SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2000年5月27日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト


「ベスト・コニサー」

 元麻布は仙台坂上の辺りは古くからの屋敷町。その閑静な住宅街の奥、細い路地をちょっと入ったところに、イタリアンレストラン "AVANTI" はひっそりと佇んでいる。ちょっとわかりにくい場所にある上に、入り口もこの上なく地味。看板一つ出しているわけでもないので、誰もレストランとは気づかないだろう。
 そのせいか、この店を訪れる客のほとんどが、常連と呼ばれる人たちばかり。しかし、長いこと店をやってきたお陰で、土曜日の夕方ともなると、店は大勢の常連客で賑わっている。
 一口に常連客と言っても、有名人から普通の会社員まで、その立場は様々。しかし彼らに共通点があるとすれば、なにがしか一家言ある事と、人生を大いに楽しんでいる事だろうか。
 このような人々を、AVANTIでは敬意を込めて「コニサー」と呼んでいる。フランス語で「目利き・玄人」という意味の言葉だそうだ。(英語なら "Connoisseur" である。)
 それでは、今日もその「コニサー」たちの話に聞き耳を立ててみるとしよう。




  • 河合薫さん(気象予報士)の

    「スチュワーデス」の話

     気象予報士になる前は、全日空で国際線のスチュワーデスをしていた。
     『スチュワーデス物語』で知ってる人も多いと思うけど、スチュワーデスになると、最初の3ヶ月間は研修を受ける。そのカリキュラムに、「お客様との会話」という研修があった。「今、高度はどれくらい?」とか「どこの上を飛んでるの?」と尋ねるお客様が多いので、「高度1万メートルでございます」とか「カナダの上空でございます」と答えるマニュアルができている。
     「カナダの上空」という答えは、当時の全日空ではアメリカ路線しかなかったから。スチュワーデスの仕事は厳しい肉体労働なので、どこを飛んでいるかなんて気にする暇がない。だから「カナダの上空」と答えておけば、とりあえず当たっていることが多いというマニュアル。しばらくしてヨーロッパ路線ができたら、今度は「カナダ」を「ロシア」に変えて使った。
     「高度1万メートル」というのは、一応の平均値。雲ができる対流圏が、だいたい1万メートルくらいまでなので、その少し上を飛んでいることが多いという意味。でも、対流圏の高さは季節や場所によって違うので、実際に高度1万メートルで飛んでいるとは限らない。
     その事がよく解るのが、オーストラリア路線で赤道を越える時。その近辺では、必ず飛行機が揺れる。スチュワーデス時代は「なんで赤道上空って揺れるんだろう、線でも引いてるんじゃないの?」なんてバカなことを言ってたけど、これは暖かい地域では対流圏が1万5千メートルくらいまで上昇するから。パイロットも対流圏に入らないように、一生懸命高度を上げるんだけど、それが追い付かなくて、飛行機が揺れてしまう。ま、こんな知識は気象予報士になってから知った事だけど。
     スチュワーデスの喜ぶ質問と言えば、日本発のアメリカ路線なら、「オーロラが見えたら教えて下さい」と言っておくのが良い。オーロラが見えるのは秋から冬、しかも、この路線の日本発の便だけ。スチュワーデスでもなかなか見る機会がないので、見えたときは誰かに教えたくてしょうがない。ところが、その時間は大抵、お客様はお休みになられている。だから、あらかじめお客様からの一言があれば、こっそりそのお客様だけ起こして、一緒に感動を分かち合える。

    【Hot Link !!】

  • 続・気分はいつも雲の上(河合さんのサイト)
  • Rise's HomePage(現役国際線スチュワーデスのサイト)
  • くれない寮(『スチュワーデス物語』のファンサイト)



