SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2000年7月1日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト


「ベスト・コニサー」

 元麻布は仙台坂上の辺りは古くからの屋敷町。その閑静な住宅街の奥、細い路地をちょっと入ったところに、イタリアンレストラン "AVANTI" はひっそりと佇んでいる。ちょっとわかりにくい場所にある上に、入り口もこの上なく地味。看板一つ出しているわけでもないので、誰もレストランとは気づかないだろう。
 そのせいか、この店を訪れる客のほとんどが、常連と呼ばれる人たちばかり。しかし、長いこと店をやってきたお陰で、土曜日の夕方ともなると、店は大勢の常連客で賑わっている。
 一口に常連客と言っても、有名人から普通の会社員まで、その立場は様々。しかし彼らに共通点があるとすれば、なにがしか一家言ある事と、人生を大いに楽しんでいる事だろうか。
 このような人々を、AVANTIでは敬意を込めて「コニサー」と呼んでいる。フランス語で「目利き・玄人」という意味の言葉だそうだ。(英語なら "Connoisseur" である。)
 それでは、今日もその「コニサー」たちの話に聞き耳を立ててみるとしよう。



  • 渡部潤一さん(国立天文台)の

    「梅雨の星空」の話

     雨によって空気中の塵や埃が洗い流されてしまうので、梅雨の間の晴れ間というのは、意外と星を見るのに適している。
     そんな時に僕がいつもオススメするのは、梅雨の晴れ間に見る「天の川」。夏の天の川というのは、夕方の空に見えるもの。その天の川が、梅雨の時期だと深夜、0時を過ぎた頃に見える。すると、もともと梅雨の晴れ間で空気が綺麗な上に、深夜なので更に大気が綺麗になっているし、大気中の水蒸気量も少なく、なによりも人工灯火が少ない。それで、ビックリするぐらい綺麗な天の川が見える。
     双眼鏡を手にとって、頭の真上の白鳥座から天の川をゆっくり下へ眺めていくと、ダイヤモンドの欠片のような星の集まりが目に飛び込んできたりして、これは本当に美しい。僕らはこれを「天の川下り」と呼んで、人に勧めている。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」も、出発駅が「北十字」こと白鳥座で、そこから「鷲の停車場」や「サソリの灯」など、実際に天の川近くの星座を辿っているので、天の川下りをしながら、あの話を思い出すのもまた楽しい。
     天の川を見ようと思うと、意外と月が邪魔になることもある。だけど、月は月でまた面白い。夏の月というのは低いところに見える。すると夏の月の光は、大気を斜めに突っ切って地上に届くので、赤味が差して見える。日本ではオレンジ色くらいにしかならないが、もっと緯度の高い地域、例えばイギリス辺りだと、月が真っ赤に染まる。だからこの時期の月を、英語では「Strawberry Moon」と呼ぶ。

    【Hot Link !!】

  • 渡部潤一のホームページ(渡部さんの個人サイト)
  • 国立天文台 天文情報公開センター 広報普及室(渡部さんの勤め先)
  • 2000年7月16日〜17日にかけての皆既月食(国立天文台HP内)



  • 篠山紀信さん(写真家)の

    「萬野美術館」の話

     私は仕事でいろいろ写真を撮るけど、例えばバレエが好きだからとか、例えば女の子が好きだからとか、そういう理由で写真を撮ってるワケじゃない。結局のトコロ、一番の理由は「頼まれたから」というコトに尽きる。そんな訳で、人に頼まれて「古美術品」の写真を撮った。
     最初は断るつもりだったんだけど、敵もさるもの。「古美術っていうのは、国宝になったら移動させるだけで国の許可がいる。それを、どこへ持っていっても、どう扱っても良いから写真を撮ってくれないか」と言われて、グラッときてしまった。それで、時価数千万〜数億円、実際には値段の付けようがないという古美術品の写真を撮ることになった。
     依頼主は、大阪・萬野美術館のオーナー、萬野さん。美術館の10周年記念に、写真集を作りたいんだとか。もちろん美術館には前から立派な図録はあって、ちゃんとした写真は撮ってある。でもそれじゃ、ガラスケースの向こうに鎮座ましましている普段の展示と同じで、隔靴掻痒(かっかそうよう)感がどうしてもぬぐえない。その深窓の令嬢を連れ出して、好きにして良いと言うんだから堪らなかった。
     撮影現場は、萬野さん所有の贅を凝らした山荘。その山荘の芝生に焼き物をゴロンと転がしたり、池にお盆を浮かべたり、重要文化財を思う存分に扱ってきた。そうしたら、一緒についてきた学芸員や古美術商の慌てたこと慌てたこと。その撮影の様子をビデオに撮って、メイキングを美術館で流したら、それを見たお客さんまで真っ青になってた。
     でも、写真集が完成して、ついでに写真展も開こうという話になり、写真と実物を並べてみたら、ガラスケース越しにみる実物よりも、写真の方が断然良い。美術館の関係者も「すごく面白い」と誉めてくれたんだけど、「でも二度とやらないで下さい」と言われてしまった。

