SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
1999年9月18日の放送内容

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト


「装幀」

 日頃、何気なく手にしている「本」だが、その構造に関しては、意外と知らないことが多い。
 右の写真は、和田誠さんの『装丁物語』(白水社)のカバーである。「?」になっているところは、本の各部位の名称が書き込まれていたものを、伏せさせていただいた。それぞれの名前を、どれくらいご存じだろうか。
 本は、文章を書き、写真やイラストを決め、最後に装幀をして、はじめて「本」として完成する。普段あまり耳にすることのない「装幀」の話だが、今日のAVANTIは、どこかの出版記念パーティーからでも流れてきたのだろうか、出版関係者の客が多いようだ。その話に耳を傾けてみよう。

(カヴァー、オビ、表紙(表1)、花ぎれ、スピン(しおり)、見返し、扉、小口、が正解です。)




  • 和田誠さん(イラストレーター)の

    「装幀」の話

     子供の頃から本が好きだった。と言っても小難しい文芸書を沢山読んだというわけではなく、漫画でも何でも、とにかく本が好きだった。「のらくろ」を箱から出し、本の表紙に張られた布を触るだけでワクワクした。あの感触が、僕が考える装幀の源になっている。ソフトカバーの本の柔らかい手触り、ハードカバーの本のどっしりした手触り、それぞれ違うけど、どちらも好き。
     僕が装幀をするときは、必ず「つかみ本」を作る。「造本見本」とも呼ぶ、何も刷られていない中身が真っ白な本で、本の大きさや厚さ、表紙の材質なんかがわかるような見本。それを手に取って、感触や重さを確認してから、僕は装幀をする。なぜなら本のデザインは、ポスターのデザインと違って立体的なデザインだから。もっと言えば、装幀というのは、本を手に取り、表紙を眺め、一枚一枚ページをめくっていくという、時間経過のデザインでもある。それあたりが、面白い。

    【Hot Link !!】

  • 『装丁物語』(和田誠さん著)



  • 目黒考二さん(「本の雑誌」発行人)の

    「装幀で本を選ぶ」話

     学生時代から本が好きで、毎日書店巡りをしていた。すると時々、全然知らない作者、聞いたこともない出版社の本が、視界の隅で僕を呼ぶコトがあった。そしてその装幀だけに惹かれて買って帰ると、8割ぐらいの確率で中身も面白かった。実はコレにはカラクリがあって、ある出版社が何冊かの本を出版するとき、一番内容的に自信のある、一番売れて欲しいと思っている本の装幀というのは、どうしても力が入ってしまう。だから書店で目立っている本には、それなりに内容がある。ただ、単品で目立つというのと、書店の棚で目立つというのはちょっと違う。墨一色だけの、一見地味な表紙の本が、カラフルな本の中で異常に目立っていたこともあった。単品では非常に良いデザインなのに、他の本と一緒に並べてみると何故か目立たない本というのも沢山あった。そういった難しさを抱える「装幀」の良く出来ている本を選ぶというのは、本の選び方として決して間違っていないと思う。

    【Hot Link !!】

  • 日本雑誌協会 J-Magazine(激重。しかし目次ページは一見の価値あり。発行部数リストも利用価値あり。)
  • Books.or.jp(書籍の検索)
  • BOOK CLUB 本屋さん(オンラインショッピング)
  • Amazon.com(アメリカNo.1の書籍オンラインショッピング)



  • 祖父江慎さん(装幀家)の

    「無茶な装幀」の話

     「装幀家」って肩書きは好きじゃない。特に「装」って字が嫌い。装幀の「装」の字には、化けるとか、本来でないものに変わるという意味があるので、好きじゃない。「整理屋」とでも名乗ろうかと思っている。僕の持つ「装幀」のイメージは、そんな感じ。
     これまでに色んな本の装幀を手掛けてきたけど、さんざん無茶なことを言って印刷所の人を怒らせてきた。例えば、インクの染料と溶剤の割合を指定したことがある。「カバーのインクは、なんとか藍を何%にグロスメジューム何%混ぜて、こねて刷ってね」って注文したら、「この人デザイン知ってるのか!?」と言われた。色を指定する人はいても、そんなことを指定する人はいないから。お陰で増刷の時にムラが出て、大変だったみたい。網点の指定でも怒られた。「スクリーンセンス三十何線で、スクリーン角度45度で、網点をバックの色と抜き合わせてくれ」って言ったら、まず意味が通じなかった。網点が嫌いだったからそう言ったんだけど、相当無理な注文だったらしい。

    【Hot Link !!】

  • 「陰陽師6 貴人」(装幀・祖父江さん)
  • 「御題頂戴」(装幀・祖父江さん)
  • 喜国雅彦 単行本リスト1(祖父江さんが装幀担当の作品が多数あり)
  • 糸力カレー(祖父江さんのイラスト)
  • デザインの現場・Digi-gen(「Creator's File」に祖父江さんのプロフィール)



  • 根本恒夫さん(小学館「ポタ」編集長)の

    「YMOの『おみやげ』」の話

     「GORO」の編集部に入ったとき、島本修二さんという有名な編集者がいた。ちょうど島本さんが矢沢永吉の「成り上がり」という本で大ヒットを飛ばしていた時で、私にも出来るんじゃないかと思って、柳ジョージの「敗者復活戦」という本を作った。散々「真似」と言われて、まあ実際真似なんだけど、「人の物真似ではなく、どうしてこういう本を作るのか、必然性を持って本を作りなさい」と説教された。次に作ったのがYMOの「おみやげ」。奥村さんという有名なデザイナーと組み、透けて見えるビニールの表紙を使って、次のページの写真の一部を表紙に取り込む、みたいな意欲的なデザインに挑戦した。本当はビニール袋を使って、YMOのバンダナを付録として入れようと思ったんだけど、なかなか上手く行かなかった。それで結局、バンダナはアンケートのプレゼントとなり、ビニールは表紙となった。

    【Hot Link !!】

  • INTERNET POTA



  • 宮下雅之さん(小学館書籍制作課)の

    「装幀」の話

     上製本と並製本の違いは、表紙。一般にハードカバーとソフトカバーと呼んでいる違いと考えて良い。ハードカバーの堅い部分は、チップボールという段ボール屑や雑誌・新聞の古紙を固めたもので作られている。堅いとは言っても元が紙なので、思いっきり力を掛ければ曲がってしまう。そしてそのチップボールの上に、きれいに紙を張る。この紙を「見返し」と言う。さらにその上にカバーを掛け、帯を付けて本の出来上がり。普通はこのカバーや帯のデザインに凝るのが普通。ところが向こうにいる祖父江さんが装幀を手掛けた、さくらももこさんの「永沢君」は、このカバーに丸く穴が開いていて、見返しの印刷部分が見えるという意欲的な装幀になっている。この部分に掛かるコストはかなりのモノだけど、祖父江さんの装幀は出版人の常識を覆すような刺激を与えてくれるので、僕は好きだし、絶対に実現させてやろうという気になる。

    【Hot Link !!】

  • 『永沢君』
  • Shogakukan Online




    放送曲目リスト

    Time Title Artist Label Number
    8'01" I Could Write A Book Dinah Washington verve POCJ-2181
    18'03" Come Rain Or Come Shine The Four Freshmen Capitol 7243 4 95002 28
    30'58" I've Never Been In Love Before June Christy Capitol CDP72434 95448 26
    40'06" Fascinating Rhythm Mel Torme Bethlehem COCY-9937
    46'59" I'm Beginning To See The Light Peggy Lee Capitol 72438 54543 25

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