SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2001年6月2日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ベスト・コニサー」

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 当AVANTIには、様々なお客様がいらっしゃいます。例えばあちらの席にいらっしゃる、テレビ番組制作会社の石原隆さまをご存知ですか?このサーチエンジンで「石原隆」を検索すればお分かりいただけると思うのですが、私がこの店で働かせていただくようになる以前から、実に足繁く通っていただいている常連のお客様です。
 その石原さまを筆頭に、当店にいらっしゃるお客様たちのお話は、本当に面白いんです。映画、音楽といった柔らかい話や、政治、科学のような堅い話、珍談奇談に、怪しげな噂話。いろんな話を聞くことが出来ます。誰が言い始めたのかは知りませんが、常連のお客様の間では、そんな面白い話をして下さる方々を、敬意を込めて「コニサー」と呼んでいるとか。なんでもフランス語で「目利き、玄人」という意味らしいんですが。
 よろしかったら、私と一緒にその「コニサー」の話し声に、聞き耳を立ててみませんか?



image ■ 石原隆さん(TV番組制作会社)の

「スペインの飲み屋」の話

 世の中に国はたくさんあるけど、その中でもとにかくスペインが好き。特に、スペインの食べ物が好き。多分、スペイン料理は日本人に合っているんだと思う。
 そもそも、もはや日本の定番料理になってしまった「南蛮」系の料理は、その多くがポルトガルやスペインから伝わったもの。イカのリング揚げとか、南蛮漬けと呼ばれるモノとか、それなりに馴染みがあるので、スペインの食べ物は受け入れやすい。
 食べ物だけじゃない。酒もうまい。そしてその両方が揃っているスペインのバールは、もう天国。これがイギリスのパブだと、食べ物なんかほとんど置いていない。ドイツも同じ。イタリアのバールも、スペインに比べれば全然少ない。飲み屋で食べ物が充実しているのは、スペインと日本くらい。イタリアなんか、たまに食べ物が充実しているバールがあったとしても、イタリア語ができなきゃ注文できないし。その点スペインなら、全部大皿に盛ってカウンターに並べてあるから、指差すだけで注文できるのが嬉しい。
 不思議なことに、アメリカにもイギリスにもフランスにも、「おつまみ」という概念がほとんど無い。でも、スペインはおつまみ天国。魚料理から肉料理から、どんな料理でもほんのちょっとずつを出してくれる。下手をすると、「突き出し」を出す店すらある。

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image ■ 久本雅美さん(タレント)の

「テレビと舞台」の話

 テレビの笑いは瞬発力。台本もあって無いようなものなので、その人のセンスや回転の速さ、それから時代の流行に依存する部分が大きい。それに対して舞台は、1ヶ月も2ヶ月もずっと1つのことを突き詰めて、それをお金を払ってくれたお客さんに対して、同じ空間を共有しながらぶつけていく。だからテレビと舞台では、同じ「笑い」でもその質はまったく違う。
 ぶっちゃけた話、私も仕事が増えていく中で、体力の限界を感じて、舞台をやめようかと真剣に悩んだ時期がある。舞台は本当に好きだし、今はやめる気なんて全然ないんだけど、その時だけは「このままやっていけるんだろうか?」と悩んでしまった。
 というのは、こういう言い方をするとすごく語弊があるんだけど、舞台よりもテレビの方が楽な部分があるから。もちろんテレビはテレビで、時代の流れと速さもあるし、要求されるクオリティの高さもあるので、難しい面も厳しい面もある。でも、1つの事を突き詰めていく舞台の方が、体力的にも精神的にも追い込まれる感覚が強い。
 よく「芸人が忙しくなると舞台が荒れる」と言われるけど、私の場合も実際にそうだった。考えるエネルギーが足りなくなってしまい、傲慢な私がどこかで「こんなもんで笑ってくれるんじゃないか?」なんて言い出す。そんな状態で舞台に立つ自分が嫌で、その時は本当に舞台をやめようかと思った。
 だけど、1つの舞台が終わるたびに、「またやりたいな」と思う気持ちが湧いてくる。それは舞台に立つと、自分の才能の無さを痛感させられるからかもしれない。
 この間も若手中心の公演にちょっとだけ出させてもらったんだけど、若手のエネルギーに感動させられた。そして、つくづく「あっち側に立ちたい!」と思った。私は心の底から、舞台が好きなんだと思う。だからもし、テレビか舞台かどっちかを選べと言われたら、舞台を選ぶと思う。だって、舞台が終わった後の酒って、死ぬほど美味しいし。

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image ■ 鏡リュウジさん(西洋占星術研究家)の

「おまじない」の話

 趣味のコレクションで、古いイギリスの占い用の暦を持っているんだけど、100年くらい前の本なのに「幸運を呼ぶペンダント」の通販の広告が載っているのが面白い。効く効かないみたいな話はさておき、イギリスのフォークロア(民族的)なおまじないは、夢があって面白い。
 例えば有名な「四つ葉のクローバー」。あれには探し方があって、一生懸命に下を見て探すのではなく、とりあえず四つ葉のクローバーを1つ見つけて、それを左肩越しに後ろに投げるんだとか。すると、それが落ちたところに、別の四つ葉のクローバーが見つかる、と言われているらしい。「足元ばかりを見ていないで、もうちょっと広い視野を持ちましょう」という教訓なのかも知れないけど、それにしてもお話として、ちょっとカワイイ。「新月から月が満ちていく期間に、ポケットの中で銀のコインをひっくり返すと、金運が良くなる」なんておまじないもある。
 昔から聖なるものと考えられてきた「お酒」にまつわるおまじないも多い。ギリシャ・ローマの時代には、グラスに入ったワインを的に向かって投げ掛けて、うまく当たれば願いがかなうというおまじないがあった。イギリスの場合はパブが男性社会だったので、あまり占いとかおまじないは流行らなかったみたいで、そのかわりに紅茶占いが盛ん。茶こしを使わずに紅茶を入れて、飲み終わった後にソーサーをひっくり返して3回くらい回す。そこに残った茶カスが何に見えるかで占う、いわばロールシャッハテストのような占い。
 それから、15世紀のイタリアでは、メランコリー(鬱病)の患者にワインを勧めていたらしい。ワインは太陽の力を呼び起こすと言われていたので、ワインと音楽、それから日光浴で治ると言われていた。

