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「実況中継」
「前畑ガンバレ」を例にを出すまでもなく、実況中継はスポーツの魅力を伝えるのにかかせないものである。なかでもスポーツのワンシーンを忘れられないものにする名実況は、アナウンサーの感動が視聴者にダイレクトに伝わったときに生まれる、というのがアナウンサーたちに共通する意見のようだ。 今日のAVANTIには、NHKのスポーツアナウンサーとしてオリンピックや高校野球を実況してきた西田善夫さんや、「中山の直線を流星が走りました!」など数々の名競馬実況で知られる杉本清さんの声が流れている。つい、耳がそちらの方へ向いてしまうのも、仕方のないことだろう。
スポーツ実況というものは、スポーツがメインである限りアナウンスが目立ってはいけないと思う。しかし今回の世界陸上のアナウンスに関しては、「エンターテイメントと割り切る」という局の方針で、絶叫しながらアナウンスをした。その後新聞でいろいろ批判を受けたりして落ち込んだりもしたが、一応局の方からは「方針通りにやってくれた」といってもらえた。でも日本に帰ってからビデオで見直してみると、何かが乗り移っているかのようなもう一人の自分がいた。
実況を聞いていれば、そのアナウンサーがどっちのファンか大体分かる。隠していてもつい出てしまうのがホームインとホームラン。その時は舞い上がってるから。ただ、さよならゲームなどの見せ場は、どっちのファンというのは忘れて盛り上げてしまうアナウンサーの習性がある。プロ野球といえば今年の日本シリーズは、ヤクルトvs西武になると、どちらの監督もテレビ朝日の解説者として一緒に仕事をした人になる。野村監督は解説者時代、話しかけると妙に間が空くので苦労した。それに対して東尾監督は「1」話しかけると「10」返ってくる。それはそれで困ることもあった。
テレビの中継とラジオの中継では全然やり方が違う。テレビは画面があるので、いかに画面をいかすか、いかに視聴者に参加してもらうかが大切。だから何かをしながら見ないで欲しい。それに対してラジオや場内での実況は画面がない。どの馬がどの位置にいるか、先頭とどれくらい離れているのかをちゃんといわないと、聞いてる人が分からないので、非常に気を使った実況になる。でも普段は画面があるテレビの実況になれているので、そのあたりがなかなか難しい。よく実況の中で感情的な表現を使うのは、見てる人が思っていることをポッと言ってあげるといいと思うから。だからその時は、完全にファンの心理になっている。
最近の駅伝中継で変わったのは、アナウンサーがオートバイに乗って中継すること。実は一番最初に乗ったのは私で、バルセロナ女子駅伝という、オリンピック前哨戦の中継で起こったアクシデントから始まった。スペインという国はのんびりしたお国柄で、現地のスタッフが「予定していた移動車が準備できませんでした」とといきなり放送直前にいう。「でもオートバイならある」というので、しかたなくオートバイに乗る羽目になった。乗ってる間はメモを取ったりマイクの位置を直したり、なにかと両手ふさがってしまうので、とにかく太股で体を支えるしかない。その状態で120kmのスピードを出されたときは、さすがに死ぬかと思った。
今度長野オリンピックのために作った「世界の国家」というCDがでる。指揮は小沢征爾、演奏は新日本フィルハーモニー。収められた国歌の数は71曲にものぼる。国際大会と国歌にまつわる話は色々ある。1982年にニューデリーで開かれたアジア大会では、ウエイトリフティングで北朝鮮の選手と日本の真鍋選手が激しく争い、非常に微差で真鍋選手が優勝した。しかし大会本部が混乱し、日の丸を掲揚しながら北朝鮮国歌を流すというアクシデントが起こった。しかしその時、会場から君が代の歌声が聞こえてくる。その歌声は、日本の駐印大使の奥さんのものだった。その声につられるように会場にいる日本人が歌いだし、最後はみんなで大合唱。それがいままでで一番感動的な国歌だった。
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