    【Hot Link !!】

  • インターネット篠山紀信
  • 萬野美術館



  • 村越正海さん(フィッシングライター)の

    「オーストラリア釣り紀行」の話

     オーストラリアのノーザンテリトリー州へ行って来た。カカデュー国立公園という、四国と同じ面積の広大な湿地帯がある場所。
     そういう場所へ行ったら、釣りがしたくてどうしようもなくなる。川岸でマイクロバスを「停めてくれ!」と頼んだら、運転手が「ダメだ」と相手にしてくれない。「何でだ!」と聞いたら、「この辺は、ワニに喰われるヤツが多いんだ」だって。川の名前も「サウス・アリゲーター・リバー」というらしく、さすがにそこでは諦めた。
     そこからホテルへ帰る途中、細い水路があった。水深は浅くて、幅もせいぜい7〜8m。そこをひょいと覗いたら、憧れのバラマンディの20〜30cmのヤツが、群をなして泳いでいた。そこで釣りだしたら、もう釣れたの何の。1時間くらい釣りまくったら、さすがに魚もスレてきたのか、反応が悪くなった。そこですかさず、日本から持ち込んだソフトルアーを持ち出して、さらに1時間ほど釣りまくった。
     すると、そこへ地元の男の子の兄弟がやってきた。二人は釣り竿に太い糸をつけ、やたらとデカいルアーで釣り始めた。ところがそこは、僕たちが2時間に渡って攻め抜いたお陰で、釣れなくなってしまったポイント。子供達のルアーに、魚の掛かる雰囲気が全くなかった。
     これはもしかしたら、子供達の遊び場を、日本からきた大人たちが荒らしてしまったのかもしれない。そう申し訳なく思った僕は、日本から持ってきたルアーを5〜6個差し出して、つたない英語で「よかったら、これを使ってみないか」と言った。
     そうしたら、その兄弟のお兄さん風の子に、本当に丁寧な英語で「ありがとうございます。でも、僕たちは大きいの狙っているから、いりません」と言われてしまった。
     「そ、そうなんだ。大きいのはいるの?」なんて聞き返したりしたんだけど、これは辛かった。なんでも、橋の真下には10kgを越えるバラマンディがいるそうで、そこらにいる20〜30cmのヤツを釣って、それを生き餌にして10kgのヤツを釣ろうとしているんだとか。
     オーストラリアに出発する前は、「10kgのバラマンディを釣ろう!」なんて盛り上がっていたのに、目の前に30cmのヤツが出てきたら、それだけで興奮してしまうのは釣り人の悲しい性か。釣り人よ、大志を抱け。

    【Hot Link !!】

  • シーバス・スペシャル by 村越正海(ダイワ精工HP内)
  • 国内最詳バラマンディ・フィッシング情報ページ
    (「擬似餌の玉手箱」内)



  • 前田亮介さんと芝崎信明さん(ブルータス)の

    「カフェ」の話

     ブルータスで「カフェ」の特集をした。
     カフェは、お酒を飲みたい人も飲みたくない人も、一緒にいける便利な場所。食事をしても良いし、コーヒーだけを飲んでいても良い。それぞれが勝手に好きなことができるところが、現代的なコミュニケーションに向いていると思う。
     そういう理屈はともかく、ココ2〜3年で、カフェが都内で異常に増えていることも事実。その始まりは、デプレみたいな、フレンチ・スタイルのオープンカフェが6〜7年前に流行したことだったと思う。それから時間が経って、やっと東京らしいカフェが生まれるまで成熟したということなのではないだろうか。
     カフェと喫茶店の違いは、なんでもそこそこイケること。食事も結構イケるし、お酒もかなり揃っていて、カクテルなんかもちゃんと作ってくれる。
     カフェの中でも、食事が美味しいところと言えば、吉祥寺の「フロア」。ココは青山の「ロジャック」というレストランのシェフがご飯を作っていて、エスニックと和風の混じった創作料理が美味しい。特にカレーは絶品。
     カフェは、「女の子を口説く」みたいな目的を持って行くところじゃない。時間が空いたから、とか、前を通り掛かったから、みたいに、理由もなく寄るところ。予約なんてとんでもない。並ぶなんてもってのほか。カフェに行くときは、角で空いているかどうかをチェックしてから、さり気なさを装って店に入る。

