SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2000年10月7日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ベスト・コニサー」

 元麻布、仙台坂上の辺りは古くからの屋敷町。その閑静な住宅街の奥、細い路地をちょっと入ったところに、イタリアンレストラン "AVANTI" はひっそりと佇んでいる。ちょっとわかりにくい場所にある上に、入り口もこの上なく地味。看板一つ出しているわけでもないので、誰もレストランとは気づかないだろう。
 そのせいか、この店を訪れる客のほとんどが、常連と呼ばれる人たちばかり。しかし、長いこと店をやってきたお陰で、土曜日の夕方ともなると、店は大勢の常連客で賑わっている。
 一口に常連客と言っても、有名人から普通の会社員まで、その立場は様々。しかし彼らに共通点があるとすれば、なにがしか一家言ある事と、人生を大いに楽しんでいる事だろうか。
 このような人々を、AVANTIでは敬意を込めて「コニサー」と呼んでいる。フランス語で「目利き・玄人」という意味の言葉である。
 それでは、今日もその「コニサー」たちの話に聞き耳を立ててみるとしよう。




  • 馬場啓一さん(作家)の

    「マティーニ」の話

     僕はマティーニが好きなので、英米のバーに行く機会は多い。アメリカだったらどの町の、どのホテルの、どのバーが良くて、イギリスだったらどこそこ、みたいな事もチェックしている。
     ところが仕事の都合で、英米以外の国に行くことも当然ある。例えば時計の取材でスイスのヌシャトレーに行った時も、ホテルのバーでマティーニを注文した。でも、やっぱりヨーロッパのマティーニはもう一つ辛いところがあって、何杯もおかわりをしながら、「違う」と言って作り直させた。
     傑作だったのは、ギリシャの「グラン・ブルターニュ」という凄いホテル。英語読みすれば「グレート・ブリテン」となる、チャーチルも泊まったようなホテルに1泊だけ泊まったのだが、その晩は当然、バーへ行った。ところが、比較的イージーな格好でフラッと行ったら、「ジャパニーズが来たから、どうせミズワリだろう」と思われてしまったみたいで、こっちが「マティーニ、ベルモットは何を使って、シェイクはしないで、オリーブは2個…」なんて能書きを垂れても、ちっとも聞いちゃいない。で、「マティーニです」って出されたモノが、全然違った。
     何度も作り直させたんだけど、ぬるかったり、分量が全然違ったり、どうやってもまともなマティーニが出てこない。改めて「ベルモットのブランドはコレで、ジンはコレで、グラスは冷やして…」と教えたら、今度はその通りに作ってきた。それでも何かが違う。う〜ん、と首を捻っていたら、奥から、そのバーのチーフと思しき人が出てきた。
     「一体、何があったんだ」「いや実はこの日本人が、かくかくしかじかで…」みたいな話があった後、「わかった」と言ってそのチーフがサッサッサと作ってくれたマティーニが、美味かったのなんの。
     よく考えたら、イギリス人向けの凄いホテルで、まっとうなマティーニが出来ないはずがない。日本人だからって見くびられたのだろうが、それでも、粘った価値はあったマティーニだった。

    【Hot Link !!】

  • カクテル・レシピ(マティーニなど)(当サイト内)
  • Yahoo! Travel - ホテル:詳細情報(GRANDE BRETAGNE)
  • ホテルについて(GRANDE BRETAGNE)(「BAMBOO INN」内)



  • 河相我聞さん(俳優)の

    「ボウリング」の話

     最近、ボウリングに凝っている。この間も、仕事で京都へ行ったときに、石野陽子さんと賭けボウリングをした。
     賭けたのは、「次の日のマネージャー権」。次の日に、負けた人が勝った人の1日マネージャーをやるという約束で戦った。
     勝負は、自分のマネージャーと組んで、1投ごとで交代のペアマッチ。さすがに、普通の勝負をしたら、大差で勝ってしまうのは分かっていたので、ペアマッチになった。
     ところが、このペアマッチ、かなり上手い人と下手な人の勝負でも、かなり良い勝負になってしまう、ハッキリ言って「運」の勝負。例えば、上手い人がストライクを取っても、次のフレームは順番が逆になるので、もう1人がちゃんと倒さないと、あまり意味がない。逆に、下手な人がたまたまストライクを取ろうモノなら、俄然有利になる。
     それで、石野さんとの勝負もかなり白熱して、何ゲームやったかも覚えてないくらい。結局、僕が負けて、次の日は「石野さん、次の衣装はコレです、イヤリングはコレです」って働いたけど。
     僕のボウリングはちょっと変わっていて、親指だけ穴に入れて、手首に乗せる感じで持つ。その持ち方で、投げる時に思いっきり捻る。そうすると、ガーターぎりぎりの所からグッと内側に切れ込んでくる変化球が投げられる。
     ロンブーの亮クンに教わった投げ方なんだけど、この投げ方だと、レーンの端と端にピンが残ってしまったときでも、ボールがピンを巻き込むように弾き飛ばすので、反対側のピンも取れる可能性が高い。それに、曲がり方がハンパじゃないので、ギャラリー受けも良い。ボウリングを楽しくさせる投法と言えるかも。
     ボウリングは、ストライクを取った時に、みんなでハイタッチをしたり抱き合ったりして、スキンシップも出来るスポーツ。合コンの後なんかには最適。カラオケなんかに行ってる場合じゃない。