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image ■ 葉千栄さん(東海大学助教授)の

「白族」の話

 ボクの生まれと育ちは上海。でも、20代の頃に映画俳優の仕事をしていたので、ロケで中国のあちこちを回った。その中で特に日本の皆さんにお勧めしたいのが、雲南省。ここは本当に美しい。
 当時、テレビドラマの撮影で、雲南省の大理という白族の自治区を訪れた。そこで最初に見たのは、彼方の地平線まで夕暮れに染まる中、白族の少女が天秤を担いで田んぼを歩く光景だった。少女は胸まである細長いスカートをはき、頭にはインドのターバンのようなものを巻いていた。そこに天秤棒が1本。このラインの美しさには、ただただ絶句するしかなかった。
 で、その撮影の時に、実はちょっと面白い事があった。美術の担当の画家が、暇なときにあちこちを歩き回って写生をしてたらしいんだけど、ある時「すごいモノを見た!」と興奮して帰ってきた。そのすごいモノとは、なんと白族の少女たちが川で入浴しているところ。その場にいたヤツは、ボクも含めてみんな盛り上がっちゃって、その翌日、まるで野戦軍のようなカモフラージュを全身に施して、その川へ5〜6人で出掛けていった。
 少女達が来るのは夕方6時。僕たちは4時から、身じろぎもせずにジッと川辺に潜んでいた。すると確かに、少女たちが歌を歌いながらやってきて、川に入り始めた。ところが、彼女たちは服を着たまま川に入っていく。そして川の斜面を利用して、ちょっとずつ水位が上がっていくのに合わせて、ちょっとずつ服をまくっていった。
 見ている方も感心するしかなかったんだけど、もう本当に器用。肩まで水に浸かった時には、服は頭の上にキレイに畳んであったし、水から上がる時も、うまい具合に服を降ろしていって、結局期待したものは何も見られなかった。
 さらにこの話には後日談があって、最初にこの話を持ってきた画家は、このとき見た光景を北京空港の待合室にデカデカと壁画として描いてしまった。ところが、時代はまだ1980年代初頭。文革以後、初めての裸体画として、中国全土で大議論を巻き起こし、ついに1ヶ月後には布を掛けられて隠されてしまった。
 布で隠された後も「あそこに噂の絵がある」と言われて、北京空港を利用する人がみんな興味津々で前を通り過ぎていったものだが、さっきも言ったとおり、裸なんかカケラも無い。ちなみにその絵は現在、もちろん布で隠されることもなく、堂々と飾られているけど、誰も見向きもしない。

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image ■ 阿刀田高さん(作家)の

「シェイクスピア」の話

 大胆に言えば、日本におけるシェイクスピアの位置付けは、少し間違っているんじゃないかという気がしてきている。日本では大学の先生がシェイクスピアを教えるものだから、もの凄い文学作品として教えられている。だけど実際に文章を読んでみると、芸術家というよりはエンターテナー。間違いなくシェイクスピアは、芝居を見た客が家に帰る途中で「あぁ今日の芝居は面白かった」と言いながら帰ってもらうために書いている。
 例えば、19〜20世紀に活躍したロシアの小説家トルストイも、シェイクスピアのことを完膚無きまでに批判している。「何度シェイクスピアを読んでも、シェイクスピアが偉大な作家だったとは思えない」というのがトルストイの主張。トルストイが正しくてシェイクスピアが間違っている、というワケではないけれど、そういう主張があるということが、日本でほとんど知られていないことの方が問題だと思う。
 そもそも、シェイクスピアが活躍した17世紀頃は、シェイクスピアの芝居の隣の劇場で何をやっていたかというと、『熊イジメ』みたいな見せ物をやっていた時代。これは単に、檻の中の熊を棒で突っついていじめるだけの見せ物だったんだけど、テムズ川を渡って劇場街まで来た客が「今日はシェイクスピアの芝居にしようか、それとも熊イジメにしようか」なんて考えている状況で、そんなに高尚なことを狙って芝居を書くはずがない。
 ただ、それでも、最も有名な「生か死か、それが問題だ」を筆頭に、シェイクスピアの芝居の随所に散りばめられた、人生をスパッと切り取るような名言の価値は変わらない。そういう言葉を1つ1つ取っていくと、その言葉の力強さや鋭い人間観察眼には、ひたすら頭が下がる。
 だからシェイクスピアは、高いところで鑑賞しようと思えばそうできるし、低いところで鑑賞しようと思えばそれもまた楽しめる。いわば全方位サービスの芝居。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
7'50" Fantastico Peggy Lee Capitol 7243 8 56056 2 8
18'21" To Each His Own Keely Smith Jasmine JASCD 323
24'18" Close Your Eyes Doris Day Columbia 475749 2
36'43" Just For The Fun Of It Nat King Cole Capitol CDP 0777 7 89545 2 1
45'26" I Never Knew Patti Page Emarcy PHCE-10014


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