SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2002年3月16日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ブレンド」

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 普通「ブレンド」と言えば、ブレンド・コーヒーのことを指しますが、私が作るカクテルだって、お酒をブレンドして作っているんですよね。(もっとも見習いの身なので、まだお客様にはお出しできませんが。)
 カクテルをはじめとして、世の中には混ぜ合わせることで元の何倍も良くなるモノはたくさんあるようで、あちらの席でも「ブレンド」の話で盛り上がっていらっしゃいます。当店に材料のあるものでしたらお作りいたしますが……齋木さまがお話しになっているアレは、さすがにご勘弁下さい。




image ■ 長井香奈枝さん(フランス料理・菓子教室『ポワル』主催)

「ミックス・ジュース」の話

 ミックス・ジュースの場合は、リンゴや柑橘類がベースとしてとても便利。
 「青汁」っていう悪名高い飲み物があるけど、アレと掛け合わせて飲みやすくなる素材を考えるのがミックスジュースを考える時のコツ。例えば、色が変わってしまうのが難点だけどリンゴはすごく向いている。レモンもいい味を出す。
 果物の名前だけじゃなくて、味をイメージするのもコツの1つ。甘いだけじゃなくて酸味のあるジュースを作りたいな、と思ったら、ネーブルだったら甘い、伊予柑だったら酸味がある、タンカン(九州の柑橘類)だったら優しい甘みがある、みたいな事を考えながら作る。素材の味を知らなければそこまではできないと思うけど、最初はリンゴとオレンジをベースに作ればとうまく行きやすいと思う。
 アクセントにカブを使ったりもする。カブを使うとちょっとピリッとする。「バナナとカブのジュース」なんていうのもあるんだけど、バナナの甘ったるい甘みをカブの辛みが引き締めてくれる。分離しやすいカブをバナナの力で分離させない、という意味でも相性がいい。カブの代わりに大根でもおいしい。
 ブレンドする時の秘訣は、ベースになる果物や野菜を必ず1/3以上は入れることと、それから甘味料を入れること。もちろん、入れる必要のない組み合わせもある。4月の後半から5月なら、まだお店に残っているイチゴと、出始めたばかりのスイカ。この組み合わせなら甘味料はいらない。
 「スイカ糖」という甘味料があるくらい、本来スイカは甘い果物。スイカまるまる1個をガーゼやジューサーで絞って、弱火でひたすら似る。するとスイカの赤い色素が浮遊してくるので、それを漉すと蜂蜜のような甘い液体ができる。これがスイカ糖。

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image ■ 島崎直樹さん(調香師)の

「香りのブレンド」の話

 香りの原料は、大きく分けると天然物と合成物の2種類がある。天然物は、植物から採れるものが350種類くらい、動物から採れるものが4種類。ただし実際は、動物モノはワシントン条約などの関係でほとんど使えないので、植物から採れるものを使うことになる。一方、合成物は一説によると3500種類くらいの原料がある。それらの原料をブレンドして、頭の中に思い描く香りを作り出すのが調香師の仕事。
 厳密に言えば、「ブレンド」という言葉のイメージよりはかなり細かい作業かもしれない。というのは、1つの香水を作り出すのに200種類くらいの原料が必要だから。
 調香師になる訓練の課程で、言葉は悪いけれど「イミテーション」という訓練も行う。これは「シャネルの5番」みたいな誰でも知っている香水を嗅ぎながら、その中に何が入っているかを嗅ぎ分けて、実際にその通りに作ってみる訓練。最初は似ても似つかないモノができるんだけど、経験を積む内に本物に近い香りは作り出せるようになっていく。たとえて言うなら、絵画の世界の「模写」のような訓練。残念ながら、本物そっくりの香りが作り出せたからと言って、それが売れるかどうかは別の問題なんだけど。
 本当は、今なら科学的な分析機器が発達しているので、ある香水がどんな成分なのか調べようと思ったら、かなり正確に調べることができる。でも、この訓練をやることで、「この色とこの色とこの色を混ぜたらこんな色になるのではないか」みたいな感覚を養うことが、調香師になる上で重要になる。
 ちなみに、「シャネルの5番」を作り出そうと思ったら、15種類くらいの香りを使えば、香りの骨組みの部分だけは真似ることができる。それはパッと嗅いだだけなら一瞬「シャネルの5番かな?」と思わせることができるんだけど、本物と並べて嗅ぎ較べれば、微妙な香りの違いは明らかにわかる、という程度のもの。
 という風に、香りの世界は非常に微妙なモノなんだけど、自分で作っている最中にウッカリ何かをドドッと入れてしまって、それが思いがけない効果を生んだ、なんてこともあるのが香りの面白いところ。それにはちゃんと「オーバー・ドーズ」という言葉があって、1919年に作られた「ミツコ」という香水も、「C14」という桃の香りのする原料のオーバー・ドーズで生まれたと伝えられている。

