SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
1999年10月9日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト


「コーチ」

 個人競技のトップアスリート達は、しばしば「芸術品」と呼ばれることがある。 100mを10秒に満たない時間で駆け抜けるスプリンター。200km/hのサーブをオンラインに叩き込むテニスプレーヤー。人間の反射速度の限界に近いスピードでパンチをかわした上にカウンターを浴びせるボクサー。彼らは、その存在そのものが一級の芸術品を思い起こさせる。
 そして、彼らが「芸術品」であるなら、それを創り上げた「芸術家」と呼ばれるべき人たちが、コーチである。選手と巡り会い、鍛え、技術を教え込み、時には叱り、時には励まし、そうやってただの粘土だった素材は、いつしか芸術品へと象られてゆく。だから選手の勝ち得た栄冠は、本来コーチにも等しく与えられるべきモノなのである。
 しかし、多くのコーチは栄光の陰にひっそりと身を隠し、時にスポットライトを浴びるようなことがあっても、「頑張ったのは選手」と言ってかわしてしまう。あたかも、そんな慎ましさが、芸術家の条件であるかのように。
 シャイな芸術家達の本音を聞くのは、なかなか難しい。彼らに気付かれないように、コッソリとその話し声に聞き耳を立ててみよう。





  • 中西太さん(野球解説者)の

    「バッティング・コーチ」の話

     良い選手になる要素というのは、まず第一に親からもらった肉体的・技術的な素質。第二にその人の素質に合った良い練習。そして、それをサポートできる人との出会い。さらに練習を続けられる勤勉さも必要。しかし面白いもので、コーチの言うことを何でもハイハイ聞けば良いかというと、そうでもない。むしろ頑固なくらいがちょうど良い。何故なら、自分が良いと思ったことを一途に続けるコトが大事だから。昔のイチローもフォームに関していろいろ言われたけど、ヒットを打ってるんだからとやかく言わないでくれ、とコーチとして言っていた。ブライアントやニールなどの外人にも、「三振することを恐れて当てに行くな。その代わり、いつも全力でスイングして、甘い球は必ずホームランにしろ。」と教えた。イチローのフォームにせよブライアントの三振にせよ、日本人はすぐにおかしい所を指摘する。しかし、欠点を直すよりは長所を伸ばしてやる方が、プロとして生きていくためには良い。そしてそれは子供の教育や人生においても同じだと思う。

    【Hot Link !!】

  • 西鉄ライオンズ研究会
  • Lucky's Baseball Records Museum(プロ野球記録博物館)
  • プロ野球外国人選手名鑑(「ラルフ・ブライアントと言う男」という記事など)



  • 中西太さん(野球解説者)の

    「メンタル・ケア」の話

     僕の持論として、心理的に悪い状態で練習しても意味がないと考えている。だから、怪我をしたり不調だった選手が復活してきた時に、そのプロセスを覚え書きで持っておきなさいと言う。そして、またいつか調子が悪くなったときに、その通りにやれば良くなるんだと信じて練習しなさい、と教える。その方が、どうすれば良いのか手探りで練習するより、よっぽど効果がある。そういったメンタルな部分の指導が、コーチや監督の最も重要な仕事の一つ。だから勝っている間は何もしない。負けたときこそ、選手にどんな言葉をかけようか、どんな練習をさせようか、頭の中で思案を巡らせる。良い当たりが野手の正面をついてしまった選手は「ナイスバッティング!」と大いに誉め、悪い所があった選手はちゃんとその点を指摘する。それを続けて、初めて選手の信頼が得られるようになる。中には結果だけを求め、結果が出ないとヒステリックに怒る人もいるが、そうやって選手を萎縮させても、何も良いことはない。





