SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2001年6月9日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「CDの裏側」

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 元麻布という場所柄のせいか、それともバーテンダーのジェイクが音楽関係の仕事をしていたせいか、当店には音楽業界のお客様がよくいらっしゃいます。
 例えば、先程いらっしゃって、カウンターの一番奥に座られた方は、「マスタリングの神様」とも言われる、日本におけるマスタリングの第一人者、ビクターの小鉄徹さんです……というのは、実はジェイクの受け売りで、私も「マスタリング」が何か、よく知らないのですが。
 どうやら、音楽制作に関わる重要な裏方の仕事らしい、とは聞いているのですが……もし興味がございましたら、私と一緒に、そのお話を聞いてみませんか?



image ■ 國崎晋さん(サウンド&レコーディング・マガジン)の

「CDの制作に関わる人々」の話

 CDを作るためには、当然、録音という作業が必要になる。実は、これが意外と難しい作業で、それで特殊な技術者「レコーディング・エンジニア」という仕事が存在している。さらに、録音した素材をまとめて、整理して、聞き易くする作業も必要で、それをやるのは「ミキシング・エンジニア」。
 そうやってできた音楽を、1曲目と2曲目の間隔や、ボリュームの違いを調整しながら、マスターCDを作る人もいる。これが「マスタリング・エンジニア」。マスタリング・エンジニアの仕事は微妙で目立ちにくいんだけど、その人の腕次第でCDの売れ行きに相当な違いが出るらしい。普通、CDを買うときはアーチストや作曲者の名前、人によってはジャケットのデザインなんかで買うケースが多いけど、世の中にはマスタリング・エンジニアの名前でCDを買う人もいる。
 そういった意味では、元「電気グルーヴ」の砂原良徳さんが出した新しいCDが、最近のCDの中でもかなりオススメ。ミキシング・エンジニアやマスタリング・エンジニアの整え方が、すごく上手。

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image ■ 吉田保さん(レコーディング・エンジニア)の

「ロングバケーション」の話

 大瀧詠一の『ロングバケーション』が最初に出たのは、もう20年も前になる。それが今回、リマスタリングされて新たに発売された。
 今回リマスタリングするに当たって、20年前と少し違う点がある。昔はエンファシスといって、ノイズを軽減するための工夫をしていたため、音のレベルが低くなっていた。しかし現在の技術なら、元々ノイズは少なくて済むので、レベルを上げて、大きな音で聞けるようなCDにしている。
 20年前、『ロング…』を録音したのは、CBS/ソニーの六本木スタジオ。音響的にも素晴らしいスタジオだった上に、2チャンネルの同時録音が可能だった。そこで「どうせ大瀧さんのことだから…」と思って、チャンネルを余らせるために2チャンネルの一発撮りをやった。4つのピアノ、5本のアコースティック・ギター、ラテン・パーカッションも5人、エレキ・ギター、キーボード、ドラムなんかが入り乱れて、音のかぶりを計算するのが大変だったけど、オーケストラの緊張感を出すように空気合成をうまくやろうと思った試みは、いま聴いてもうまく行ったと思う。
 で、その後の作業が長かった。『ロング…』のミキシングは、ミキシングルームを2つ使って行われたんだけど、1つはオーケストラとリズムセクション用で、もう1つは歌だけ。小節ごとにチャンネルを変えたりして、歌だけで20チャンネルくらい使った。そして実用化された世界最初のミキシング用コンピュータ「ニーカムワン」を使って、24チャンネルの2台リンクでミキシングをした。
 この間、久々に大瀧さんに呼ばれて、サービストラックのミキシングをしたんだけど、久しぶりにやったな〜という感じで、感慨深かった。

