SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2000年2月12日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト


「映画館」

 今や全世界を席巻し、勢いは止まるところを知らないアメリカ映画だが、過去にはその将来が危ぶまれた時期が何度かあった。例えば1960年代後半は、一部の人間にしか理解できない前衛的な映画が数多く作られ、一般の観客が映画館から遠のいてしまったのである。
 その後、観客を映画館へ引き戻したのはもちろん魅力的な映画だったのだが、その陰でシネマ・コンプレックス(複合型映画館)が普及したことも、アメリカ映画の復活に少なからぬ影響を与えたと言われている。
 そして今年の4月、いよいよ日本でも都内初のシネコンがオープンし、日本の映画館も本格的なシネコンの時代を迎える。斜陽と言われるようになって久しい日本映画産業に、シネコンは福音となるだろうか。その最前線にいる人たちの話に、聞き耳を立ててみよう。





  • 君塚良一さん(脚本家)の

    「文芸座」の話

     高校生の時、友達に誘われて銀座の並木座に行ったのが、僕にとって最初の映画だった。しかし不思議なことに、何を見たのか全く憶えていない。おそらく、つまらない映画だったのだろう。でもその次に、テアトル新宿で見たのが、サム・ペキンバー監督の『わらのイヌ』だった。これには大変なショックを受けた。エンターテイメントの中に何かを考えさせるものがあり、若い僕を興奮させるエロティシズムがあった。そこから僕は、映画にのめり込んでいった。
     そして大学生になる頃には、年間500本もの映画を見るようになっていた。ビデオなど無い時代だったので、毎日2本立てや3本立ての映画館へ通った。お金が無かったので、10円でも安い場所を探して、世田谷からわざわざ北千住まで出掛けたりもした。
     一番足繁く通ったのは池袋の文芸座。家から新宿・池袋を経由して大学へ行こうとすると、新宿は何とか乗り越えても、池袋でつい寄り道してしまう。しかも毎週、映画が掛け替わるものだから、なかなか学校へ辿り着けなかった。  文芸座と言えば、鈴木清順監督を見直そうという運動が盛り上がり、オールナイトで5本立ての上映会をやっていたのを思い出す。いいシーンに観客が「ヨシ!」と掛け声を掛けたりして、今考えるとかなり変だったかも。ちなみに僕は鈴木清順監督の大ファンだったで、『けんかえれじい』という映画などは何十回も見た。あまりに見過ぎていたので、オープニングのフイルムの傷を見ただけで、流通量の少ないフイルムの内、そのフイルムがどのフイルムか判別できるほどだった。

    【Hot Link !!】

  • わらの犬 / STRAW DOGS(「monochrome memories」(個人サイト)内)
  • 清順非公認家頁(鈴木清順監督のファンサイト)
  • 映画監督・考 NO.6 鈴木清順の映画(「マイ・シネマ館」(個人サイト)内)



  • 逢坂剛さん(作家)の

    「昔の映画館」の話

     学生の頃は、映画館に通ったなんて程度ではなく、まさに居続け状態だった。中学から高校に掛けては、学校と映画館を往復していたといっても過言ではない。3本立ての映画館をハシゴしてすらあった。
     当時は映画くらいしか娯楽がなかったので、映画館はいつも満員だった。でも通い慣れてくると、席を確保するための工夫を覚えてしまったので、立ち見で映画を見た記憶がない。ちなみにその工夫とは、前の上映が終わると同時に最前列から空いた席を探すこと。後ろの入り口から入ってくる客は帰る客とぶつかって、なかなか前まで来られないので、確実に席を確保できた。とまあ、こんな具合に、昔は映画漬けの毎日だった。
     あの頃は映画館の数も多く、昭和35年のピーク時には全国で約7500館もの映画館があったらしい。それが1995年には約1700館まで落ち込んだというから、本当に少なくなってしまった。
     昭和30年代、東京の中でもっとも映画館の多かったのはもちろん新宿区。新宿区だけで50館もあったらしい。その次に多かったのは、意外なことに大田区。ほぼ新宿に匹敵する映画館数だったとか。
     こういった資料は、古本屋で買った『全国映画館名簿』(昭和33年版)で調べたのだが、この本、映画館の詳細が定員から支配人の名前、映写技師の名前、映写機の機種まで載っていて、なかなかに面白い。この本によると、浅草国際劇場は当時で定員3800人。ずいぶんデカイ劇場もあったのだな、と感心することもある。



