「バーリトゥード」と言うのは、ポルトガル語で「なんでもあり」という意味。ブラジルでは意外と普通に使われている言葉で、大学の学食で「バーリトゥード・バーガー」なんてのも見掛けた。要するに、パンだけ渡されて、後は肉やキャベツや卵、何を乗せて食べてもいい、というハンバーガー。バーリトゥードという言葉自体は、格闘技を意味するモノではない。
そのポルトガルの言葉が日本で有名になったのは、あの「グレイシー柔術」が有名になったから。最初に日本でグレイシーが有名になった頃は、今のヒクソンやホイスのお父さん、エリオ・グレイシーが最強だった。
そのエリオには10人ぐらいの子供がいて、中でも長男ホリオンがなかなかの策士。アメリカのアルティメット大会に参加して、グレイシー柔術の名を広めようとした時にホリオンは、三男にして最強の男ヒクソンではなく、六男のホイスをグレイシーの看板として指名した。これは喩えて言えば、『ゴッドファーザー』におけるジェームズ・カーンとアル・パチーノの関係。ドン・コルレオーネたるエリオの後継者としては、血気盛んでジェームズ・カーン的なヒクソンよりも、多少弱くてもアル・パチーノ的なホイスの方が、一族のために尽くすだろう、そうホリオンは判断したらしい。
その結果、ヒクソンはむくれる、ホイスは「僕より10倍強い兄がいる」と発言して物議をかもす、ヒクソンはホリオンと喧嘩別れして勝手に動き出す、と複雑な事になっていった。こんな具合に、バーリトゥードの歴史はグレイシー一族の血のドラマでもある。
バーリトゥードでは、打撃系の格闘技よりも寝技系の格闘技の方が圧倒的に有利だと思う。というのは、人間というのは危険な状態になると「寝る」のが本能だから。これは子供の喧嘩を見ているとよく分かる。最初は殴り合っていても、じきに取っ組み合いになり、最後には転がって上になったり下になったりしている。この最後の上になったり下になったりという部分で強いのが、柔道や柔術。レスリングも強いけど、レスリングは有利なポジションである「上」をどう取るかという格闘技。それに対して、柔道では三角締めや腕ひしぎといった「下」から攻める技術を持っている。
桜庭が強いのは、レスリングで培った「上」を取る技術を生かして、なおかつそこから無理に攻めないから。他のグレイシーにやられた人は、みんな上から無理に攻めてやられている。