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image ■鷺巣詩郎さん(アレンジャー)の

「アレンジャーという仕事」の話

 アレンジャーになる前は、キーボード奏者をやっていた。でも、キーボードでは常にセカンドで、メインのサポート役だった。そこで、メインを上回るために何か特殊な能力が必要だ、となった時に、自然と子供の頃から好きだった「いじる」こと、例えばメロディをいじったり、という方向に向いていった。
 「ド・ミ・ソ」というメロディがあったとしたら、それにどういう和音を付けるか、どういうリズムを付けるかで、音楽はまったく違うものになってしまう。その喜びを一度知ってしまってから、そっちの方が楽しくなってしまった。
 確かに、作詞家や作曲家は印税が入るので、曲が売れれば売れるほど儲かるのに対して、アレンジャーはアレンジ料いくらという契約なので、全然儲からない、という話もある。しかもその割に、仕事は大変。でも、アレンジャーの仕事は、一番ミュージシャン・シップを持てる仕事だと思う。曲を書いた人よりミュージシャンに近かったり、大げさに言えば、仕事のために人が集まった時に、その中心になれる。それは作曲家や作詞家にはない、アレンジャーの特権かもしれない。
 アレンジャーの仕事をしていて思うのが、その「人」の事を知りたいということ。ストレートに「これが好き」「これは嫌い」「こうしたい」「ああして欲しい」とハッキリ言ってくれれば、こっちも仕事がやりやすい。映画のサントラの仕事なんかをすると、「監督の頭の中を覗いてみたい」なんて思う事もある。着ている服、話す言葉、雰囲気なんかで判断して、その人の望むアレンジを作るのも、アレンジャーの仕事。そこに立ち入れるというところが、アレンジャーという仕事の面白いところでもある。
 だから、変な話、アレンジャーは作曲家ともミュージシャンとも仲良くなる事が多い。その証拠に、歌手と結婚するアレンジャーは多い。松任谷正隆と松任谷由実、山下達郎と竹内まりや。もしかしたら、これが一番の特権かも。

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image ■ 松武秀樹さん(プログラマー)の

「YMO」の話

 ボクはプログラマーとして、YMOと「縁の下の力持ち」みたいな立場で関わっていた。彼ら3人が演奏できない部分を、コンピューターにプログラムしておいて、適宜いいところで出していく、というのがボクの役割だった。
 今でこそ当たり前になった「打ち込み」のレコーディングも、YMOが元祖。当時、YMOのレコーディングでは、全体の構図が書かれた設計図のようなものを作っていた。そこには、AメロがあってBメロがあってコード進行はこんな感じ、みたいなことが書かれていたんだけど、驚くべき事に、そこにメロディはインストなのか歌うのか、みたいな、普通は最初に決めそうなことが載っていなかった。
 一番最初に決めるのがテンポ。それが決まったらドラムの基本パターン。そこに仮コードを乗せて…と進めていって、なんとメロディと歌詞は一番最後。だからボクも「え、ここに歌が入るの?」と驚くことが少なくなかった。たぶん、YMOの曲の多くは、メロディが後付け。『Behind the Mask』という曲も、一応歌詞が書いてあるけど、あんまり歌詞通りに歌っていないのは後付けだから。
 音色の注文も抽象的で、よく困ったものだった。「トタン屋根の上に塩酸をまいたら、ジュルジュルいってるようなイメージ」なんて言われたって、そんなのやったことないし。でも、ボタン1つで1000も2000もある音から好きなものを選べる今より、そうやって何もないところから音を作っていくしかなかった当時の方が、よりクリエイティブだったような気はする。何より、いつも困ってはいたけど面白かったし。

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image ■ 小鉄徹さん(マスタリング・エンジニア)の

「カッティング」の話

 私の場合、マスタリングという仕事をやるようになったそもそものルーツは、アナログレコード時代の「カッティング・エンジニア」、つまりレコードの溝を切る仕事に遡る。といっても、別に彫刻刀で削っていたワケじゃないけど。
 1973年、私がカッティングの部署に配属になった頃、日本のレコード業界では1つの大きな問題を抱えていた。それは日本でカッティングしたレコードと外盤では、あまりに音が違いすぎる、という問題。そこでバーニー・グランドマンという有名なカッティング・エンジニアのレコードを片っ端から聞いては、徹底的に研究した。
 アメリカからマスターテープが送られてくると、その外盤も買って、交互に聞き比べた。しかも、微妙に時間差を付けた上でテープとレコードを同時に再生して、スイッチで切り替えながら、何度も何度も繰り返し聞いた。そうやって、外盤はイコライジングやリミッターをどう使っているのか、どうやったら外盤に近づけるのかを研究した。
 そういう研究の結果、それまでは外国から送られてきたマスターテープを素直にカッティングしていたのが、いろいろな工夫をしながらカッティングするようになっていった。時にはスタッフのOKが出るまで、何度もテストカットを繰り返した。大変な作業ではあったけど、好きでやっていたことなので、苦ではなかった。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'08" So Nice Marcos Valle Universal UICY-4023
21'15" The Sweetest Sounds Eydie Gorme CBS/SONY 32DP 696
31'58" I've Got The World On A String Peggy Lee Capitol 7243 4 96729 2 5
40'10" One Note Samba Nancy Wilson Capitol 7243 8 56060 2 1
46'57" You And The Night And The Music Anita O'day Verve POCJ-2081


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