    【Hot Link !!】

  • 妻子持ち(河相さんのサイト)
  • ボウリング人生バカ一代(用語集やルール等の基礎知識など)
  • 白木君のボウリング講座(マナーや楽しみ方、上達方法など)



  • 弓気田みずほさん(伊勢丹ボーテコンシェルジュ)の

    「スキン・ケア」の話

     今、スキン・ケアのブームは、「レチノール」が全盛。分かり易く言えば、「ビタミンA」の事。栄養素のビタミンAが、化粧品の有効成分として配合される場合に、レチノールと呼ばれる。
     このレチノール、ズバリ「しわ」に効果がある。でも、「取れる」と言ってはいけないので、「改善される可能性を十分に秘めている」と表現している。
     数年前から、レチノールの「しわ」に関する効果は分かってはいた。だけどレチノールは刺激が強く、しかも化粧品の成分として配合するのは非常に難しいので、現在も各社、いかに安定配合するか、しのぎを削っている状態。
     ちなみに、レチノールの前に流行っていたのが「αヒドロキシ酸」。これは肌の角質層を柔らかくする作用のある成分で、付けるとすぐに肌がツルッとするのが分かる。文字通り、「一皮剥けた」状態になる。
     さらにその前は、美白ブームの中、「コウジ酸」が流行っていた。コウジというのは、味噌、醤油を発酵させる、あの「麹」の事。お酒の仕込みをする杜氏や、味噌を作っている人の手が、とても白くてキレイであることから、研究が始まったと言われている。その結果、麹に含まれているコウジ酸に美白効果があることが分かった。この効果は厚生省でも認可されている。
     日本人は、美白に関して、世界でも指折りに気を使う人種なので、各メーカーは開発に非常に力を入れている。だから毎年、新しい成分や理論が発表され、私達もつい買ってしまう。
     次に来そうなのは「目元のレチノール・ケア」。レチノールは刺激が強いため、これまでは一番使いたい目の回りにレチノールを使えなかった。でも、この冬は、いよいよ目の周りにも使えるレチノール製品が出回りそうな雰囲気。ヒタヒタと押し寄せつつある。

    【Hot Link !!】

  • 伊勢丹
  • コンピューターによる化学構造式の描画と分子軌道の解析
    (レチノールの科学的説明)
  • 一度できたシワもあきらめずに(資生堂HP内)
  • 化粧品用語辞典(「Cosme net」内)



  • 渡邊健一さん(放送作家)の

    「星の王子さまの幸福論」の話

     「星の王子さまの幸福論」という本を書いた。「星の王子さま」は、サン・テグジュペリの晩年の、あまり幸福とは言えない時期に書かれた本で、ある種、祈るような気持ちが込められている。そして、お話の前半は、大人や人間というモノを皮肉な目で見るスタンスで書かれているが、後半になって、幸福論になっている、と僕は感じた。
     20世紀、アラン、バートランド・ラッセル、ヘルマン・ヘッセの3人が、「幸福論」というタイトルの本を書いている。それぞれのエッセンスを取り出して、「星の王子さま」と較べてみると、重要なところは見事なまでに一致している、というのが「星の王子さまの幸福論」の趣旨。
     例えば、「不幸になる原因は、自己没頭の病気である」というラッセルの言葉がある。これを喩えるなら、白雪姫の母親の状態の事。鏡の中に写っている自分の姿が、世界で一番キレイかどうかにしか興味がない。でも、そんな事をしていたって、自分の魅力が増えるワケがない。別のモノに興味を向けて、別のモノで自分を輝かせた方が、最終的には、より輝いた人間になれるはず。これは何も特殊な事じゃなくて、仕事でも恋愛でも、誰もが陥ってしまう落とし穴。
     この事は「星の王子さま」では、街灯夫のエピソードとして描かれている。星の王子さまは、様々な星を旅する。ワンマンな王様の星、実業家の星、地理学者の星。しかし、彼らは皆、自分の事にしか興味がなかった。ところが、街灯夫だけは違った。街灯夫は、街灯をつけて、世の中を明るくしようという事しか考えていない。そこで星の王子さまはこんなセリフを吐く。「僕に滑稽に見えない人といったら、あの人きりだ。それも、あの人が自分の事ではなく、他のことを考えいているからだろう。」
     それから、星の王子さまはこんな事も言っている。「たった一つのモノが、幸せを運んでくれる。」これは、何かを愛するとき、一つモノを愛している人が、幸せだ、という意味。
     例えば、子供時代が多くの人にとって幸せなのは、「人と較べる」という習慣がないから。世界が家庭の中で完結している間は、友達のセーターが自分の物よりも良いことを悔しがることはない。世の中に相対的な幸福と絶対的な幸福があるとすれば、絶対的な幸福だけで生きている。だから、ボロボロになってしまったクマの人形でさえ愛おしく感じる。ところが、大人になると、「人と較べる」生活が始まってしまい、「たった一つのモノを愛する幸福」を忘れてしまう人が多い。だから、「星の王子さま」の「たった一つのモノが、幸せを運んでくれる」というメッセージは、非常に貴重だと思う。