  • 軽部真一さん(フジテレビアナウンサー)の

    「オペラ」の話

     映画『プリティ・ウーマン』の一幕。リチャード・ギアが「オペラは、最初に観たときの第一印象で、好きになるか嫌いになるかが決まる」と言って、ジュリア・ロバーツに『トラヴィアータ(椿姫)』を見せるけど、僕だったら違う。『トラヴィアータ』は、ヴェルディが作ったイタリアオペラの名作中の名作だけど、僕が選ぶとしたら、プッチーニのオペラだろう。
     プッチーニのオペラは、甘く、切なく、美しく、女の人の一番好きな世界が凝縮されたメロドラマ。もちろんヴェルディのオペラもメロドラマなんだけど、いかんせんプッチーニより時代が古くて、甘さが足りない。プッチーニのオペラでも、『トスカ』じゃちょっとエグイから、『ラ・ボエーム』が良い。
     『ラ・ボエーム』は、プッチーニの書いた青春のオペラ。パリの屋根裏部屋に住む4人の若者たち、詩人、画家、哲学者、音楽家、お金のない4人が、一緒に生活している。そこに、ミミという女性が現れ、ロドルフォという詩人と恋に落ちる。しかしこの恋が、悲しい恋だった。ミミは体を病み、ロドルフォにはお金がない。二人は一度離ればなれになり、そして再会したその時は、彼女の命が尽きる時だった。最後は愛するロドルフォに抱かれながら、ミミは亡くなってしまう。
     似ていると言えば、北川悦吏子の『ビューティフル・ライフ』にも似ている、まさに恋愛ドラマの王道。観た女の子は必ず涙する。そういった意味では『トラビアータ』も同じ王道の物語なので、リチャード・ギアの選択は、間違ってるとは言えない。
     『プリティ・ウーマン』に限らず、オペラと映画は結びつきが強く、特にマフィア物にオペラは良く合う。『アンタッチャブル』、『ゴッドファーザー・パート2』、いずれもオペラが使われている。
     確か『アンタッチャブル』では、『パリアッチ(道化師)』というオペラが使われていた。このオペラは、ベルズム・オペラと呼ばれる現実的なオペラで、庶民が登場人物となり、不倫、嫉妬、殺害といったテーマが盛り込まれる。プッチーニのオペラを「月9」としたら、さしずめこちらは「土曜ワイド」と言ったところ。その「滅びの美学」が、マフィア映画によく似合う。
     『アンタッチャブル』の中では、『パリアッチ』が上演されている最中に、ショーン・コネリーが殺される、という使われ方をしていた。血塗れで這うショーン・コネリーと、『パリアッチ』を観るアル・カポネことロバート・デ・ニーロ。デ・ニーロの元に手下がやってきて、ショーン・コネリーが死んだという報告を耳打ちすると、デ・ニーロはニヤッと笑う。そして、その後ろでは、『パリアッチ』のクライマックス、主人公が妻を刺し殺すというシーンが演じられていた。
     ベリズム・オペラも、話が意外と単純で、ドラマチックに作られていて、ワクワクドキドキするので、女性と観に行くのには向いているかもしれない。

    【Hot Link !!】

  • Bravo! Brava! Bravi! 〜オペラをどうぞ〜
  • オペラに興味のない人のためのオペラの部屋
  • ラ・ボエーム(「TVZ OPERA」)
  • 椿姫(「TVZ OPERA」)
  • 「パリアッチ(道化師)」全2幕(「ちゃこぽんハウス」)



  • 馬場啓一さん(エッセイスト)の

    「水割りとカラスミ」の話

     水割りというのは、ちゃんとしたバーテンダーに作ってもらえば、非常においしいお酒。日本的な飲み方だとあまりに言われ過ぎていたり、お姉さんが適当に作った水割りを飲む機会が多すぎて、水割りという飲み方は過小評価されている。本当に良い水と、おいしい氷。この2つをちゃんと使った水割りを出され、「水割りって、やっぱり良いなぁ」と思うことが、2ヶ月に1回くらいある。
     昔のCMであった、ボール状の氷。あれなんかも、氷を融けにくくするための工夫だと聞いたことがある。ボールは表面積が一番小さいので、なかなか融けなくて、よく冷やしてくれる。ウイスキーを冷やすのは日本人とアメリカ人だけだ、という説もあるけど、やっぱり冷たいお酒の方が、喉がおいしいと感じる。程良く冷えて、水としっくり馴染んだウイスキーのおいしさっていうのは、僕はあると思う。
     そういう水割りに合うつまみと言えば、カラスミ。カラスミは良い。マイ・ボトルじゃないけど、「じゃあ馬場さん、今日は例のヤツ出しましょうか」とカラスミを出してくれるバーがあって、これは嬉しい。あんまり保ちが良くなくて、しかも一人で一瓶食べられる量じゃないから、そのバーに行く前に、あらかじめ「今日は水割りだからね」と連絡しておいたり。そうすると、お店の方でも「カラスミあります」って壁に書くので、せっかくのカラスミが無駄にならない。ほんのちょっとでしょっぱくて、かつ味がある。これは良い。
     イタリアにもカラスミのパスタがあるように、海の物が好きな国の人は、カラスミを上手に食べる。そしてカラスミは、どこかでブルーチーズのようなニュアンスがあって、ちょっと癖がある。そのちょっと癖のあるところが、ウイスキーには合うんだと思う。
     しょっぱくて、たくさん食べられないのも良い。たくさん食べちゃうと、お酒はおいしくない。そういう意味でも、カラスミはオススメ。

    【Hot Link !!】

  • カラスミの天日干しー伊東・川奈(「伊豆新聞 観光ニュース」)
  • 鳥魚子(カラスミ)(「Yakibuta中華三昧Web」)
  • カラスミの冷製スパゲッティ(「男は黙ってパスタを食う」)
  • カラスミうどん(「かとっぽ」)



