岩山があって、その断層には地層がハッキリと見えていた。「あぁ、これは何億年も前は海の底にあった山だけど、俺がいま持っているのも、同じように大昔に海底から隆起した島で作られたウイスキーだぞ、はるばる持ってきてやったぞ」なんて挨拶をしながら飲んだんだけど、そのシングルモルトは格別にうまかった。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
12'27" You Stepped Out Of A Dream Four Fresh Men Capitol 72438-19175-2-7
21'05" The Cat Jimmy Smith Verve POCJ-2462
32'50" I'm Walking Through Heaven With You Peggy Lee Capitol 7243 4 9883 2 6
43'06" Day In - Day Out Nat King Cole Capitol CDP 7 967912


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