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image ■ 輿水精一さん(サントリー・チーフブレンダー)の

「ブレンデッド・ウイスキー」の話

 一般論になるけど、外国人の方が独創的で個性的な味わいのウイスキーを作る。それに較べて日本人は、繊細でデリケートで、バランスのとれたモノを作る。
 ブレンダーの仕事というのは嗅覚がベースなんだけど、嗅覚というのは環境の影響を受けやすい。たとえば湿度1つ違うだけで、嗅覚はまったく変わってしまう。普通、湿度が高ければ嗅覚は鋭敏になって微妙な香りを嗅ぎ分けられるようになるので、日本人ブレンダーが繊細な仕事をするのは、そんなところに原因があるのかもしれない。そして、それを飲む日本人も敏感な嗅覚を持っているので、基本的には日本人ブレンダーが作ったウイスキーが、日本人には合っているのではないだろうか。
 だから、たとえばスコットランドに行ってテイスティングをすると、日本の飲んだウイスキーと同じモノを飲んでも、受ける印象が微妙に違う。日本ではどうかな?と思うことが、向こうでは素直に受け入れられたり、やっぱりスコッチ・ウイスキーの良さは、スコットランドでこそその神髄を味わえるのだろう。
 最近流行のシングルモルト・ウイスキーも、個性的というか主張が明快なので、「今日はスモーキーなピートの利いたアイラのモルトが飲みたいな」みたいな飲み方はよくわかる。でも、ウイスキーの世界はブレンドの方が奥が深い。いろんな味わいと香りの要素が絡み合って、複雑な奥行きを作り出している。そういう小難しい話を抜きにしても、ブレンデッド・ウイスキーの方が飲みやすいし、口当たりもいいワケだし。
 毎日飲んでも飽きないのは、ブレンデッド・ウイスキー。そして日本の空気と水と土が作った日本のウイスキーが、日本人には合っていると信じて、僕はウイスキーを作り続けてきた。
 たとえば、ウイスキー作りの中で一番重要といってもいい「ウイスキーの貯蔵」。この時に使われる樽は、世界的に北米産のホワイト・オークが一番多く使われている。このホワイト・オークに一番近い日本の木がミズナラで、ミズナラの樽で貯蔵したウイスキー、なんてモノも今までに作ってきた。このミズナラの樽は、スコッチにもバーボンにもない、日本独特の個性的な香りを作り出している。
 その代表的な製品が『響』。『響』では、ミズナラの木で作った樽で長い時間寝かせられた原酒が、1つのキー・モルトになっている。ブレンダーがその原酒を見ると、まるでお香を連想させるような独特の香りがある。その香りは、ブレンダーにとって大きな魅力がある。
 でもその香りを前面に押し出すのではつまらない。「こういう香りがありますよね?」と言われてはじめて気付くくらいの、微妙な主張を残す。それくらいの方が、飲み飽きないというか、複雑な奥行きを楽しめると思う。だから『響』の原酒の中には、ピートの利いたスモーキーなものもあるけど、通常これを飲んでいて「ピートの香りが強いね」とは言わないはず。でもその原酒を気がつかない程度にブレンドすることで、『響』全体の華やかさが引き立たっている。そんな複雑さが、ブレンデッド・ウイスキーの楽しさ。

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image ■ 齋木孝夫さん(ジャパン・グッピー・ブリーダークラブ)の

