SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2000年11月18日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「江戸の粋(いき)」

 先週、仕事で京都へ行ったいつもの紳士は、まだ戻っていないようだ。
 その代わり、というワケではなかろうが、今日は市田ひろみさんが、土曜日夕方のAVANTIへ現れて、ジェイクと昔話に華を咲かせていた。
 その口振りからすると、どうやら市田さんは、AVANTIがまだ進駐軍向けの将校クラブだった時代に、AVANTIへ足繁く通った時期があったようだ。しかも、ジェイクとはお互いに憎からぬ気持ちを抱いていたようだが……
 その後、市田さんは女優をやめ、京都へ帰ってしまったのは周知の事実。一体、市田さんとジェイクの間に、何があったのだろうか。今日は二人の話し声にも、ちょっと聞き耳を立ててみよう。




  • 桂三木助さん(落語家)の

    「江戸っ子らしい噺家」の話

     「大工調べ」に出てくる大工の棟梁は、江戸っ子らしくバカにお節介。「あっしがこうやってわざわざ間に入って頭を下げているんですから、許してやったっていいじゃござんせんか」って、ぜんぜん筋が通ってないし。「大家さん、そんな因業な」「あたしゃ因業ですよ、因業大家で通ってんだ。」なんて、大家さんも負けてない。
     でも、その啖呵の切り方たるや、本当に格好良い。そういう噺がやりたくて、みんな噺家になる。「芝浜」や「大工調べ」や「竈(へっつい)幽霊」を、格好良くやってみたいと誰もが思う。パーッと喋ってスッと下げを言った時に、ドッと受ければ、「ざまぁみやがれ、こんちくしょう!」って叫びたくなるような快感が走る。
     亡くなった(金原亭)馬生師匠なんかは、普段の生活からそんな感じの人だった。舞台に上がる前に350ml缶のビールを1本クーッと飲んで、降りてきてはまた1本クーッと飲んで。それで「お先っ!」って出ていく姿は、格好いいったらなかった。
     (春風亭)柳朝師匠も、馬生師匠とはタイプが違えども、いろんな意味での「江戸っ子」の典型だったと思う。一言で言うなら、柳朝師匠はうるさいタイプの江戸っ子。楽屋へ入ってきて、テレビのボクシングの試合を見るなり、「お、ゴンザレスだな」「違います、○○と××です」「バカヤロウ、審判だよ」だって。負けず嫌いだから、「知らない」とは絶対に言わない。かといって、黙っていることもできない。昔の江戸っ子はみんなこんな感じだったんだろうな、と感じさせる人だった。

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  • 金原亭馬生師匠(「落語のバーチャルワールド」内)
  • 五代目 春風亭柳朝師匠(「落語のバーチャルワールド」内)
  • 大工調べ(「まさやのホームページ」内)
  • 芝浜(「まさやのホームページ」内)
  • 竈幽霊(「まさやのホームページ」内)



  • 羽場のり子さん(料亭・立花)の

    「料亭」の話

     この間、IT関連の会社の方がウチへいらして下さったとき、「あなた達のような若い人たちがこういう料亭を使わなくて、この先誰が使うの」とお説教をしてしまった。六本木も良いけれど、料亭のような所にも足繁く通って、場慣れすることが肝心。
     料亭というのは、たとえ2人で入っても、20畳の部屋を2人で占有することになる。しかも、その後に他のお客さんが入るわけでもない。だから、料理を食べるだけじゃなくて、そういう空気も一緒に味わって欲しい。
     バーなら、何十人もの人が空間を共有する。それがバーの良さではあるけれど、人目を気にせずゆっくり話をしたい場合は、やっぱり料亭のお座敷の方が向いている。
     そして、「女将さん、ちょっと芸者さん呼んでよ」などと、その使い方がギクシャクしないというのも、男性のステータスの一つなのでは。それが出来るには、やっぱり通わないことには。
     昔から花柳界には、「この人は将来、出世するに違いない」と女将が見込んだ人には、「お勘定は出世払い」という伝統が本当にある。将来、もしその人が社長にでもなったら、会社の大きな宴会をウチでやっていただければ、という期待を込めての「出世払い」。IT関連の会社の方に説教をしてしまったのも、そういう気持ちの延長線上にある。

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  • 立花(「ぐるなび」内)



  • 悠玄亭玉八さん(幇間)の

    「声色と都々逸」

     最近は花柳界のお座敷だけじゃなくて、どこかに呼ばれて、1時間なにかやってくれ、なんて依頼が多い。そんな時は、三味線を使って、「声色」なんかをやる。歌舞伎役者の声色を真似るんだけど、例えば「玄冶店(げんやだな)」のお富と与三郎を菊五郎と玉三郎でやったり。