    【Hot Link !!】

  • MAGAZINE HOUSE magnetcafe
  • ウメの東京食べ歩き日記・カフェ(「ウメのホームページ」内)



  • 二見眞治さん(エニックス)の

    「ドラクエ発売延期の言い訳(4回目)」

     1年半ほど前、この店に来て、夏の暑い時期に出るって言ってましたが、いや〜参った、参った。それ以来、忙しくて、この店にもなかなか来れなくて…(お〜い、ちょっと待て!<常連)
     ま、それで、色々ありまして、結局、8月26日に出ることになりました。いや、これでこの店の皆さんとのお約束は守れたかな、と。(どこがだ!<常連)
     え〜っと、本当は1年半前に夏って言って、それが暮れになり、年をまたいで2月には、と言って、ついこの間は5月中って言ったんでしたっけ?(どうせ信じちゃいなかったけどね!<常連)はい、5月って言った時も、今年中、ついでに言っちゃえば、今世紀中とも言ってませんでしたから…
     エニックスもさすがに学習したみたいで、ギリギリまでCMの枠とか売場の棚とか、押さえに行かなかったみたい。だからそう言った方面の損害はなかったんだけど、そんな事を学習してしまうのもいかがなものかと…
     今度の8月26日は大丈夫。絶対です…だと思います。え?信用ならない?…そりゃそうか。

    【Hot Link !!】

  • 1998年12月26日の放送内容(二見さん、最初の宣言)
  • 1999年12月4日の放送内容(2回目)
  • 2000年2月19日の放送内容(3回目)



  • 江夏豊さん(野球解説者)と金子達仁さん(スポーツライター)の

    「野球」の話

     今のプロ野球で、ピッチングというものが判っているピッチャーと言えば、今年千葉ロッテから横浜に移籍した小宮山投手。見ていて、何を意図として投げているのか、ブラウン管を通してこちらに伝わってくる。また、その意図を実現するだけのコントロールも兼ね備えている。
     最近、それが出来るようになってきたなと感じるのが、ダイエーから巨人に行った工藤投手。去年の日本シリーズ第1戦、中日を相手に投げたあの試合は、彼の野球人生において大きなステップになったのではないだろうか。あの時の工藤投手のピッチングは、本格派投手の見本とも言うべきピッチングだった。しかし、それが逆に、後々の苦しさにも繋がるのだが。なぜなら、一度理想を実現してしまうと、常にそのイメージを追い求めてしまうから。
     ピッチャーはえてして理想主義者で、マイナス思考の人間が多い。打たれたくない、と思うから、打たれた時のことばかり覚えている。僕は今でも、布団の中でフト野球のことを思い出す時は、打たれたシーンばかりが頭に浮かぶ。カーンと打たれて後ろを振り返ったところで、ハッと我に返る。脂汗までは流さないが、それに近いことはよくある。
     業の深い仕事、とも言えなくはないが、それだけにやりがいもあり、素晴らしい、楽しい仕事だいうこと。だからこそ、近々やるモツルの試合も、僕はとても楽しみにしている。プロ野球も、アマチュア野球も、高校野球も、草野球も、少年野球も、全部その根本はピッチャーが投げてバッターが打つ「野球」というゲーム。僕は野球が好きだから、心から野球を楽しんでいる草野球はプロ野球よりも好きかもしれない。
     そして、その「野球」を仕事にさせてもらっている自分は、本当に幸せ者だと思う。

    【Hot Link !!】

  • モルツ サントリー ドリームマッチ2000 in 東京ドーム
  • 江夏豊(「Y.A.H.P Corner」内)
  • Number Web




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    8'34" Swingin' On The Moon Mel Torme verve 314 511 085-2
    17'29" Too Marvelous For Words Rosemary Clooney BMGビクター R25J-1038
    28'03" Gone For The Boy Jame Christy Capitol CDP 954498
    34'05" Bois Ton Cafe L'affair Louis Trio Polydor DCI 3007
    45'14" Quem Diz Sabe Lisa Ono BMG BVCR-701

  •