SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2001年12月8日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「冬のうまいもの」

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 ここ数日はずいぶん冷え込んで、本格的な冬の到来という感じがしますね。
 イタリアン・レストランでこんな事を言うのもなんですが、やっぱり日本人なら冬は鍋ですよね。フグ、牡蠣、あんこう、鴨、どれも冬が旬のモノで、これからが最高に美味しくなるそうです。ま、個人的には、冬と言えばおでんにラーメンなんですが(笑)。
 そういえば、向こうの席のお客さまも、ずいぶん美味しそうなお話をされているようです。その筋の専門家のお話だけに、ちょっと気になりますね。



image ■ 野崎洋光さん(西麻布「分とく山」料理長)の

「冬の野菜」の話

 冬の美味しさと言えば「暖かさ」。ココが一番大事で、どんなに美味しくたって、氷の上にアワビが載って出てきても、美味しくは感じられない。やっぱり冬は湯気が立つ料理が一番おいしい。おでんなんかが典型で、夏に食べる気はしないけど、冬は最高。
 大根は、今ぐらいが一番良い時期。霜が降りた後ぐらいから味が乗ってきて、2〜3月になるとちょっと旨みが伏せてしまう。大根は味付けが難しいとよく言われるけど、この時期の大根は茹でて醤油とおろし生姜をかけただけでも美味しい。煮る時も、下手に出汁を凝らないで、昆布を入れて一緒に煮るだけでいい。
 みんな間違えるのが、調味料で味を付けようとする事。素材の味がすれば、それだけで旬のものは美味しい。その代わり、冬のトマトやキュウリを食べたって美味しくも何ともない。
 意外と知られていないのが、お米は今が美味しいという事。世間では新米が美味しいと言われているけど、新米をちょっと寝かせておいて、少しなれてきた暮れから正月にかけてが本当は一番美味しい。
 昔は第1次産業に携わる人が多かったから、「旬」が誰でも自然と判った。でも今は本や新聞を読まないと判らなくなっている。例えば、ほうれん草は根が赤くて太くて、雪が降っても強い、と言う事を知る人はあまりいない。だから、霜が降りるごとにほうれん草の強いアクが抜けていく、なんて事も知られていない。
 旬のものは美しい。旬の魚はテカテカ光って、形も美しい。その違いが判るのは、やっぱりそれを仕事にしているからかもしれない。私が野球選手のフォームを見ても、良いのか悪いのかなんて判らないけど、プロはちゃんと判るのと同じだと思う。魚屋で旬の魚が並んでいても、その中の1匹が「オレを買え」と語りかけてくる。

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image ■ 桜田栄一さん(麻布十番「さくら田」主人)の

「フグ」の話

 昔は「彼岸から彼岸まで」と言ったくらい、フグは冬が旬。つまり秋の彼岸から始まって、春の彼岸で終わる。「彼岸過ぎたらフグ食うな」なんて言葉もあった。
 縄文時代の貝塚の中からフグの骨が出てくるので、フグという食べ物はそれくらい昔から日本人に親しまれてきたらしい。ただし、その縄文時代のフグは、今のトラフグとはちょっと違う種類のフグだと言われている。世界には100種類ほどのフグ科に属する魚がいて、その中で食用に適している言われているのは20種類。その内のどれかを縄文人たちは食べていたのだろう。とは言ってもフグに毒があるのは今も昔も変わらないので、「隣のアイツはあそこを食べて死んだから、そこは食わないようにしよう」なんて経験の繰り返しで、フグを食べていた。
 そういう時代はかなり長く続いて、科学的にフグのどこにどんな毒があるかがちゃんと判ったのは、実は戦後になってから。谷博士という方が全部系統立てて調べて、安心して食べられるようになった。ちなみに、フグの毒性は青酸カリの30倍。フグ1匹で30人は死んでしまうと言われている。
 マグロだったらその善し悪しは、素人でも判る場合もあるかもしれないけど、フグの場合は難しい。ただ、1つだけ判りやすい目安として、最近よく見掛ける「二枚包丁」とか「二度引き」と言われる、厚い切り身にもう1度包丁を入れて開いた形。あれは歯ごたえを保つための技術なんだけど、もともとフグを薄作りで出していたのは、そうでもしないと噛み切れないから。つまり天然のフグだったら、薄作りの切り身を2〜3枚口に入れると、甘みが感じられる上に歯ごたえもちょうど良い、というもの。そして天然のフグは、薄切りにした時に向こうが透けるような透明感がある。さらに言えば、薄いピンク色がかかった身なら、モッチリしていて薄作りにした時も非常に美しい。そんなフグはウチでも年に数本しか入らない。
 フグは水っぽい魚なので、養殖モノは時間が経過すると身がダレてしまい、歯ごたえがなくなってしまう。だから養殖モノは活け作りなどで、早いウチに調理してすぐに出す。逆に、天然モノは余計な水気を出しながら、どれだけ熟成させて旨さを出すかがポイントになる。フグの調理師の腕の見せ所はそこ。そして、それが一番よく判るのが鍋。  「フグちりは美味しくない」と言う方もいらっしゃるけど、フグちりを食べずして、特に最後のお雑炊を食べずして、フグを食べたとは言えない。だから「フグちりは美味しくない」と思っていらっしゃる方は、残念ながら良いフグを召し上がった事がないのだと思う。

