■ 野崎洋光さん(西麻布『分とく山』)の
- 『包丁』の話
よく「包丁一本持って修行に…」なんて言うけど、さすがに包丁一本じゃ仕事にならない。「菜物」と呼ばれる菜切り包丁、出刃、柳刃、最低この3種類は必要になる。
その包丁を研ぐ時に、料理人の才能が見えてくる。包丁を研ぐというのは、ただ尖らせれば良いというものじゃない。賢い人は「なぜこの角度で研ぐのか」と考えながら研ぐので、たとえば魚をおろす時、研いだ刃の面と骨がちゃんとあたって、綺麗におろせる。
極端な話、腕が悪くたって包丁がちゃんとしてれば、魚は綺麗におろせると言ってもいい。それくらい道具は大事。鰹節を削る鉋(かんな)だって同じ。切れる鉋で薄く削れば良いダシが出るし、切れない鉋で無理して厚く削ってしまうと味が濁ってしまう。
柳刃というのは、薄く切るために包丁自体も普通の包丁の半分くらいの薄さに作ってある。逆に出刃包丁は厚く作ってあって、骨などにも対応できる。菜切り包丁はやはり薄くて、大根の桂剥きなどもできるようになっている。
特殊なのが「ふぐ引き」という、フグを切るための包丁。とにかくフグを薄く引くために、カミソリのような刃になっている。こうなると研ぎ方まで特殊で、最初から仕上げ専用の砥石を使わなければならない。
マグロを切るためのしっかりした包丁もあれば、ふぐ引きのような繊細な包丁もある。すべてはその素材の味を引き出すための工夫で、別にマグロの包丁でフグを切れないことはないけど、やっぱりそれじゃ美味しくない。
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■ 椎名誠さん(作家)の
- 『キャンプ料理の道具』の話
野外で料理をする時に、フライパンというのはなかなかの優れもの。最近のキャンピングでは鍋とかコッヘルを重視しているけど、だいたいはフライパンで代用できる。
一番便利なのは、取っ手が組み立て式になっているヤツじゃなくて、普通のしっかりしたフライパン。天ぷらもできるし、肉も焼けるし、煮物もできるし、いざとなったらうるさい女の頭も叩けるし。
天ぷらはかなりオススメ。一見、面倒臭そうに見えるけど、少しの油で作れるし、どんなものでも作れてしまう。そこらにある葉っぱでも、獲ってきた魚でも、町で買ってきた材料でも、なんで作っても美味しい。ベーコンなんて意外と美味しいし、アマガエルが飛び込んできたら天ぷらにして、誰かに食べさせちゃったり。
オーストラリアのアボリジニはいろんなものを生で食べちゃうけど、こっちがフライパンと油を持って行けば、一応、天ぷらにして食べられる。イモムシとかトカゲみたいなヤツは生だとさすがにきついけど、天ぷらにしたら結構うまかった。天ぷらにすれば寄生虫なんかも防げるし。だから海外のキャンピングではフライパンは必携品。
十徳ナイフみたいなものは、便利なようで意外と役に立たない。大きくてシンプルなナイフ、普通の包丁で十分だけど、それと缶切り、ハサミ、これくらいで十分。まな板は結構かさばるので、持っていかずに現地で調達する……と思っていても、見つからないことが多いので、手に持ってハサミで切ってしまう。日本人は抵抗あるかもしれないけど、韓国じゃ普通に料理でハサミを使っているし、あれは便利。
また不思議なもので、ナイフはなぜか、テントを張る時とか欲しい時に見つからない。そのくせ飛行機に乗る時に鳴っちゃって、怒られたりする。その点、ハサミはかわいいヤツで、欲しい時にいつも手元にある。もうちょっとハサミを大事にしてやってもいいと思う。
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■ 勅使河原隆さん(おろし金職人)の
- 『手作りのおろし金』の話
私の作るおろし金は硬い銅を使っているけど、これは切れ味がシャープになるから。刃はすべて手作業でたがねを使って掘っていく。
本当は、我々の業界では「おろす」とか「おろし金」とは言わず、「あたる」「あたり金」と言う。単に縁起の問題だけど。
で、切れ味がシャープということはどういう事かというと、たとえば大根なら、あたった大根から水が出ないし、粒がそろっている。食べた時にもシャッキリしていて、大根の美味しさがよく感じられる。「今の大根は水っぽい」という人もいるけど、それはウソ。大根は100年前から水っぽい。ただ道具が切れないから、水が出てしまっているだけ。
刃の並びが不規則になっているのは、わざわざそういう風に作っているから。刃が縦にキチンと並んでしまうと、大根にレールのような溝ができて、均質にあたれない。刃の並びが不規則にしておけば、大根は平らにあたられていく。だから機会で作ったあたり金は、回すようにあたらないとダメだけど、手作りのあたり金なら上下に動かすだけでいい。