  • エド山口さん(タレント)の

    「バンド言葉」の話

     昔のバンドの人は、変な言葉を使っていた。「君」「お前」を「ユー」と言ったり、お金を数えるときは「ゲー千」と言ったり。
     俺はずっとアマチュアでやってきて、バンドマン用語を知らなかったので、初めて横浜で仕事をした時は面食らった。
      「ユーさぁ、ネカ決めないとさぁ」
    って言われてワケ分かんなくて。
      「いや、それはもう、バンマスにお任せしますよ」
      「いや、ネカっていうのは、最初に決めておかないと、
       仕事になんないからさぁ」
      「世間並み……で良いんじゃないですか?」
    いい加減しびれを切らしたバンマスが、
      「金だよ、金!」
    それでやっと分かった。
     それから、こんな事もあった。
      「おい、バーソ行こう」(ソバだな)
      「あのさ、ザラハイ」(灰皿ね)
      「バコタ」(タバコか)
      「チーマ」(マッチだな)
      「イーヒ」(火ね)
      「ユーさぁ、カズオどうしたかな?」(あれ?なんでバンマスが
       田中カズオ(友達)のこと知ってるんだろう?)
      「カズオの事、ご存知なんですか?」
      「バカ、おかずはまだかって言ってるんだよ」
     尾藤イサオさんに至っては、俺の名前まで逆に言う。
      「ドーエさぁ、ワンタイにスーテニにチャンカーと行ってさぁ、
       ナイタマラだよ」
      (エドさぁ、台湾にテニスに母ちゃんと行ったら、行ってさぁ、
       たまんないよ)
      「見ろ、ワーカのレーナガにナンオがリトヒでズンタッタだよ」
      (見ろ、川の流れに女が一人で佇んでるよ)
     でも、普通のヤツには通じないだろうと思って油断していると、痛い目に遭う。ある時、バンド仲間とタクシーに乗って、こんな事を言っていた。
      「なんだよ、こんチャンウン、テンウンがターヘだ。
       カンジがイーナなんだよ、バカ野郎。
       何やってんだよ、ロイトだねぇ。」
      (なんだよ、この運ちゃん、運転が下手だ。
       時間が無いんだよ、バカ野郎。
       何やってんだよ、とろいねぇ。)
    そしたら、目的地に着いて振り返った運転手が一言。
      「イー千ゲー百です。」(3千5百円です。)
    大変失礼いたしました!と謝りながら、タクシーを降りた。タクシーの運転手は、意外と侮れない。

    【Hot Link !!】

  • コンパニオン業界用語
  • ゲーム業界用語事典
  • American Slanguage in the Field of Wind Band
    (吹奏楽の業界用語)
  • 業界裏用語辞典(証券業界用語)
  • 『知っておきたい業界用語』(旅行業界用語)



  • 香山リカさん(精神科医)の

    「精神科医の恋」の話

     精神療法やカウンセリングは、一対一の仕事。そのため、擬似恋愛的な感情を持つこともある。
     最初は、主治医である私の事が、患者さんには素晴らしい人に見えてしまう。これは精神分析理論において「理想化」と呼ばれる現象で、過去に体験したあらゆる良い感情が、すべて溢れ出てきた結果。だから私を見ているわけじゃなくて、私を通して母親を見ていたり、小学校の先生を見ていたりする。
     ちょっとしたことで、逆のケースも起こる。今まで経験したすべての悪い感情が吹き出して、もう2度と私の顔を見たくない、と思われることもある。
     そしてその感情がこっちに乗り移ってしまい、「この患者さんは好き」とか「この患者は嫌だなぁ」と思ってしまうこともある。これを「感情転移」と言う。そこには非常に複雑な人間関係が生じてしまうので、私たち精神科医は、感情転移を自己分析して客観的な立場をとれるようなトレーニングをする。
     でも、いくらトレーニングを積んで、感情の自己分析が出来るようになっても、コントロールは出来ない。精神科医同士で結婚している人も多いんだけど、その夫婦喧嘩で夫が「君、それは僕に腹を立てているんじゃなくて、僕の中に見ている…」って説明したら、余計に相手を怒らせただけだったとか。
     「精神科医だったら人格者なんでしょう」とか「何でも相手の気持ちが分かるんだったら、恋愛も絶対にうまく行くんでしょう」とか言われるけど、そんなことは全然ない。ただ、精神科医とは恋愛をしない方が良いかも。

    【Hot Link !!】

  • ストレス(香山さん編集によるメールマガジンなど)
  • Y-TAKA ホームページ(認知行動療法や精神科薬物療法について)




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    7'37" Let's Fly Away Doris Day Columbia 47759 3 2
    21'08" Someday Dean Martin Capitol 7243 8 54546 2 2
    31'49" Moments Like This Peggy Lee Capitol CDP 7243 8 29396 27
    38'18" you Hit The Spot Ella Fitzgerald verve 314517 535-2
    45'08" Oh What A Nite For Love Dorothy Collins CORAL MVCJ-19230

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