SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2001年3月31日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ストリングス」

 バイオリン、チェロ、ビオラ、コントラバスといった弦楽器を総称して、ストリングスと呼ぶそうですね。そうそう、ギター、ウクレレ、琴、三味線、胡弓なども弦楽器ですから、ストリングスと言っても良いのかもしれません。琴や三味線に、英語の"strings"という言葉が似合うかどうかは、また別の問題ですが。
 そういえば、今日は先程から、一流のバイオリニストやチェリストがいらっしゃって、ストリングスの魅力について語っておられます。もし興味がございましたら、その話に耳を傾けてみてはいかがですか?



  • 高嶋ちさ子さん(バイオリニスト)の

    「バイオリニストの生活」の話

     子供の頃、バイオリンを習い始めて最初の2年は楽しかったけど、その後は地獄だった。
     最初は、パズルかゲームみたいな感覚で、右手と左手を使ってうまく音を出すのが面白かった。ギターみたいにフレッドがないので、ちゃんとしたところを押さえないと、微妙に音がズレてしまうし。右手で弓を持つのも意外と難しくて、形が決まるようになるまで2〜3年かかる。ピアノみたいに、ネコが歩いただけでも音が出る楽器とは違う、なんて言うと、ピアニストは怒るけど。
     そして、バイオリンを毎日弾き続けていると、指先は固くなり、指紋は消えてしまう。しばらく弾かなければ元に戻るのかもしれないけど、バイオリニストを続けている間は「しばらく弾かない」という事があり得ないので、ずっとこのまま。
     旅行に行くときでさえ、バイオリンは手放さない。私は特に神経質なのか、ちょっとでも基礎練習はやらないと、気になって仕方がない。遊んだ後では疲れて練習に身が入らないので、遊びに行く前に必ず練習する。

    【Hot Link !!】

  • 高嶋ちさ子オフィシャルホームページ
  • 大人から始めるヴァイオリン
  • バイオリンをはじめよう**Adagio**
  • Violin Lovers



  • 溝口肇さん(チェリスト)の

    「楽器と性格」の話

     3歳の時にピアノを教わり始めた頃は、「神童」と呼ばれていた。まぁ、それくらいの神童はあちこちに居るんだけど。その後、10歳くらいでピアノが嫌になってしまって、「やめたい」と言い出したら、それじゃあ他の楽器を、という話になった。
     最初はオーボエかトロンボーンが良いと思っていたんだけど、たまたま家からすぐ近くのところに、バイオリンやチェロの先生が居た。で、そこへ連れて行かれて、「体も大きいし、もう大人用のチェロも使えるから」という理由で始めたのが、チェロとの出会い。
     やっぱり、習い始めというは楽しくて、しかも年に一回の合宿で、弦楽合奏の講習会があるのが嬉しくて。ピアノは基本的に一人で演奏する楽器なんだけど、チェロはみんなで合わせる楽器だから、すごく楽しかった。
     いろんな楽器を弾く人がいるけど、人の性格は、使っている楽器によってだいたい分類できる。例えば、芸大の学食へ行くと、着ている物や雰囲気で、「ピアノ科だ」とか「歌科だ」みたいに、何科の人間かすぐに分かる。大雑把に言って、音域の高い楽器を弾く人は、キツイ性格の人が多い。
     チェロの場合、音域が人間の声、それも男性の声に非常に近いと言われているけど、個人的には自分の声は嫌いなので、あまり良い気はしない。でも、確実にチェロの音色は、その人の声に似ると思う。特に、フレージングと言って、メロディが切れるところで弓を返すんだけど、その瞬間は息を吸うタイミングなので、ボーカリストと同じで非常に個性が出る。そして、その個性は、やっぱりその人の話し声をイメージさせる。

    【Hot Link !!】

  • HAJIME MIZOGUCHI WEB SITE
  • Oh! That Cello!
  • 大人のためのHow to チェロ



  • 葉加瀬太郎さん(バイオリニスト)の

    「バイオリン」の話

     バイオリンもギターも、その形の原型は、女性の体をイメージしていると思う。ウエストのくびれた感じがたまらない。しかも、ギターじゃ表も裏も平面だけど、バイオリンは曲面で、これがまた、何とも言えないラインをしている。これを磨いていると、かわいくて仕方がない。
     あんなにキレイな形をしている楽器は他にないと思う。フルートはパッと見た感じキレイだけど、所詮「棒」だし。造形美という意味では、バイオリンには及ばない。
     しかも、普通の楽器はどんどん改良されていって、例えば管楽器なんか特にそうなんだけど、指を押さえるためのシステムは変わっていくのに、バイオリンだけは300年前から何も変わっていない。つまり300年前に、すでに完成形ができてしまっている。これは凄いことだと思う。
     そしてバイオリンは、ご存知の通り木で出来ている。ところが、木というモノは、腐らない限り生きていて、常に変形を続ける。だからバイオリンはニカワという柔軟な接着剤を使っていて、あっちが伸びたりこっちが縮んだりしても大丈夫。そのお陰で、何百年経ってもバイオリンは生き続けることができる。
     僕が使っているバイオリンも、220歳くらい。そういう楽器を手にしてみると、今まで誰が使ってきたんだろう、どんなバイオリニストがこの楽器と関わってきたんだろう、そんなロマンに駆られる。
     バイオリンは、150年経ったときに、そのバイオリンが良い楽器かどうかが分かると言われている。良いバイオリンは、そこからどんどん磨きが掛かっていって、寿命はだいたい300〜400年らしい。名器と言われるストラディバリウスやガルネリ・デルジェスは、おおよそ300年なので、今が全盛期。僕のバイオリンは約200年で、これからどんどん良くなっていく。どんなに良い作りでも、100年のバイオリンじゃ、まだまだ音が若い。年月でしか為し得ないモノが、バイオリンの世界にはある。
     逆に、ストラディバリの師匠でアマティという人がいるんだけど、この人のバイオリンは、もうパワーが無くなってきて、オーケストラには向かないとされている。むしろ、小規模なサロンでバッハをやると、本領を発揮するとか。それはそれで、そのバイオリンにしかできない魅力だと思う。
     僕は凄くスコッチが好きで、以前にマッカランの50年モノを買ったことがある。1本100万円もしたので、25人で4万円ずつ出し合って、イギリスのオークションで買った。そのマッカランを飲んだとき、なんだかバイオリンのニスのような、アンティークショップの匂いのような、時の流れを感じさせる香りがした。そういう「骨董」としての価値はバイオリンにもあって、バイオリンの値段は高くなっている。
     ヨーロッパの貴族は、絵と同じくバイオリンもコレクションしていて、素晴らしいバイオリニストに貸し出していた。その代わり、ウチで必ずサロン・コンサートをしなさい、という約束だったので、ヨーロッパにはサロン音楽の歴史が脈々と続いている。その結果、バイオリンの値段も高くなっている。