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image ■ 赤羽美代子さん(東麻布「あか羽」女将)の

「鴨」の話

 11月15日から鴨の狩猟が解禁になり、2月15日までが猟期と決められている。養殖の合鴨なら1年中食べられるけど、天然の真鴨が手に入るのはこの時期だけ。真鴨は身が締まっていて、野生の味がする。それに較べて、養殖の合鴨は脂っこい。だから鴨の旬と言えば、この猟期の間になる。
 ウチの創業者の主張だと、鴨はとにかく焼くに限る。その焼く方法も、宮内庁の御猟場と同じように、すずりくらいの大きさの小判状の鉄板「鷹匠鍋」を使う。鷹匠鍋を備長炭の炭火の入った七輪の上に置き、生の鴨の肉を乗せて焼く。焼けた肉は、大根おろしと醤油で食べる。御猟場ではおそらく焼いた鴨に生醤油をちょっと付けて、お刺身のような感じで召し上がっているはず。この形式は、もともと鷹匠が鍋を腰にぶら下げて、狩りで獲った鳥をその場で食べたやり方がルーツなのだろう。
 ウチの店で仕入れているのは、新潟と宮城で捕れた鴨。これは、お米をエサにしている鴨が美味しいから。ササニシキみたいな米を食べている鴨だけに、美味しくても不思議はない。実際、鴨をさばくとお腹からお米が出てくる事も多い。さらに、「陸鴨」と「水鴨」という区別もあって、陸のモノを食べている鴨の方が、水のモノを食べている鴨よりも美味しい。
 「鴨がネギを背負ってくる」という表現は鴨鍋から来ているけど、鴨は焼く時もネギと一緒。その理由は、ネギも鴨と同じで、冬が旬だからだろう。ただ、冬が旬の野菜の中でも、ネギは水分が少ないので、鴨と一緒に焼くのに向いている。





image ■ 吉田秀則さん(赤坂「ウォーターグリル・オイスターバー」オーナー)と大野修吾さん(同店料理長)の

「牡蠣」の話

 オイスター・バーを作るにあたって、世界中のオイスター・バーを見て回った。食べ方でビックリしたのが、アメリカのオイスター・バー。その名も「オイスター・シューター」。ショットグラスに生牡蠣がポコポコ入っていて、まるでホルマリン漬けのようにお酒に漬けてあった。ウォッカ、ジン、テキーラ、驚いた事にダイキリに入った牡蠣もあった。それをみんな一口に飲み干していた。
 生の牡蠣、軽く火を通した牡蠣、しっかり火を通した牡蠣、煮込んだ牡蠣、すべて旨みが違うので、牡蠣だけで様々なメニューが作れる。例えば、軽く火を通した牡蠣というのは、牡蠣の表面だけをサッと炭火であぶって、中の汁を閉じこめてしまう。しかも表面の余分な水分は飛んでしまうので、味はかなり濃縮された濃いものになる。
 日本の牡蠣は世界で一番美味しい。これは水温が一定している海域で育つと、良い牡蠣になるからだと言われている。身の締まり、歯ごたえ、味の濃さなど、牡蠣によって味は様々なので、1つの食べ方だけではもったいない。だからウチでは生牡蠣にかけるソースだけでも5種類を用意している。
 でも、今の季節だけは、最初の1個は何も付けずに、磯の香りと程良い塩加減を味わって欲しい。ワインとシャンパンに最高に合う。