このあたり金を、板どりから全部やると、1日に作れるのは5枚くらい。こんな簡単な道具だけど、作る工程は15工程近くあって、意外と大変。仲間に「それでいくらで売ってんだ?ずいぶん金にならない仕事だな」なんて笑われたけど、職人の世界なんてそんなもの。
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■ 澤口知之さん(六本木『ラ・ゴーラ』)の
- 『イタリアとフランスと日本の道具』の話
イタリア料理とフランス料理の違いは、「こし器」に表れていると思う。イタリアの方が目が粗くて、フランスの方が細かい。それはなめらかな舌触りのソースを好むフランス人と、多少粗くても素材の旨みを好むイタリア人の違いから来ているのでは。
フランスからシェフが日本に来ると、みんな日本の包丁と砥石にビックリして、買って帰っていく。これは世界に誇れる文化だと思う。フランスで厨房を見せてもらうと、みんなもう研ぎ方もだいぶうまくなっているし。ところがイタリアの人は、あんまりそこにこだわりはないみたい。逆にスパッと切るよりボコッと切った方が、野暮ったいうまさがある、という側面もあるんだけど。
中華料理がその最たるものだけど、イタリアも包丁の種類は多くない。小さなペティ・ナイフ、骨を断ち切ったりする大きい包丁、それと普通の包丁、大雑把にそれくらい。ちなみにイタリアでは、包丁を自分で持ち歩かないと他人に壊されてしまうので「車と女と包丁は人に貸すな」と言われる。
日本人は「包丁を使いこなす」という感覚だけど、イタリア人には「包丁を使いやすいように工夫する」という人が多い。柄を外してコイルを巻いて重くしてみたり。基本的に押し切りなので、重くしたい、そのぶん握りを太くしたい、という事なのだろう。
重いと言えば、ヨーロッパの古いホテルに行くと、昔使っていた古い土鍋が飾ってあったりするけど、あれは重い。僕でも3日で腱鞘炎になりそうなくらい重い。中にスープでも入っているのかと思ったら空だった、という事もあった。
世界広といえども、道具に自分の分身のように愛情を注ぐのは、日本だけかもしれない。あちこち見てきたけど、そう思った。
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■ 笠井一子さん(作家)の
- 『お気に入りの道具』の話
私が今一番気に入っているのは、秋田杉で作った小さなおひつ。ご飯がせいぜい3人分くらいしか入らないんだけど、かわいらしくて、箍(たが)の部分が竹で出来ていて、その形が素晴らしい。可憐で美しくて上品で、撫でてやりたいほど。
ご飯を電子ジャーに入れっぱなしにしておくと、どんどん黄色くなって固くなってしまうけど、おひつに入れておくと固くならない。もちろん冷えてしまうけど、翌日になっても「冷やご飯」として美味しいし、お茶漬けにしてもいい。電子レンジで温める必要もない。
たしかに値段はちょっと張るけど、一生モノだと思えば決して高いとは思わない。
パスタ・パン(パスタを茹でる鍋)もお気に入り。段の付いた逆円錐形のブルーの鍋に、赤い取っ手が付いていて、まるで青い牛の顔みたいなんだけど、この形状のおかげで決して吹きこぼれない。だからパスタだけじゃなくて、そばでもラーメンでも、麺類を作る時は重宝している。しかも私は「お昼は麺類」と決めているので、このパスタ・パンがないと、かなり困ったことになると思う。
こういった道具を手に入れるのは、だいたい築地や合羽橋の専門店。大野屋さんとか、調理道具の専門店があるので、そういうところで日本のモノを手に入れる。洋モノなら、ラゴスティーナなどの輸入代理店。
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放送曲目リスト
| Time |
Title |
Artist |
Label |
Number |
| 8'17" |
Almost Like Being In Love |
Beverly Kenney |
東芝EMI |
TOCJ-5384 |
| 20'03" |
Some Of These Days |
Rosemary Clooney |
RCA |
R25J-1002 |
| 30'09" |
That's The Way Love Is |
Bobby Darlin |
ATCO |
7 91795-2 |
| 41'35" |
Piore |
小野リサ |
東芝EMI |
TOCT-24801 |
| 47'42" |
How About You |
Lucy Ann |
V.S.O.P |
V.S.O.P #6CD |
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