映画『ホワイトアウト』の撮影中、「こんなに撮影が大変な映画の原作を書いたヤツは誰だ!!」と思ってしまった。それくらい雪山での撮影は大変だった。
一番最初に撮ったのは、富樫と吉岡のシーン。その時はまだ雪が少なかったので、煙を焚いて織田君に強力なハリケーン(送風機)で吹き付けた。織田君は大変だったと思うけど、まだこの辺では、撮ってる方はそれほど大変じゃなかった。
「ホワイトアウト」なんて題名の映画を撮っていても、もちろんその現象を経験したスタッフは誰一人居ない。だから最初の内は「こんな感じ?」って感覚で撮影していたんだけど、撮影している最中に本物のホワイトアウトを体験したら、もうスゴイの何の。痛いわ、見えないわ、吹雪くわ、顔は凍るわ……あの映画は、ある意味ドキュメント。織田君の厳しい表情は、すべて本物。
でも、やっぱり監督としては、織田君の本当に厳しい表情を見ると、つい「やった!」と喜んでしまう。自分も呼吸困難になるくらい苦しいのに、「この表情はイイ!」と思うと、なかなか「カット!」の一言が言えない。それでも織田君はめげずにカットが掛かるまで演技を続けてくれた。だから終わったら、織田君を抱きしめるしかなかった。
映画の中に出てくる雪崩は、実は合成。最初はダイナマイトで人工的に雪崩を起こして撮影しようとしたんだけど、やっぱりうまく行かなかった。そこで外国のライブラリーから雪崩の映像を持ってきて、CGで合成した。映画の中で墜落したヘリコプターもミニチュアの特撮。そういう技術に関しては、日本映画はスゴイ。
ヘリコプターと言えば、空撮も大変だった。ヘリコプターは、雪をローターに巻き込んでしまうので、本来は晴れの日しか飛べない。ところが晴れの日にヘリから空撮すると、ヘリの陰が映像に映り込んでしまう。仕方がなく曇りの日を狙って撮影しようとしたんだけど、そういう時に限って快晴続き。しかも大雪原をスノーモービルで走るシーンなんだけど、新雪のままだとスノーモービルは沈みかねないので、何十台もの圧雪車を持ち込んで、全面を圧雪。我ながらバカな事をやってると思うけど、結果としてはそれだけの価値がある映像になったと思う。