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「ベスト・トーク」
ここ数週間、毎週のようにAVANTIへやってきては、いつもの紳士と一緒に隣の席の話に聞き耳を立てていた早樹ちゃん。どうやら彼女も新たなAVANTIの常連として、しっかりジェイクや他の常連客に顔を覚えてもらえたようだ。今日も紳士がいつもの時間に、元麻布は仙台坂を上がってAVANTIへやってくると、そこにはすっかりお店に馴染んだ早樹ちゃんを見つけることが出来た。 いつもの席に座り、いつもの酒を注文して、隣の早樹ちゃんに話しかける紳士。しかし彼女の表情は妙にさえなかった。はたして、彼女の身に何が起こったのだろうか…
この間、談志師匠と飲む機会があった。山藤章二さんの個展のパーティーから流れてきた面子で飲んだのだが、長いバーカウンターに、志の輔さん、イッセー尾形さん、山藤章二さん、玉置宏さん、吉川うしおさん、私、談志師匠、毒蝮三太夫さんの8人が、ずらっと並んだ様子は、何かとても変に見えたかも。そこへある人から電話が掛かってきた。バーテンダーが子機を持って「あの〜、お電話なんですけど…」と言うやいなや、談志師匠が「ああ、オレにかい」と言って電話をひったくり、「はいはい。ん?アンタもマメだねぇ。また今度改めて飲もうや」と言って電話を切ってしまった。何かオカシイと思って「今の誰ですか?」と聞いてみたら、談志師匠は「小淵」とコトもなげに答えた。どうやらその電話は、小淵総理が山藤さんに掛けてきたお祝いの電話だったらしい。
FRIDAYは7つの班に分かれて作っている。雑誌の外側のページはカラーなので、そこを担当している班の締め切りが一番早い。そしてページが内側に行くにつれて締め切りが遅くなっていくかわりに、ギリギリでも記事を差し替えられるようになってて、最新のニュースを突っ込めるような体制を敷いている。1冊のFRIDAYを作るのに100本くらいの記事を作って、差し替えにつぐ差し替えで最終的に残るのが26本。だから最近、物忘れが激しいというレベルを越えて、前の週に何を書いたかなんてすっかり忘れてしまう。この仕事で一番大変なのが、プロダクションと喧嘩をしつつ、仲良くもしなければならないところ。ヌード写真なんかをお願いするときはいい関係が出来ないし、かといってスキャンダルを載せれば間違いなく喧嘩になる。その2つをうまく両立させるためのキーワードは「やんちゃ」だと思っている。
女性にフラれて、ウイスキーばかり飲んでいたコトがある。たまたまそこにあった干しブドウをつまみに、暗いブルースをかけ、氷も入れずにガツンと飲んでいた。今になって考えてみると、それは「気分に合っていた」のが気持ちよかったんだと思う。そこで考えた「気分に合う」料理。まずは落ち込んでいるとき。この場合は「白菜とぺーこんのスープ煮」が良い。白菜とベーコンは適当な大きさに切って鍋に入れる。そこに固形スープを半分くらいと水をヒタヒタまで入れ、火にかける。十分に得てからバターを落として出来上がり。この料理はとっても優しい。優しいけれど押し付けがましさがない。「言いたくなかったら言わなくていいんだよ」と語りかけてくる。次に浮ついている自分を戒める料理。これは、ご飯と豆腐の味噌汁に納豆と焼き魚みたいな、まっとうで地に足の付いた料理が良い。ポイントは食べるときに、ちゃんと「いただきます」と声に出して言うこと。
フェリスの学生はみんなミハマの靴を履くと言われているのは、あの靴が学校の前の急な坂道に対応しているから。バッグはキタムラと言われているけど、それは比較的地味な女の子の話。ファッションの傾向は、地方出身の寮暮らしの子、一人暮らしの子、自宅の子で、それぞれはっきり別れていて、パッと見て区別がつくほどだった。クラスの中で仲のいいグループも、それによって別れていた。フェリスの周りは女子校が多くて、最寄りの京浜東北線・石川町駅は、駅全体が女臭いと言われていた。毎朝、ちょっとすました感じの女の子の大群が押し寄せてくるものだから、そこの駅員になるのが夢という人もいるらしい。あまりに女だらけなので、それが目当ての変質者も多かった。でも、変質者がいても多勢に無勢、「キャー」なんてカワイイ反応をする子もいなくて、「何か出してる見たいよ」「ふ〜ん」みたいな冷酷な反応をしていた。
この前、アメリカのデスバレーという場所へ行って写真を撮った。そこは30年前、『ヌード』というデビュー写真集を撮った場所。その時は人間が初めて月へ行った年で、白人・黒人・日本人と違う人種の3人を連れて、人間と自然と宇宙的空間に人類を置く、みたいなコンセプトの写真を撮って高い評価も貰った。でもその後、そんな大袈裟な写真というのが嫌になってしまい、デスバレーというのは自分の中で封印された場所にしていた。ところが数年前、小島聖さんという女性に出会ってしまった。2年も掛けて口説き落とし、スタジオでテスト撮影をしてみたら、その存在感たるやとてつもない。彼女がスタジオに現れた瞬間、まさに息をのんだ。170cm以上の身長に小さな顔、大きな胸、長い脚。こんな凄い女性に太刀打ちできるのは、あそこしかないと思って、30年ぶりにデスバレーの封印を解いた。彼女もボクも、砂まみれ泥まみれになって、撮ってきたのは最高の写真。
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