    【Hot Link !!】

  • 星の王子さまクラブ
  • 青いキツネのホームぺージ:星の王子さま総覧



  • 嶌信彦さん(ジャーナリスト)の

    「サミット」の話

     サミットには、何度も取材に出掛けていて、友達から「サミットおたく」と呼ばれるほど、サミットには詳しくなってしまった。
     最初に取材したのは、1979年の東京サミット。それ以来、19回のサミットの取材をしてきたけど、裏側で繰り広げられる人間臭いドラマが本当に面白い。それらをまとめて、文春新書から「首脳外交」という一冊の本にまとめた。
     基本的に、ドラマはフランス・ドイツのヨーロッパ対アメリカ、という対決の構図になっている。ところが唯一、例外があって、それはフランス・ミッテラン大統領とアメリカ・ブッシュ大統領の関係。
     ミッテラン大統領は共産党との連立内閣を作り、共産党から閣僚を迎えた。ところが当時のアメリカは、あのレーガン大統領の時代。ソ連を「悪魔の帝国」と呼ぶレーガンは、「これではサミットで話し合いなど出来ない!」と、当然の如く激怒した。そこでレーガンの部下だったブッシュが、ミッテランのところへ行って話し合いをした結果、「ミッテランは信用するに足る人物である」という報告をした。そのお陰で、サミットは無事に開催されたのだが、その事をミッテランは非常に恩に着た。
     それで、ブッシュが大統領を辞めるにあたり、最後の挨拶にフランスを訪れた時、ミッテランはブッシュの好きな食べ物を調べ上げ、最高級のワインを出して、本当に心のこもった晩餐会を開いた。そして、滅多に記者会見を開かないミッテランが、ブッシュと二人で記者会見に臨み、「彼は私の本当の友人である」と言った。
     ところが後任のクリントン大統領は、1年もヨーロッパへ足を運ばない。すると今度は、クリントンを迎える晩餐会は、大勢の人と一緒の、格付けもないワインを出すような、心のこもらない晩餐会だった。これは「お前はまだ若造で、ヨーロッパのことなんか何も分かっていない」というメッセージだった。
     こんな風に、彼らにとっては、食事やワインも、政治の一つと考えられている。そして日本の首相の中では、中曽根首相がそういう感覚に敏感だった。
     サミット恒例の、ワーキング・ランチの後、中庭で行われる写真撮影。撮影の場所までは数十メートルの移動なので、通訳が付かない。すると、英語の話せる人同士、フランス語の話せる人同士、といった具合に、どうしてもグループが出来てしまう。ところが、日本の首相は英語もフランス語も喋れない人が多いので、どうしても1人で移動することになり、写真の並びも、どうしても1人だけ端の方に追いやられてしまい、日本が孤立しているかのように見えてしまう。
     しかし中曽根首相は、どうしても写真の真ん中に写らなくてはいけないと考えた。そこで、レーガンとサッチャーが話し込んでいるところに強引に割り込み、撮影の行われる中庭まで、なんとか話を保たせた。どうも話の中身は、「2ヶ月前の日米首脳会談で、中曽根首相を迎えるにあたり、アメリカは空港で軍艦マーチを流して歓迎した。これが一部で問題視されたが、あの曲は名曲だから、気にする必要はない」みたいな、かなり他愛もない内容だったみたい。だけど、そのお陰で中曽根首相は、サミットの記念撮影で日本の首相としては初めて、堂々と中央に収まり、日本の存在感を世界に示す出来た。

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  • 嶌信彦のあれも言いたい、これも言いたい(「ブロードキャスター」HP内)




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    8'48" I Can't Give You Anything But Love Doris Day Hind Sight HCD 200
    17'42" Things Are Swingin' Peggy Lee Capitol 7243 8 54543 25
    27'54" The Song Is You Nancy Wilson Capitol CDP 7243 8 28515 23
    37'21" I Want To Be Happy June Christy Capitol CDP 7243 4 95448 26
    45'52" I Could Write A Book Vic Damone Capitol CDP 7243 8 28513 25

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