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「役者の持ち場」
作られたお話の中で、様々な「役」を演じる役者。男優であれば、正義感溢れる若者から悪代官まで、女優であれば、深窓の令嬢からとびっきりの悪女まで、話と役の設定によって、いろいろな顔を使い分ける。しかし、一度「当たり役」を演じ、あるイメージが出来てしまうと、そのイメージからかけ離れた役を演じにくいことも、また事実である。貧乏ながらも心優しいマイケル・ダグラスや、引っ込み思案で気弱なシガニー・ウィーバーなど、誰が想像できようか。 そして、そのイメージは、役者本人の人格とは関係ない「役」によって作られたモノであるにも関わらず、それがその人自身のの人格と勘違いされることも少なくない。そんな世間のイメージを、役者自身はどう思っているのだろうか。役者たちの話し声に、聞き耳を立ててみよう。
僕は、ドラマの役で恋愛を成就させた試しがない。浅野ゆう子さん(が演じた女性)の時は、「世良公則さん(が演じた男性)とうまく行かなくても、彼を愛する」みたいな浅野さんのセリフに納得してしまう役だったし、松田聖子さんは宅麻伸さんに取られてしまった。『あの日に帰りたい』で工藤静香さんとイイ感じで終わったのが唯一うまく行ったドラマかも。でも、自分が出てくると「あぁ、この人の恋愛はハッピーエンドにならないんだ」と思われるのはイヤ。そういう役がイヤなのではなく、見ている人に予測されるのが悔しい。だからこれから先、一度は恋愛を成就させる役を演じてみたい。自分で言うのも何だけど、見ている人は絶対に「裏切られた」と思うはず。
これまでにいろんな役をやってきたけど、やったことないのが貴族。時代劇でいえば公家。私のイメージに合わないんでしょう。ドラマに関してはお父さん役が多くて、その時代時代のいわゆる普通のお父さんを演じることが多い。コレが易しそうで、案外難しい。台本に娘を叱っている場面は描かれていても、どういう生活で給料はいくらで、みたいな裏付けは自分で作らなければいけない。何故か「息子のいる父親」よりも「娘のいる父親」の方が多くて、『ラブジェネレーション』では松たか子さん、『真昼の月』では常盤貴子さん、『ミセスシンデレラ』では薬師丸ひろ子さん、『明日があるから』では今井美樹さんの父親だった。実生活では息子二人で、娘はいないんだけど。
『ひとつ屋根の下 2』が連ドラ初出演だった。最初に話が来たときに、「外見的には問題ないから」と言われて、やる気満々で台本をめくった。そしたらコレが、とんでもないイジメ役。大路恵美ちゃん演じる小梅を徹底的にイジメる役で、話が進むにつれイジメもエスカレートしていく。「こんなイジメ、普通やらないだろう」などと思いつつも、初めての連ドラだったので、一生懸命イジメ役を演じた。でも後でふと我に返って、「外見的には問題ないってどういうコト?」という疑問は湧いたけど。その役のお陰ですっかりイジメ役というイメージが出来てしまった。でも、それまでモデルとして働いてきて、初めての役者としての仕事が、非常に分かりやすく、しかも癖のある役だったというのは幸運だったと思う。今の若い子なら皆、「アレは役だから」と理解してくれるし。
昔、片岡千恵蔵さんの「7つの顔を持つ男」という東映の番組があった。ある時は片目の運転手。またある時はインド人、といろいろ七変化するんだけど、どれを見ても皆、同じ顔。私もそれと同じで、いろんな役を演じて、いろんな扮装はするけど、顔は全部一緒だと思う。いろんな役を演じてきた中でも、『寺内貫太郎一家』でお婆さんを演じたのは、本当に他愛もないコトがキッカケだった。大ヒットドラマ『時間ですよ』のある役者が、舞台か何かの都合で出れなくなって、仕方がなく3ヶ月だけ別のドラマをやることになった。その相談を受けた向田邦子さんが、さらに私に相談してきたので、「セリフのない、日向でザブトン敷いて寝ているような、お婆さんの役がいい」と言った。19の時から疲れたイメージで見られていた私のわがままだったんだけど、何故かあっさり通って、お婆さん役をやることが決定。話の筋も、主役の小林亜星さんの役柄も決まってない内に、その役だけが決まっていた。
キャスティングにはいろんなケースがあるが、先にキャスティングが決まっていて、この人に何をやらせたら面白いかな、と考える場合もある。役者さんに人気があって、この人で作れば面白いと思って企画を立てる、いわゆる「当て書き」の場合と、完全に企画優先で、その企画に役者さんを当てはめていく場合と、その比率は半々くらい。『踊る大捜査線』の場合、最初にキャスティングされたのが織田裕二さん、そして次に決まったのが、いかりや長介さんだった。亀山プロデューサーが「コレで『セブン』をやるんだ!」と言うので、じゃあ日本のモーガンフリーマンって言ったら長さんだろうと。『王様のレストラン』の場合は、先に三谷幸喜さんの脚本があった。松本幸四郎さんだけは最初から決まっていたけれど、それ以外のキャスティングは、台本を目の前に、皆でポンポン理想を言い合って決めた。山口智子さんなんか、主役じゃないのに、よく出てくれたと思う。恐る恐る企画書を出したら、興味があると言って出てくれたんだけど。
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