    『全国映画館名簿』




  • 金原由佳さんと若林ゆりさん(映画ライター)の

    「アメリカの映画館」の話

     話題作が封切られる時のL.A.は、大変なお祭り騒ぎになる。それくらいみんなお祭り好きだし、映画が好き。
     L.A.の中でも特に面白いのが、UCLAなどに近い方の、ウエストウッドの映画館。映画にうるさい人が多いので、テレビクルーがインタビューしようとカメラを構えると、ひとこと批評を言いたいという人が列を作る。ボロクソにけなす子供から、細かいところを誉めるおじいさんまで、街中が映画評論家だらけで面白い。
     向こうの映画館は、日本と較べて、まず料金が安い。そして音が良い。『プライベートライアン』などは、本当に戦場の真ん中に放り出された感じがするくらい臨場感があった。
     そして、誰もが驚くけど、ポップコーンがデカイ。しかもバターを掛けてくれるんだけど、すごい量のバターを掛けてくれる、というか油断していると掛けられてしまう。ポップコーンを入れる箱の柄も、映画館にはよっていろいろ凝っている所もあるので、気に入ったものは持ち帰ってコレクションしたりしている。

    【Hot Link !!】

  • アメリカ映画館事情(「おかみょうのHP」(個人サイト)内)



  • 大沢知之さん(ソニーアーバンエンタテインメント代表取締役)

    「シネマ・コンプレックス」の話

     四月、お台場のフジテレビの前に、13のスクリーンを持つ巨大な映画館、シネマコンプレックス「シネマ・メディアージュ」がオープンする。
     シネマコンプレックス特徴の一つは、映写室が一つにまとめられていること。映画館を一つの事業として考えた場合、一人の映写技師がすべてを賄えるようにした方がはるかに効率的なので、この形態がシネコンの基本になっている。具体的には、渡り廊下のようにひと繋がりになった映写室がグルッと一周していて、そこを映写技師が周りながら映写する。
     一本のフィルムを複数のスクリーンに映写するシステムも備えている。これは意外と単純な技術で、フィルムをそのまま壁伝いに流しているだけ。後は各スクリーンのプロジェクションシステムの前を通った時に映る、という仕組み。
     今回の映画館でちょっと工夫したのが、世界最大級のカップルシートを作ったこと。その幅は実に160cmと、詰めれば3人が座れるサイズ。気持ちよく映画を見るには、余裕のあるシートに座ることが一番だろうと考えて、このシートを作った。クッションも置いて、グラスを置く場所も作り、とにかく快適に映画が見られるよう工夫した。完全予約制なのだが、予約システムはこれから。もうしばらくお待ちいただきたい。

    【Hot Link !!】

  • ソニー、お台場にシネコン・食事しながら映画も(日経新聞の記事)
  • 映画館へ行こう(シネコン情報など)
  • 日本全国シネコン巡り



  • 金勝浩一さん(シネマ下北沢)の

    「ミニ・シアター」の話

     下北沢に「すずなり横町」という場所がある。そこに昔、仮設の映画館があったのだが今は空き家になっているという話を聞いて、その建物を見に行った。すると映画館に必要な天井の高さもあったし、ミニ・シアターにちょうど良い大きさでもあったので、映画館を開くことにした。
     本来、映画館というのは映画で勝負すべきなのだが、ここでは映画館そのものも楽しんでもらおうと、内装はかなり凝った。ロビーに入って扉一つとっても、取っ手をオリジナルで作ったり、普通、映画館と言えば鉄の扉というのが相場のところを、わざわざ木製の扉にして、さらに左右で大きさの違う親子扉にしたりもした。
     映写機は新品を買うと何千万もするので、閉鎖する映画館から譲ってもらおうと全国を回り、気仙沼の映画館の方から譲っていただいた。映写機というのは、新しいか古いかということよりも、毎日休まず動かしているかどうかの方が重要らしく、一昨年閉めてしまった銀座の並木座に至っては、日本に現存する映写機の中でも最も古いであろうと思われる映写機が、ついに最後まで現役で動いていた。
     ウチの映画館では、奥の方にカウンターバーがあって、一通りアルコール類やおつまみも出しているのだが、そこで比較的好評なのが、スペシャルメニューの「おにぎり」。これなら上映中も、音を気にせず食べることができる。

    【Hot Link !!】

  • シネマ下北沢
  • ミニシアターパラダイス(ミニシアターに関する情報満載)
  • ミニシアターフリーク(個人サイト・ミニシアターの基礎講座や掲示板など)




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    9'46" If I Had A Talking Picture Of You Johnny Mercer &Martin Tilton Capitol CDP7243 8 29385 2
    19'27" Some Sunny Day Bing Crosby BMG BVCJ-2029
    24'28" Wild Is Love Shirley Horn Mercury 843 454-2
    36'00" Love Scene Tony Bennett Columbia CGK40424
    46'46" As Long As I Live Lurlean Hunter Atlantec AMCY-1081

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