  • 藤野朱美さん(東京女子体育大学・新体操部コーチ)の

    「新体操のコーチ」の話

     新体操のコーチは、曲を選ぶところから始まって、演技を作り、それを煮詰めるところまで、一つの演技を仕上げるのに、約1年間は選手とつきっきりで共同作業をすることになる。そして、いざ試合の時も、一回きりの演技に万全な精神状態で臨めるよう、準備を手伝ったり、ウォーミングアップのタイミングを図ったりする。そうやって人と人との密接な関わり合いを持つ中で、コーチという教える側でありながらも、選手から教わることの方が多いような気がする。ある選手にはこういう表現で通じたけど、同じ表現では他の選手には全く通じないとか、二人三脚でいつも一緒にいるので、気の許せるようになる反面、わがままも言えるようになって、最後には喧嘩してしまったり、人間として勉強になるというか、本当に良い勉強させてもらっていると思う。

    【Hot Link !!】

  • Fantastic! RG(選手の紹介やルールの説明など)



  • 石垣淑子さん(明治神宮アイススケート場インストラクター)

    「フィギュア・スケートのコーチ」の話

     アイススケートの試合会場では、コーチはメンタル面のケアに全力を注ぐ。普段は跳べたジャンプを、本番直前の練習で緊張のあまり失敗してしまうような時は、「何で跳べないの!」とは絶対に言わない。「大丈夫、絶対跳べるから」と励まし、おだて、なだめて、その気にさせるのがコーチの仕事。私は大勢の子供を教えてきたけれど、試合会場の雰囲気に緊張してしまい、いつもの力が出せない子や、逆に緊張を力に変えられる子など、その子によって掛けてあげるべき言葉は全然違う。だから試合の時は、コーチの方も難しいし、本当に大変。
     アイススケートの選手とコーチといえば、得点が表示されるのを待つ場で、二人が不安そうな顔で並んでいる構図が有名だけど、アメリカではあの場所を「キス&クライ」と呼ぶ。つまり、喜びも悲しみも全てあの場所で起こる、という意味。そして賞賛された演技、失敗してしまった演技、どちらも選手とコーチ、二人で作り上げたものだから、喜びも悲しみも二人で分かち合う、そういう場所。

    【Hot Link !!】

  • 明治神宮アイススケート場
  • Cyber Figure Skating World Japan(解説、選手の紹介等)
  • Skating Music Page(フィギュアスケートで使われた音楽の曲名リスト)



  • 冨山英明さん(レスリング・オリンピック強化コーチ)の

    「子供のコーチ」の話

     『子供を金メダリストにする本』という本を書いた。スケートの橋本聖子さんや柔道の山下泰裕さんに話を聞いて、子供の頃の環境がいかに大事かという内容なのだが、要は二人とも田舎育ち。川で遊んでいたら流されたり、木に登ったら落っこちたり、遊びがトレーニングの毎日だった。そういう環境で養われる感覚や勘は、いわゆるトレーニングで養うことはなかなか出来ない。
     昔、故エディ・タウンゼント氏に「指導者の哲学」というモノを聞きたくて会いに行ったら、「富さん、それはないよ。ケースバイケースだから。」と言われてしまった。「海老原、柴田、みんな良いトコあるよ。欠点直すんじゃない、長所伸ばすのよ。」欠点を直そうとするのは、ある意味、日本人の文化かも知れないが、チャンピオンを育てるには向いてないらしい。
     さらに日本人の習性としては、昔から精神論が好きで、その反動か、今の子供達は精神論が嫌いみたいだけど、世界一を決めるような究極の試合になったら、精神力も問われるのは当たり前。科学的トレーニングも流行りで、子供達が「先生、トレーニングは2時間以上やっちゃ体に悪いんだって」と意って本を持ってきたりするが、トップアスリートが集中して2時間のトレーニングをするならともかく、子供達の散漫な集中力では、まず量をこなした方が良い。

    【Hot Link !!】

  • 『子供を金メダリストにする本』
  • ボクシング人物紹介(エディ・タウンゼント氏の紹介がある)




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    9'19" Just You, Just Me Jaye P. Morgan BMG BVCJ-2025
    19'14" Yes, I Can Sammy Davis Jr. Reprise Archives WPCR-884
    30'47" It's Too Good To Talk About Now Blossom Dearie verve POCJ-2653
    40'33" You Brought A New Kind Of Love To Me Frank Sinatra verve CDP7 46570 2
    48'19" Stop ! Don't Joe Williams verve 314 519852-2

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