     (声色の実演)

     お酒の席だと、都々逸(どどいつ)もよくやる。「外は雨、酔いも回った、さあこれからは」とか。

     (都々逸の実演)

     「…さあこれからは、あなたの度胸を待つばかり。あなたの度胸は嬉しいけれど、言い訳ばかりで夜は明けて」なんて、こんな色っぽいヤツもやっている。

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  • 太鼓持あらいのホームページ(北陸の幇間)



  • 片岡孝太郎さん(歌舞伎役者)の

    「花柳界」の話

     芸子さんも歌舞伎役者も、「芸」を習っている場所のおおもとは一緒。祇園の場合は井上流という舞だったり、新橋だと西川流という舞の流儀を習っている。
     僕達も同じ作品を踊ることはよくあるので、芸子さんに「この間やってらっしゃったあの役、どうすれば良いんですか?」と聞かれることもある。でも、若い子に聞かれれば「実はあそこでこういう仕掛けがあって…」なんて得意気に答えることもできるのだけど、最近はそういう方も少なくなってしまって、聞かれるのは年齢的に大先輩にあたるような方々からばかり。逆に、こっちが教わってしまったりする。なにせ中には、昔の大役者とちょっといい仲だった、なんて方もいらっしゃるし。
     僕たち役者が新橋あたりの花柳界へ出向くのは、本来、旦那さんに「あの役者をちょっと呼んでくれ」と言われた時。今でもそういう事が時々ある。大昔は、芝居小屋の向かいに芝居茶屋というのがあって、そこでチケットを取ったりしていたんだとか。その芝居茶屋で、お客さんが「誰々に会いたい」みたいなことを言うと、役者が出ていって挨拶して、その代わりにご祝儀をもらった、というのが始まりだったと聞いている。
     実際に新橋へ行くと、「あら、孝太郎ちゃん」なんて芸子のお姉さん達に呼び止められて、僕の芝居を「誰々さんの時はこうやっていらっしゃったわよ」なんて言われてしまう事もある。ある意味、花柳界のお姉さんというのは、僕なんかにとっては怖い存在。

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  • 京舞井上流について(「片山家能楽保存財団HP」内)
  • 西川左近と鯉風の仲間たち(西川流鯉風派)



  • 杵屋邦寿さんと松永鉄九郎さん(伝の会)の

    「地方(じかた)」の話

     オペラも歌舞伎も、お約束がわかると面白い。歌舞伎なら、幕が閉まっているときに流れてくる音楽で、次の場面がどんな場面かが分かる。
     まぁ、その前にストーリーも分かっていると言えばそうだし、次の場面が分かったから何だって言う事もできるけど、例えば「川」の場面だとこんな感じ。

     (「川」の三味線の演奏)

     「雪」の場面にも決まった音楽がある。雪に音楽を付けたというのは、昔の日本人の偉いところだと思う。

     (「雪」の三味線の演奏)

       これが掛かると、僕たちの頭の中には、雪が深々と降っている情景が浮かぶ。忠臣蔵の最後の場面なんかが典型。
     それから、この音楽は「若い娘が追われて逃げている」場面。逃げているのがお侍さんだと、また違ってくる。

     (「逃げる人」の三味線の演奏)

     こんな具合に、「若い娘」だと小走りで色気のある感じ、「お侍」だとなんか偉そう。
     こういう短い曲は何千とあって、この場面にどの曲を使うかを選ぶのが「イテツケ師」というプランナーの仕事。さらに、その曲をどう演奏するのかを決めるのが「舞台師(たてし)」。
     役者さんが役を演じる。その気持ちやニュアンスを、耳からも説明したり、伝わるように工夫する。それが難しいところ。テレビドラマだったら、ありものの曲をテーマソングに使うところを、その人専用に曲が出来ていたり。昔の人は凄いと思う。
     じゃぁ、「京鹿子娘道成寺」で、主役の花子が着替えに引っ込んでる間、つなぎで演奏する曲を、ちょっとやってみましょうか。

     (三味線の生演奏)

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  • 伝の会
  • 京鹿子娘道成寺(「かもねぎ亭」内)




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    9'34" Should I Frank Sinatra Capitol CDP 7 4657 3
    18'50" It's So Nice To Have A Man Around The House Dinah Shone Capitol 7243 4 96730 21
    37'53" It's All Right With Me Joni James DIW DIW-391

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