    【Hot Link !!】

  • 葉加瀬太郎のSo Nice!
  • FOREVER TANGO ORCHESTRA WITH 葉加瀬太郎



  • 中澤宗幸さん(弦楽器デュオ)の

    「ストラディバリとガルネリ」の話

     バイオリン発祥の地は、北イタリアのロンバルディア地方、ミラノからバスで1時間弱の場所にある、ポー川の流れる人口約9万人の街、「クレモナ」。ここでストラディバリ、ガルネリを始めとして、多くの名工が生まれた。
     数々の名工の中でも、最も有名なのが「ストラディバリ」。バイオリンと言えば「ストラディバリ」と言われるくらい、バイオリンの王様として広く知られている。1700年代の初頭に生まれ、93歳で死ぬまで、素晴らしいバイオリンを作り続け、過去の名工の中で最も多くのバイオリンを遺した人でもある。
     ストラディバリは、非常に恵まれた生涯だった。良い弟子に恵まれ、王侯貴族に可愛がられ、経済的にも何不自由ない、理想的な人生を送った人だった。それに対し、ストラディバリと双璧と言われる名工ガルネリは、悲惨な人生を送った。ある時は喧嘩をし、ある時は牢獄に入り、その牢獄で作ったと言われる「プリズン・デルデス」というバイオリンも遺っているほど。
     それぞれのバイオリンは、それぞれ人生を表すかのような音を出す。ストラディバリのバイオリンは、華麗で、パワーがあり、透明感があって、多くの人に好まれる音を出す。片やガルネリのバイオリンは、どことなく愁いを帯びた、それでいて底知れない深みのある音。ところが我々東洋人にしてみれば、やや仏教的無常観の漂う、ガルネリの音に惹かれてしまう。
     残念なことに、こういう人生を送ったガルネリのバイオリンは、やはりあまり数多くは遺されていない。現存するのは、もう100本もないだろう。

    【Hot Link !!】

  • 弦楽器デュオ
  • 名器は人類の宝物(イナリウスのページ)



  • マイク真木さん(ミュージシャン)の

    「フィドル」の話

     カントリーのバイオリンならできるんだけど、ちゃんと子供の時にクラシックを勉強したワケじゃなくて、歳をとってから覚えたものなので、できるのはコレだけ。
     まったく同じバイオリンを使っているのに、なぜかカントリーやアイリッシュに使うバイオリンは「フィドル」と呼ばれる。その区別の仕方はよく分からないんだけど、多分クラシックに使うのが「バイオリン」で、カントリーとかジプシー・バイオリンみたいに踊る音楽に使う場合は「フィドル」と呼ぶんだと思う。映画『タイタニック』で弾いて踊っていたのも、「フィドル」なのでは。
     僕は、作曲の仕事もしているので、今風に言えば「コンポーザー」になるのかもしれないけど、何か偉そうなので、「ソングライター」と名乗る方が好き。「ソングライター」なら、フィドルを持って旅をしていそうな感じだ
     フィドルの見せ場は、イントロと間奏、そしてエンディング。フィドルを弾きながら歌うのはかなり難しいので、自然とそうなったんだと思う。昔、自分が歌いながら、同じメロディをフィドルで弾いている人を見たことがあるけど、器用だなと感心した。

    【Hot Link !!】

  • fiddleをひこう(ちゅーちゅーのちゅー)
  • アメリカ音楽/チェロ&フィドル(エスノワールド)
  • ケルト音楽フィドル(エスノワールド)
  • ケルトの国・アイルランド(TRINITY-MUSIC)





    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    8'36" On Top Of The World, Alone Gisele Mackenzie BMG BVCJ-7373
    15'57" Now Is The Hour Frank Sinatra Reprise WPCP-5792
    29'11" Shangri-la Vic Damone Capitol CDP 7243 8 28513 2 5
    36'47" My Favorite Things Jane Morgan Curb D2-77405
    44'31" Y'All Come Lonesome Pine Fiddlers London GT 6012

  •  Back