「グッピー・ブリーディング」の話

 グッピーというのは人間と逆さまで、オスの方がきれいな魚。だから色がキレイで尾がヒラヒラしているヤツはオス。メスは意外と地味で、無色か、ちょっと模様がある程度。
 そして世の中には、美しいグッピーを作ってコンテストで競う「グッピー・ブリーダー」という人たちがたくさんいる。みんな趣味でやっているんだけど、毎月1回くらいのペースで日本のどこかでコンテストが開かれているので、グッピーを袋に入れて、遠地の時は飛行機の手荷物で、あっちこっちを飛び回っている。
 グッピーを掛け合わせて美しいグッピーを作るにあたって、その方法論は様々。僕の場合は「尾びれ」「背びれ」「胴の長さ」みたいなパーツごとに考えて、尾びれが小さいグッピーがいたら適度な大きさの背びれを持つグッピーと掛け合わせる、みたいなことを考えてグッピーを「ブレンド」している。
 基本的に目標はコンテストなので、大きければいいというモノではない。背びれの長さ、形、模様、胴の長さ、全体的なバランスなどなど、コンテストの基準に合うパーツを持つグッピー同士を掛け合わせることを考える。それから血縁的に遠いだろうと思われるグッピーを持ってきて掛けることもある。人間でたとえるなら、国際結婚みたいなもの。やっぱりグッピーでも国際結婚は美人が生まれる可能性が高い。そうでなければ美男と美女を掛け合わせるか。
 だからグッピー・ブリーダーには、「面食い」な人が向いている。クラスで「誰がカワイイ」「誰がカッコイイ」みたいな話をしている時に、「えぇ〜、○○なの〜?!」と言われてしまう人は向いていないかも。そこで誰もが認める美人や美男を選べる人が、どちらかというとコンテストには向いていると思う。
 そしてグッピーの場合、地味なメスに対して面食いの目を持っているかどうかが、センスの分かれ目になる。グッピー・ブリーダーの世界では「選別・淘汰の繰り返し」と言われるんだけど、オスは「色が良くない」とか「尾びれが今ひとつ」とか言って選別しやすい。ところがメスはどれも同じに見えてしまい、選別する気がなかなか起きない。でも、その選別が勝負の分かれ目で、その感覚は持って生まれたモノとしか言いようがない。

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image ■ 渋谷清治さん(JT)の

「タバコ」の話

 かつてブレンダーというのは、神様だと思われていた。その人が「これでイイぞ」と言えば、それが絶対だった。でも今は、むしろプロジェクト・リーダー的な存在になっている。僕はJTで「ピース」というブランドを担当しているんだけど、その味をずっと維持するとか、少しブレンドを変えるとか、スペックに関わる部分はピース担当のブレンダーが決める、みたいな感じになっている。
 タバコの味を語る上で重要になるのが、タバコの葉の着位。タバコの木には1本あたり20枚程度の葉が付くんだけど、上と下では味が全然違う。上は味も香りも濃いけど、質が良くない。ちょうど良いのは真ん中あたり。だからタバコのブレンドにおいては、同じ葉でも着位によって「ブレンド」ということが起こりうる。
 もちろん葉の銘柄によっても味は違う。僕たちが一番おいしいと思っているのは、アメリカのバージニア葉。これはイギリスから来た入植者たちが開発した葉で、かつてその葉をどんどんアメリカに輸出したおかげでアメリカは繁栄した、と言われている。だからイギリスのタバコはほとんどがバージニア葉で作られている。このバージニア葉が、タバコのうまみの基本になっている。
 さらにそこに煙の広がりや柔らかさを出すために、バーレー葉というタバコをブレンドする。ケンタッキーやテネシーが主産地のバーレ葉は、アメリカン・ブレンドにたくさん使われていてる。このバーレー葉に砂糖とかハチミツとかココアを加えてトーストすると、タバコの煙に柔らかさや広がりが加わる。
 香りのためには、オリエント葉という葉をブレンドする。これは香りが強くて、独特の香りなので、ほんの少しだけブレンドしている。
 そして個々の銘柄の特徴を決めるのがフレーバー。このフレーバーが非常に複雑で、まず匂いが良くなければいけない。タバコに火をつけないで匂いを嗅ぐ「スティック・アロマ」でいい香りじゃなくちゃいけないし、火をつけて吸った時にもその香りが出なきゃいけない。さらにいい味も出るように作らなきゃならない……といった具合に、非常に複雑な条件が課せられる。ちなみにピースのフレーバーはバニラ・ベースと呼ばれているんだけど、バニラの香りや甘みをベースに、フローラルな香りが加えられている。
 タバコの味というのは人の五感すべてで味わっているモノで、たとえば目隠しをしたり耳をふさいだりしてタバコを吸うなんて実験をやってみると、なかなか味を判定することができない。せっかくタバコを味わうなら、なるべく正常な状態で味わって欲しい。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'17" It Might As Well Be Spring Peggy Lee Capitol 7243 4 93065 2 3
18'48" Everything's Coming Up Roses Rosemary Clooney Hindsight HCD255
30'02" For You Dean Martin Capitol 7243 8 54546 2 2
41'07" Sometimes I'm Happy Four Freshmen Capitol 7243 4 95002 2 8
47'39" I Belive In You Anita O'day Verve 314 559 808-2


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