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image ■ 山本益博さん(料理評論家)の

「トリュフ」の話

 冬はトリュフの季節。トリュフは12月の中旬くらいから3月の上旬にしか採れない、地中で育ったキノコの1種。パッと見た感じは「角の取れた石炭」みたいだけど、採れたてを1度食べれば、誰でもその虜になってしまう。僕もトリュフの虜になった人間の一人で、採れたてのトリュフをどうしても食べたくて、この10年で5回もそのためにフランスまで出向いてしまった。
 かつてはフランスのどこでも採れたトリュフも、宅地の造成などで環境が悪くなり、採れるところもプロヴァンスやストラスブールなど、非常に限られるようになってしまった。僕が行ったのはペリゴールの近くで、シェーヌという樹の根元にトリュフができる場所だった。そしてそのトリュフを探すのは、犬の仕事。
 トリュフ探しというとブタが有名で、確かに昔は「交尾していない3歳未満のメスブタ」に探させていた。ところが、ブタは確かに見つけてくれるんだけど、トリュフの匂いを嗅ぎ付けた瞬間にスゴイ勢いで地面を掘り返して、自分で食べてしまう。そうしないように引っ張ったり、横からエサを出したり、いろいろ工夫をしなければいけなかった。そこでトリュフを食べない犬に探させるようになった。
 じゃあ食べもしない犬が、なぜトリュフを探そうとするのかというと、エサとして与える肉にトリュフの匂いをつけて、訓練するんだとか。さらにその肉を土の中に埋めて、それを探す訓練もする。そうやって訓練した犬が実際にトリュフを見つけると、掘り起こした瞬間に「アレ?肉じゃないや」って躊躇するらしい。その隙に人間がパッと横取りする、という仕組み。
 採れたてのトリュフを、洗わずにそのまま囓ったら、土の味、カビの味、それから東京ガスの味がした。採れたてのトリュフからは、それくらいガスが出る。だから出荷前のトリュフが置いてある冷蔵庫に入ると、目が痛くて開けられないほど。現地の人に言わせれば、「パリに着くまでには2割減、だから日本に着く頃には5割減でしょう」とのこと。その言葉がうなずけるくらい、採れたてのトリュフの香りは凄い。
 その採れたてのトリュフ、粗塩をふって噛むだけでも甘酸っぱい味と香りが楽しめる。でも本当に美味しいのは、ガーリックトーストにトリュフの薄切りを乗せて、塩をちょっとふって食べるのが最高。
 向こうに毎年行く内に、「トリュフの王様」と呼ばれる仲買人のペベールさんと仲良くなった。そして自宅に招待されて食事を振る舞ってもらったら、当然その食卓にはトリュフ料理が山ほど出てきた。ところがその時に「お前もトリュフ料理をなにか作ってみろ」と言われてしまった。そこで作ったのが、トリュフの天ぷら。ちょっと厚めに切ったトリュフに衣をつけて、天ぷらを作ったらバカ受けだった。さらに翌年に「また作れ」と言うので、今度はジャガイモとトリュフのかき揚げにしたら、これがまた大成功だった。
 トリュフの塊を日本に持って帰ってきて、試してみたのが「トリュフ酒」。ヒレ酒みたいに熱燗にトリュフの薄切りを入れてみたら、もの凄く甘いお酒になってしまった。これも大好評で、服部先生なんかは「面倒臭いから全部いっぺんに作っちまえ」って言って、トリュフをカンナでパッパと削って、やかんでトリュフ酒を作っていた。これがまた、フグの白子とよく合うのなんの。さらに極めつけは、フグちりの最後に、アサツキの代わりにトリュフのみじん切りを入れたお雑炊。鍋の蓋を取った瞬間に、部屋中にトリュフの香りが立ちこめた。
 ちなみに、そうやってトリュフを大量に食べていると、ハイになって夜中まで大騒ぎになってしまう。これはトリュフにフランス語の「アフロディジアック」、日本語で言うと「催淫剤」としての働きがあるから。10グラムぐらいじゃダメだけど、30〜40グラムも食べると、効果があるらしい。
 ……なんていうのが、バブル時代の思い出。さすがに今は、そんな事ができるハズもない。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'55" I've Got My Love To Keep Me Warm Dean Martin Capitol 72434 95735 9
20'42" The Lady's In Love With You Annie Ross 東芝EMI TOCJ-5349
30'25" Button Up Your Overcoart Gordon MacRae Capitol 7243 49 3066 2 2
39'20" Let There Be Love Sammy Davis Jr. Warner 9 45637-2
47'39" Boum Blossom Dearie Verve POCJ-2653


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